The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD026] 異なる考えから理解を深める協調問題解決授業のデザイン(2)

能動的な比較参照を保証するアクティブラーニングへ

益川弘如1, 河崎美保2, 遠藤育男#3, 丸井純#4 (1.静岡大学大学院, 2.追手門学院大学, 3.伊東市立対島中学校, 4.伊東市立東小学校)

Keywords:協調問題解決, 知識構成型ジグソー法, 異なる考え

問題と目的
算数授業において,子供たちが「教師が指示した,教師が期待する活動」に応えるために学習する「解を習得する」学びではなく,子供たちが協調的に自ら理解を作り上げていく「解を創造する」学びを実現する授業を実践的に検証している。
将来の知識基盤社会で活躍する21世紀型の資質・能力の育成には,受動的環境で「協調問題解決活動を振る舞えるスキルの習得」ではなく,自ら目標を作り変えながら「協調問題解決活動が深い知識の創造に繋がることを実感すること」が重要で,異なる考えから理解を深める経験を繰り返すことが,未来の学習の準備に繋がるだろう。
我々は知識構成型ジグソー法を用いて異なる考えを比較参照することで理解を深めさせる実践に取り組んでいるが,教室全ての子供の学びを引き出す能動的な活動ためには,より要素技術を工夫する必要性が見えてきている(河崎ほか, 2014)。今回は2013年度の実践の課題分析に基づき,2014年度の実践を改善し,効果を検証することにした。
方法
表1は各実践を整理したものである。3実践とも最終課題は同じである。2014年度の発話分析の結果,これまでのジグソー活動中の良さを引き出し,対話から深い理解を引き出す改善点として(1)エキスパート活動での誤答を持ち寄ると,その解消に時間がかかり期待した対話時間が短くなったためエキスパート活動後に同課題の班同士で交流させる,(2)全体発表で「+方略(正解)」と「÷方略(不正解)」を受動的に聞いた後の班活動では正解方略にシフトしなかった反省から,iPadを用いて各班が能動的に他班のまとめを撮影し,バリエーションを班に持ち帰って「なぜ÷と+の考えがあるのか」の理由を検討させることにした。
結果と考察
表2は,各実践結果を比較したものである。Cクラスの実践では,授業終了時には全班が正解していた。かつ,授業時間内に実践が収まった。しかし1ヶ月後,全体を1としてみる視点より計算方法の再生(通分する)が多く,7週間後の転移課題が解けた子供たちは少なかった。
今回は,ジグソー活動時に「÷方略」の班がなく,iPadで撮影したバリエーションが限定的で,想定していたジグソー活動後の「どうして+と÷と班ごとに異なる解き方がでてきたのか,考え方を比較したくなる」状況を引き起こせず,結果「見比べて他班にもわかりやすいまとめを作ろう」と教師が声をかける形となった。これらより,何を話し合わせるべきか,協調問題解決はスキルより内容の重要性が示唆される。今後,詳細な発話分析をし,異なる考え方の比較をせざるを得ない課題やエキスパート資料,活動構成の改善に取り組み,正答に至るだけでなく,深い理解を引き出すアクティブラーニングを実現していきたい。