[PD029] 溶解と状態変化における粒子の様子に関する誤概念
中学1年生と大学生を対象にした質問紙調査
キーワード:化学概念, 誤概念, 理科
問題と目的
理科教育では,「溶解」を小学校5年(ものの溶け方),中学校1年(水溶液の性質)等を取り扱う。また,人は物が液体に溶ける様子を生活上を数多く経験している。しかし,多くの人が科学的には誤った概念を持っていることが知られている(源田・村井, 2005; 堀, 1988; 高田・筒井・佐藤, 2010)。
溶解の科学的な理解を促す指導法も考案されている。その一つとして,菊池他(2014)による粒子概念を中心とし「状態変化」と「溶解」を関連づけたものである。菊池他が示唆するように,状態変化と溶解の科学概念を持つには,粒子概念によって両現象を解釈する学習活動が必要であろう。
このような指導法の効果を高めるには,溶解と状態変化に関する誤概念にどんな関連性があるかを明らかにする必要があろう。そこで,本研究では,溶解と状態変化に関連して粒子概念がどのように持たれているかを明らかにするため,中学1年生と大学生を対象とした調査を行うこととした。
方 法
対象者 公立中学校1年74名(「溶解」を学習直後),私立大学学生141名が調査に参加した。
調査項目 以下の問題について調査した。(A)溶解過程の描画問題:ビーカー内の砂糖水溶液3状態について砂糖の粒子と水の粒子を描画するよう求めた。(1)砂糖のかたまりを水に入れて静置し20分後,(2)(1)をガラス棒で撹拌し溶かした直後,(3)(2)を1ヶ月密閉静置した後。(B)溶解の選択問題:次の問題について3~4の選択肢で回答を求めた。(1)水に砂糖を溶かした時の質量,(2)水量と溶ける砂糖の量の対応,(3)砂糖を水に入れて静置し1ヶ月放置した時の様子,(4)撹拌により砂糖が溶ける理由。(C)状態変化の描画問題:次の2つの場面での水の粒子の様子を描画するよう求めた。(1)ビーカー内の水の中に氷を浮かべた場面,(2)熱されたビーカー内の水に気泡ができている場面。
手続き 中学生には理科授業の15分程度で,大学生には講義中の15分程度を使い集団で実施した。
結果と考察
問題Aと問題Bの回答から,溶解に関する概念を7カテゴリーに分類した。同様に,問題3の描画から状態変化に関する概念を6つに分類した。表1のとおり,溶解については「水流により拡散し時間経過後沈殿」「撹拌すれば溶解するが静置すると溶解しない」といった誤概念が,状態変化については「氷や水蒸気に水の粒子が付着する」「氷で水温が下がると水の粒子が下に,熱されると粒子が上に移動」といった誤概念があると分かる。
また,度数10以下のカテゴリー及びその他を除き,溶解概念と状態変化概念の対応関係についてコレスポンデンス分析を行った(図1)ところ,「3撹拌したときのみ溶解」と「D氷水では下,沸騰では上に粒子が集まる」とが対応する傾向があり,生活経験から粒子を実体的に捉えているものと解釈できる。また,「2水流があると拡散,その後沈殿」と「C氷/水蒸気の周りに粒子が付着」が対応しており,粒子の様子を独自のとらえ方をしているものと考えられるが,本研究では具体的にどのようなとらえ方をしているかは不明である。今後,これらの誤概念をより詳細に検討する必要がある。
理科教育では,「溶解」を小学校5年(ものの溶け方),中学校1年(水溶液の性質)等を取り扱う。また,人は物が液体に溶ける様子を生活上を数多く経験している。しかし,多くの人が科学的には誤った概念を持っていることが知られている(源田・村井, 2005; 堀, 1988; 高田・筒井・佐藤, 2010)。
溶解の科学的な理解を促す指導法も考案されている。その一つとして,菊池他(2014)による粒子概念を中心とし「状態変化」と「溶解」を関連づけたものである。菊池他が示唆するように,状態変化と溶解の科学概念を持つには,粒子概念によって両現象を解釈する学習活動が必要であろう。
このような指導法の効果を高めるには,溶解と状態変化に関する誤概念にどんな関連性があるかを明らかにする必要があろう。そこで,本研究では,溶解と状態変化に関連して粒子概念がどのように持たれているかを明らかにするため,中学1年生と大学生を対象とした調査を行うこととした。
方 法
対象者 公立中学校1年74名(「溶解」を学習直後),私立大学学生141名が調査に参加した。
調査項目 以下の問題について調査した。(A)溶解過程の描画問題:ビーカー内の砂糖水溶液3状態について砂糖の粒子と水の粒子を描画するよう求めた。(1)砂糖のかたまりを水に入れて静置し20分後,(2)(1)をガラス棒で撹拌し溶かした直後,(3)(2)を1ヶ月密閉静置した後。(B)溶解の選択問題:次の問題について3~4の選択肢で回答を求めた。(1)水に砂糖を溶かした時の質量,(2)水量と溶ける砂糖の量の対応,(3)砂糖を水に入れて静置し1ヶ月放置した時の様子,(4)撹拌により砂糖が溶ける理由。(C)状態変化の描画問題:次の2つの場面での水の粒子の様子を描画するよう求めた。(1)ビーカー内の水の中に氷を浮かべた場面,(2)熱されたビーカー内の水に気泡ができている場面。
手続き 中学生には理科授業の15分程度で,大学生には講義中の15分程度を使い集団で実施した。
結果と考察
問題Aと問題Bの回答から,溶解に関する概念を7カテゴリーに分類した。同様に,問題3の描画から状態変化に関する概念を6つに分類した。表1のとおり,溶解については「水流により拡散し時間経過後沈殿」「撹拌すれば溶解するが静置すると溶解しない」といった誤概念が,状態変化については「氷や水蒸気に水の粒子が付着する」「氷で水温が下がると水の粒子が下に,熱されると粒子が上に移動」といった誤概念があると分かる。
また,度数10以下のカテゴリー及びその他を除き,溶解概念と状態変化概念の対応関係についてコレスポンデンス分析を行った(図1)ところ,「3撹拌したときのみ溶解」と「D氷水では下,沸騰では上に粒子が集まる」とが対応する傾向があり,生活経験から粒子を実体的に捉えているものと解釈できる。また,「2水流があると拡散,その後沈殿」と「C氷/水蒸気の周りに粒子が付着」が対応しており,粒子の様子を独自のとらえ方をしているものと考えられるが,本研究では具体的にどのようなとらえ方をしているかは不明である。今後,これらの誤概念をより詳細に検討する必要がある。