[PD037] 行為者が幼児の場合の成人における性格特性推論
行為者の呼称の違いが原因帰属推論に与える影響
Keywords:行為者が幼児, 呼称, 性格特性推論
【はじめに】
日常生活では,ある結果の原因として,内的・外的要因を含めた複数の要因が候補として同時に存在することが多く,そのような状況での推論の検討が必要である。
さらに,成人では,行為者は自分の行動を外的な状況要因へ,観察者は行為者の安定した特性へ帰属する傾向があり,一般的に内的要因を過大視する傾向が指摘されている。しかし,成人において,行為者が「一般的な他者」の場合と「自称詞を使う他者」の場合とで,原因帰属や特性推論に違いが生じるかについては明らかではない。かつ,成人が観察する行為者が子どもであった場合には,行為者が大人の場合とは判断が異なるだろうか。
そこで本研究では,ある結果の原因の候補として内的(行為者の意図)・外的要因(物理的要因)の2つを提示し,行為者が「一般的な子ども」の場合と「自称詞を使う子ども」の場合の比較検討を行う。
【方 法】
*被験者 30代の子育て中の男女合計529名を男女・年齢に偏りのないように4条件に割り当てた。*実験計画 ストーリー(4:意図・結果の順に共にポジティブ(PP),ポジティブ・ネガティブ(PN),NN,NP)×結果の原因の候補の提示順序(2:内的要因先行,外的要因先行)×自称詞(2:一般的な名前,一人称自称詞(僕又は私))の3要因配置。ストーリーは被験者内要因,他は被験者間要因。*手続き 主人公の意図と結果の組み合わせを操作したPP, PN, NN, NPに対応する幼児が主人公のストーリーを2種類ずつ8つ作成(表1)。静止画と共にストーリーを提示。その後,①どうして「結果」は生じたか,②主人公は良い子か悪い子か(特性判断),③特性判断の理由をそれぞれ選択肢で質問。なお,ストーリーの提示順序や主人公の性別は条件間で偏らないよう統制。
【結 果】
(1)結果の原因の帰属先 ストーリー×提示順序×自称詞の3要因反復測定分散分析を行った結果,ストーリーの主効果,提示順序の主効果,ストーリー×自称詞の交互作用が有意。ストーリー×自称詞の交互作用の下位検定の結果,一人称条件ではNPはNNよりも原因を外的要因に帰属したが,一般名条件でPPとPN はNNより, NPはPNより外的要因に帰属した(図1)。
(2)特性推論と判断理由(図2,3) ストーリー×提示順序×自称詞の3要因反復測定分散分析を行った結果,ストーリーの主効果,提示順序の主効果,ストーリー×自称詞の交互作用が有意。ストーリー×自称詞の交互作用の下位検定の結果,両条件でPP>PN,PP>NN,NP>PP,NN>PN.NP>PN,NP>NNの関係で「良い子」の判断が多かったが,ストーリー間の差の大きさに違いがあった。特性推論の判断についてストーリー×提示順序×自称詞の3要因反復測定分散分析の結果,ストーリーの主効果(PN>PP, NN>PP, NP>PP, PN>NN, PN>NP,NN>NPの関係で結果重視),自称詞の主効果(一人称の方が結果重視)と提示順序の主効果(外的先行条件の方が外的帰属)が有意。
【考 察】
本研究の結果から,内的・外的要因の2つが結果の原因の候補として同時に提示された場合,提示順序や意図と結果の組合せの影響と複雑に関連しながら,行為者の呼称の違い(=推定される行為者の違い)が原因帰属や特性判断に影響することが示された。
日常生活では,ある結果の原因として,内的・外的要因を含めた複数の要因が候補として同時に存在することが多く,そのような状況での推論の検討が必要である。
さらに,成人では,行為者は自分の行動を外的な状況要因へ,観察者は行為者の安定した特性へ帰属する傾向があり,一般的に内的要因を過大視する傾向が指摘されている。しかし,成人において,行為者が「一般的な他者」の場合と「自称詞を使う他者」の場合とで,原因帰属や特性推論に違いが生じるかについては明らかではない。かつ,成人が観察する行為者が子どもであった場合には,行為者が大人の場合とは判断が異なるだろうか。
そこで本研究では,ある結果の原因の候補として内的(行為者の意図)・外的要因(物理的要因)の2つを提示し,行為者が「一般的な子ども」の場合と「自称詞を使う子ども」の場合の比較検討を行う。
【方 法】
*被験者 30代の子育て中の男女合計529名を男女・年齢に偏りのないように4条件に割り当てた。*実験計画 ストーリー(4:意図・結果の順に共にポジティブ(PP),ポジティブ・ネガティブ(PN),NN,NP)×結果の原因の候補の提示順序(2:内的要因先行,外的要因先行)×自称詞(2:一般的な名前,一人称自称詞(僕又は私))の3要因配置。ストーリーは被験者内要因,他は被験者間要因。*手続き 主人公の意図と結果の組み合わせを操作したPP, PN, NN, NPに対応する幼児が主人公のストーリーを2種類ずつ8つ作成(表1)。静止画と共にストーリーを提示。その後,①どうして「結果」は生じたか,②主人公は良い子か悪い子か(特性判断),③特性判断の理由をそれぞれ選択肢で質問。なお,ストーリーの提示順序や主人公の性別は条件間で偏らないよう統制。
【結 果】
(1)結果の原因の帰属先 ストーリー×提示順序×自称詞の3要因反復測定分散分析を行った結果,ストーリーの主効果,提示順序の主効果,ストーリー×自称詞の交互作用が有意。ストーリー×自称詞の交互作用の下位検定の結果,一人称条件ではNPはNNよりも原因を外的要因に帰属したが,一般名条件でPPとPN はNNより, NPはPNより外的要因に帰属した(図1)。
(2)特性推論と判断理由(図2,3) ストーリー×提示順序×自称詞の3要因反復測定分散分析を行った結果,ストーリーの主効果,提示順序の主効果,ストーリー×自称詞の交互作用が有意。ストーリー×自称詞の交互作用の下位検定の結果,両条件でPP>PN,PP>NN,NP>PP,NN>PN.NP>PN,NP>NNの関係で「良い子」の判断が多かったが,ストーリー間の差の大きさに違いがあった。特性推論の判断についてストーリー×提示順序×自称詞の3要因反復測定分散分析の結果,ストーリーの主効果(PN>PP, NN>PP, NP>PP, PN>NN, PN>NP,NN>NPの関係で結果重視),自称詞の主効果(一人称の方が結果重視)と提示順序の主効果(外的先行条件の方が外的帰属)が有意。
【考 察】
本研究の結果から,内的・外的要因の2つが結果の原因の候補として同時に提示された場合,提示順序や意図と結果の組合せの影響と複雑に関連しながら,行為者の呼称の違い(=推定される行為者の違い)が原因帰属や特性判断に影響することが示された。