日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PD

2015年8月27日(木) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PD039] デフォルメされたイラストから生ずる視覚的イメージの変容に関する基礎的研究

伏木宏奈1, 久保田まり2 (1.東洋英和女学院大学大学院, 2.東洋英和女学院大学)

キーワード:イメージ, 視覚的イメージ

【目 的】
本研究は,子ども達が豊かな表現力を持つためには内的なイメージを意図的に変容させていく力が必要だと考え,第1段階として,本当に本来持っていた視覚的イメージが変容してしまうのかどうかを調査していく。視覚イメージが,実際に見た視覚的な刺激によって変容してしまう可能性がある。そこで,実験により,生物の絵を描いてもらう実験を行う。実験協力者が絵を描くときに,デフォルメされた絵を見た記憶にひきずられることなく,自分の持っているイメージそのままを描けるのかどうかを検討する。
【方 法】
実験協力者 18歳から24歳までの大学生,大学院生48名(男性24名,女性24名)。
手続き 実験参加者を「写真のみ群」,「写真→イラスト群」,「イラスト→写真群」の3群に分け,「イラスト→写真群」に対してのみ,先にデフォルメされた生物のイラストを見せる。その後,全ての群に対し生物の写真を提示し,その場で写真を見ながら生物を描いてもらう。描く時間は30分であるが,描き終えたらその場で終了する。終了後,1群(写真のみ群)は何も見せず,「写真→イラスト群」に対してデフォルメされた動物・植物の絵を提示する。数日後,両群に対し再生テストを行う。この3群を知っている生物(猫)と知らない生物(オオグチボヤ)で行う。
【結果と考察】
再生前と再生後で絵が変化したと思われる以下の項目を,t検定とχ二乗検定により比較した。
普段なじみのある生物の猫と,なじみのない生物のボヤを題材にして実験を行った。結果,猫はイラストによる影響が見受けられ,ヒゲの本数や足の三つ叉が減った。このことから,既存の知識が有る場合でも,イラストによって影響されてしまうことがわかった。オオグチボヤの頭の丸み,ひらひらの有無の分析については,イラストを先に見るイラスト→写真群が顕著に引きずられる結果となった。また,猫のヒゲの本数の結果では,数字があまり変化せず有意差は出なかったが,イラストの本数に一番近い数字であった。そのため,最初からイラストの影響を受けていた可能性がある。これらの結果から,写真よりも先にイラストを見ることで,無意識的に固定化されたイメージが形成され,そのイメージの固定化が促進されてしまう可能性が示唆された。