[PD043] 学級規模の大小による学習指導の工夫の違い
教師の日常的な学習指導の工夫からみた学級の適正規模
Keywords:学級規模, 学習指導, コレスポンデンス分析
問題
学級規模と教師の指導方法との関連を検討した先行研究では,学級が小規模である方が児童一人一人の意見を採り上げながら学級全体で議論する時間が多いことや(Stasz & Stecher, 2000),学習課題に関連した教師と児童の間でのやりとりが多いこと(Blatchford et al., 2005; Bourke, 1986)などが明らかとなっている。このように学級が小規模であるほど個別指導の頻度などが多くなることが明らかとなっているものの,大規模であるほど実施されやすくなる指導方法については不明である。また,小規模であるほど実施しやすくなる指導方法であっても,どの程度の学級規模であれば実施しやすくなるのかといったことまでは明らかとなっていない。
目的
学級規模の大小によって,授業においてどのような指導ができているのか,あるいはできていないのかを明らかにすることが本研究の目的である。そのために,5人程度から40人程度までの学級を調査対象とし,それぞれの学級において日頃の授業の工夫として実際にできていること,できていないことを挙げる自由記述形式の調査を行い,記述内容と学級規模との関係を検討する。
方法
調査対象:岩手県盛岡市内の小学校32校を対象として調査を実施した。小学校第1,3,5学年それぞれについて5~10人,15人,20人,25人,30人,35人程度(±1)各3学級,40人程度2学級を調査対象とし,学級担任を対象に,担任している学級の規模であるために日頃の授業の工夫としてできている,及びできていないと思われることをそれぞれ,3項目以上,10項目以内で箇条書形式による自由記述による回答を求めた。
分析:大学の教職課程において教育心理学を担当している教員,教育方法学を担当している教員,国立大学教育学部附属小学校の指導教諭の各一人の協議により,指導上の工夫としての類似を検討して回答を分類した。その際,肯定語(「できている」など)や否定語(「できない」など)は参照せず指導上の工夫の内容の部分にのみ着目した。この結果から学級規模の類型と自由記述の分類結果の出現数との関係を検討するためにクロス集計表を作成し,Rのcaパッケージを用いてコレスポンデンス分析を行った。
結果
コレスポンデンス分析の結果はFigure 1のとおりだった(「できていないこと」については省略)。次元1については学級規模の類型が小規模であるものから大規模であるものの順に並び25人がほぼ0の座標に布置された。したがって自由記述の分類のうち左側に布置されたものが小規模な学級において,右側に布置されたものが大規模な学級において実施しやすいものを示していると言える。また,学級規模類型と自由記述分類の位置関係をまとめるとTable 1のとおりとなった。
考察
以上の結果から,本研究の調査の自由記述で得られた日頃の授業の工夫のうち,個別指導,児童全員に活躍や体験の機会を設けること,学習内容の定着を図ることは20人以下規模の学級で実施されやすいと考えられる。一方,児童の多様性を生かした指導の工夫は35人以上規模の学級で実施されやすいと考えられる。ただし,25人程度規模学級においては,これらの工夫の実施は教師の指導技術や指導方法の個人差によって左右される。言い換えると,20人以下あるいは35人以上の学級規模では,授業の工夫の実施は学級規模によって左右されるが,25人程度規模ではそうとは言えないことを示唆していると言えよう。したがって,教師の日頃の授業の工夫という観点だけを取り出すならば,25人前後学級が適正規模であると考えられる。
学級規模と教師の指導方法との関連を検討した先行研究では,学級が小規模である方が児童一人一人の意見を採り上げながら学級全体で議論する時間が多いことや(Stasz & Stecher, 2000),学習課題に関連した教師と児童の間でのやりとりが多いこと(Blatchford et al., 2005; Bourke, 1986)などが明らかとなっている。このように学級が小規模であるほど個別指導の頻度などが多くなることが明らかとなっているものの,大規模であるほど実施されやすくなる指導方法については不明である。また,小規模であるほど実施しやすくなる指導方法であっても,どの程度の学級規模であれば実施しやすくなるのかといったことまでは明らかとなっていない。
目的
学級規模の大小によって,授業においてどのような指導ができているのか,あるいはできていないのかを明らかにすることが本研究の目的である。そのために,5人程度から40人程度までの学級を調査対象とし,それぞれの学級において日頃の授業の工夫として実際にできていること,できていないことを挙げる自由記述形式の調査を行い,記述内容と学級規模との関係を検討する。
方法
調査対象:岩手県盛岡市内の小学校32校を対象として調査を実施した。小学校第1,3,5学年それぞれについて5~10人,15人,20人,25人,30人,35人程度(±1)各3学級,40人程度2学級を調査対象とし,学級担任を対象に,担任している学級の規模であるために日頃の授業の工夫としてできている,及びできていないと思われることをそれぞれ,3項目以上,10項目以内で箇条書形式による自由記述による回答を求めた。
分析:大学の教職課程において教育心理学を担当している教員,教育方法学を担当している教員,国立大学教育学部附属小学校の指導教諭の各一人の協議により,指導上の工夫としての類似を検討して回答を分類した。その際,肯定語(「できている」など)や否定語(「できない」など)は参照せず指導上の工夫の内容の部分にのみ着目した。この結果から学級規模の類型と自由記述の分類結果の出現数との関係を検討するためにクロス集計表を作成し,Rのcaパッケージを用いてコレスポンデンス分析を行った。
結果
コレスポンデンス分析の結果はFigure 1のとおりだった(「できていないこと」については省略)。次元1については学級規模の類型が小規模であるものから大規模であるものの順に並び25人がほぼ0の座標に布置された。したがって自由記述の分類のうち左側に布置されたものが小規模な学級において,右側に布置されたものが大規模な学級において実施しやすいものを示していると言える。また,学級規模類型と自由記述分類の位置関係をまとめるとTable 1のとおりとなった。
考察
以上の結果から,本研究の調査の自由記述で得られた日頃の授業の工夫のうち,個別指導,児童全員に活躍や体験の機会を設けること,学習内容の定着を図ることは20人以下規模の学級で実施されやすいと考えられる。一方,児童の多様性を生かした指導の工夫は35人以上規模の学級で実施されやすいと考えられる。ただし,25人程度規模学級においては,これらの工夫の実施は教師の指導技術や指導方法の個人差によって左右される。言い換えると,20人以下あるいは35人以上の学級規模では,授業の工夫の実施は学級規模によって左右されるが,25人程度規模ではそうとは言えないことを示唆していると言えよう。したがって,教師の日頃の授業の工夫という観点だけを取り出すならば,25人前後学級が適正規模であると考えられる。