[PD045] 地域と連携した万引き防止教育の実践と評価
青少年,保護者,高齢者,社会人を対象とした教育プログラムの効果
Keywords:万引き防止, 教育プログラム, 地域連携
問題と目的
近年,高齢者の万引きが増加しており,万引きは社会問題となっている。香川県においても万引き犯罪は社会問題になっており,人口1000人当たりの万引き認知件数が2009年まで7年連続で全国ワースト1位であったことから,万引き防止対策の策定が喫緊の課題となっている(大久保,2012)。こうした中,香川大学と香川県警の共同事業として万引き対策事業が立ち上がり,地域全体で万引き防止の機運を高める取り組みを行ってきた(大久保,2014)。特に,万引きしにくい関係づくりというテーマで,地域において青少年,保護者,高齢者,社会人を対象とした万引き防止教育を実践し,その評価を行ってきた(大久保・時岡・岡田,2013)。
そこで本研究では,青少年編,保護者編,高齢者編,社会人編の教育プログラムの効果について検討することを目的とする。
方 法
対象者 生徒240名,保護者115名,高齢者80名,社会人86名が参加した。
教育プログラムの流れ 教育プログラムの流れは,①万引きに関する知識の確認,②万引きの現状の説明,③万引き防止啓発動画の視聴,④動画の振り返りと対策の検討,⑤まとめ,⑥アンケートの記入の順に行った。
アンケート内容 ①プログラムの印象:プログラム全体の印象を尋ねる4項目。回答形式は5件法。②万引きに関する実感:万引きに関する実感を尋ねる7項目。回答形式は5件法。③万引きに対する態度:万引きに対する態度を尋ねる9項目。回答形式は5件法。
結果と考察
尺度構成 青少年編,保護者編,高齢者編,社会人編の参加者のデータを併せて,各尺度に対する因子分析(最小二乗法)を行った。
プログラム全体の印象を尋ねる4項目について因子分析を行ったところ,1因子が抽出された。4項目の合計得点を「肯定的評価」得点とした。
万引きに関する実感を尋ねる7項目について因子分析を行ったところ,1因子が抽出された。7項目の合計得点を「万引きに関する実感」得点とした。
万引きに対する態度を尋ねる9項目について因子分析を行った3因子が抽出された。第1因子は「万引きに関する情報探索」,第2因子は「万引きをした(しそうな)人へのかかわり」,第3因子は「地域づくりへの意欲」とした。
プログラム間の比較 肯定的評価,万引きに関する実感,万引きに対する態度を従属変数とする分散分析を行った。 肯定的評価については,プログラム間で有意な差があった(F (3, 444)=15.62, p<.001, η2=.10)。多重比較の結果,高齢者編が青少年編,保護者編,社会人編よりも高かった。万引きに対する態度の万引きに関する情報探索については,プログラム間で有意な差がみられ(F (3, 437)=3.28, p<.05, η2=.02),高齢者編が青少年編より高かった。地域づくりへの意欲については,プログラム間で有意な差がみられ(F (3, 442)=5.47, p<.01, η2=.04),高齢者編が青少年編,保護者編,社会人編より高かった。
肯定的評価,万引きに関する実感,万引きに対する態度の関連 本研究で測定した変数間の関連について,万引きに関する実感の強さが肯定評価を介して,万引きに対する態度に影響するモデルを想定した。4つのプログラムの受講者それぞれの母集団を想定する多母集団同時分析を行った。
万引きに関する実感から肯定的評価に対するパスは,すべてのプログラムで有意であり,社会人編が青少年編と高齢者編より大きかった。万引きに関する実感から万引きに関する情報探索に対するパスもすべてのプログラムで有意であり,青少年編が保護者編より大きかった。万引きに関する実感から万引きをした(しそうな)人へのかかわりに対するパスは,青少年編と保護者編で有意であり,青少年編が保護者編と社会人編より大きく,高齢者編が社会人編より大きかった。万引きに関する実感から地域づくりへの意欲に対するパスは,青少年編と保護者編で有意であり,青少年編と保護者編が高齢者編より大きかった。肯定的評価から万引きに関する情報探索に対するパスは,社会人編以外で有意であった。しかし,プログラム間でパスの値に有意な差はなかった。肯定的評価から万引きをした(しそうな)人へのかかわりに対するパスは,いずれのプログラムでも有意ではなく,プログラム間での差もみられなかった。肯定的評価から地域づくりへの意欲に対するパスは,青少年編においてのみ有意であったが,プログラム間で有意な差はみられなかった。
近年,高齢者の万引きが増加しており,万引きは社会問題となっている。香川県においても万引き犯罪は社会問題になっており,人口1000人当たりの万引き認知件数が2009年まで7年連続で全国ワースト1位であったことから,万引き防止対策の策定が喫緊の課題となっている(大久保,2012)。こうした中,香川大学と香川県警の共同事業として万引き対策事業が立ち上がり,地域全体で万引き防止の機運を高める取り組みを行ってきた(大久保,2014)。特に,万引きしにくい関係づくりというテーマで,地域において青少年,保護者,高齢者,社会人を対象とした万引き防止教育を実践し,その評価を行ってきた(大久保・時岡・岡田,2013)。
そこで本研究では,青少年編,保護者編,高齢者編,社会人編の教育プログラムの効果について検討することを目的とする。
方 法
対象者 生徒240名,保護者115名,高齢者80名,社会人86名が参加した。
教育プログラムの流れ 教育プログラムの流れは,①万引きに関する知識の確認,②万引きの現状の説明,③万引き防止啓発動画の視聴,④動画の振り返りと対策の検討,⑤まとめ,⑥アンケートの記入の順に行った。
アンケート内容 ①プログラムの印象:プログラム全体の印象を尋ねる4項目。回答形式は5件法。②万引きに関する実感:万引きに関する実感を尋ねる7項目。回答形式は5件法。③万引きに対する態度:万引きに対する態度を尋ねる9項目。回答形式は5件法。
結果と考察
尺度構成 青少年編,保護者編,高齢者編,社会人編の参加者のデータを併せて,各尺度に対する因子分析(最小二乗法)を行った。
プログラム全体の印象を尋ねる4項目について因子分析を行ったところ,1因子が抽出された。4項目の合計得点を「肯定的評価」得点とした。
万引きに関する実感を尋ねる7項目について因子分析を行ったところ,1因子が抽出された。7項目の合計得点を「万引きに関する実感」得点とした。
万引きに対する態度を尋ねる9項目について因子分析を行った3因子が抽出された。第1因子は「万引きに関する情報探索」,第2因子は「万引きをした(しそうな)人へのかかわり」,第3因子は「地域づくりへの意欲」とした。
プログラム間の比較 肯定的評価,万引きに関する実感,万引きに対する態度を従属変数とする分散分析を行った。 肯定的評価については,プログラム間で有意な差があった(F (3, 444)=15.62, p<.001, η2=.10)。多重比較の結果,高齢者編が青少年編,保護者編,社会人編よりも高かった。万引きに対する態度の万引きに関する情報探索については,プログラム間で有意な差がみられ(F (3, 437)=3.28, p<.05, η2=.02),高齢者編が青少年編より高かった。地域づくりへの意欲については,プログラム間で有意な差がみられ(F (3, 442)=5.47, p<.01, η2=.04),高齢者編が青少年編,保護者編,社会人編より高かった。
肯定的評価,万引きに関する実感,万引きに対する態度の関連 本研究で測定した変数間の関連について,万引きに関する実感の強さが肯定評価を介して,万引きに対する態度に影響するモデルを想定した。4つのプログラムの受講者それぞれの母集団を想定する多母集団同時分析を行った。
万引きに関する実感から肯定的評価に対するパスは,すべてのプログラムで有意であり,社会人編が青少年編と高齢者編より大きかった。万引きに関する実感から万引きに関する情報探索に対するパスもすべてのプログラムで有意であり,青少年編が保護者編より大きかった。万引きに関する実感から万引きをした(しそうな)人へのかかわりに対するパスは,青少年編と保護者編で有意であり,青少年編が保護者編と社会人編より大きく,高齢者編が社会人編より大きかった。万引きに関する実感から地域づくりへの意欲に対するパスは,青少年編と保護者編で有意であり,青少年編と保護者編が高齢者編より大きかった。肯定的評価から万引きに関する情報探索に対するパスは,社会人編以外で有意であった。しかし,プログラム間でパスの値に有意な差はなかった。肯定的評価から万引きをした(しそうな)人へのかかわりに対するパスは,いずれのプログラムでも有意ではなく,プログラム間での差もみられなかった。肯定的評価から地域づくりへの意欲に対するパスは,青少年編においてのみ有意であったが,プログラム間で有意な差はみられなかった。