[PD051] 日常生活上の継続性のある対人ストレスに対するコーピングの効果の検討
日誌法に基づく検討
キーワード:対人ストレス, コーピング, 日誌法
本研究は,日常生活の中で継続的に経験する対人ストレスへのコーピングが感情にどのような影響を及ぼすのかを,日誌法によって検討する。
これまでの日誌法に基づく多くのコーピング研究は,慢性疾患などの慢性ストレスや日常生活の中で経験する出来事をストレッサーの対象としてきた(髙本,2015)。上記の研究からは,ストレッサーの持続性やストレッサーのインパクト,もしくは生起頻度の影響によって規定されうるコーピングの効果を明らかにすることは難しい。そこで,本研究では,継続的にストレスに感じさせる対人ストレスを対象として,“脅威性→コーピング→感情”というストレス・プロセスについて検討する。
方法
調査参加者と調査手続き
大学生100名(男性43名,女性55名,不明2名,平均年齢20.3歳,SD=1.30) から有効回答が得られ,調査開始時に継続してストレスに感じる対人ストレスがあると回答した31名を分析対象とした。
日常測定
以下の六つの内容を,正午と就寝前の1日2回,1週間にわたって回答を求めた。(a) 感情(非活動的快,抑うつ・不安;寺崎・岸本・古賀,1991),(b) 対人ストレス以外のストレス(他領域ストレス)の有無(2件法),(c) 調査開始時に回答した“継続してストレスに感じる対人ストレス”へのコーピング(髙本・松井,2012),(d) 継続的な対人ストレスへの脅威性(1項目4件法),(e) 日常的苛立ち事の有無(2件法),(f) 日常的高揚事の有無(2件法)。
結果と考察
“脅威性→コーピング→感情”というストレス・プロセスについて,マルチレベル構造方程式モデリングによる検討を行った。モデルの検討では,(a) 同時点のコーピングと感情に関する変数を投入したモデル,(b) コーピングと感情にタイムラグを設けたモデルの二つを分析した。分析に際し,日常的苛立ち事,日常的高揚事,他領域ストレスの3変数を統制変数としてモデル内に投入し,タイムラグモデルでは,1時点前の感情の変数を統制変数に加えた。
分析の結果,コーピングの行使が直後の感情に及ぼす影響に関して,積極的行動と回避型行動の行使が肯定的効果をし,対人接近型行動の行使は否定的効果を有していた。他方,コーピングの行使が半日後の感情に及ぼす影響に関して,肯定的解釈の行使が肯定的効果を有し,対人接近型行動と回避的思考の行使が否定的効果を有していた。
以上の結果から,日常生活の中で継続的にストレスに感じさせる出来事に対して,問題を解決するための積極的な対処(積極的行動,肯定的解釈)もしくは問題から距離をとる対処(回避型行動)が有効であり,他者への相談(対人接近型行動)や回避的思考は有効でないことが明らかとされた。
謝 辞
本研究の実施には長谷部真理さん,畠山美彩さん,平山咲月さんに多大なるご協力を得ました。ここに記して感謝申し上げます。
これまでの日誌法に基づく多くのコーピング研究は,慢性疾患などの慢性ストレスや日常生活の中で経験する出来事をストレッサーの対象としてきた(髙本,2015)。上記の研究からは,ストレッサーの持続性やストレッサーのインパクト,もしくは生起頻度の影響によって規定されうるコーピングの効果を明らかにすることは難しい。そこで,本研究では,継続的にストレスに感じさせる対人ストレスを対象として,“脅威性→コーピング→感情”というストレス・プロセスについて検討する。
方法
調査参加者と調査手続き
大学生100名(男性43名,女性55名,不明2名,平均年齢20.3歳,SD=1.30) から有効回答が得られ,調査開始時に継続してストレスに感じる対人ストレスがあると回答した31名を分析対象とした。
日常測定
以下の六つの内容を,正午と就寝前の1日2回,1週間にわたって回答を求めた。(a) 感情(非活動的快,抑うつ・不安;寺崎・岸本・古賀,1991),(b) 対人ストレス以外のストレス(他領域ストレス)の有無(2件法),(c) 調査開始時に回答した“継続してストレスに感じる対人ストレス”へのコーピング(髙本・松井,2012),(d) 継続的な対人ストレスへの脅威性(1項目4件法),(e) 日常的苛立ち事の有無(2件法),(f) 日常的高揚事の有無(2件法)。
結果と考察
“脅威性→コーピング→感情”というストレス・プロセスについて,マルチレベル構造方程式モデリングによる検討を行った。モデルの検討では,(a) 同時点のコーピングと感情に関する変数を投入したモデル,(b) コーピングと感情にタイムラグを設けたモデルの二つを分析した。分析に際し,日常的苛立ち事,日常的高揚事,他領域ストレスの3変数を統制変数としてモデル内に投入し,タイムラグモデルでは,1時点前の感情の変数を統制変数に加えた。
分析の結果,コーピングの行使が直後の感情に及ぼす影響に関して,積極的行動と回避型行動の行使が肯定的効果をし,対人接近型行動の行使は否定的効果を有していた。他方,コーピングの行使が半日後の感情に及ぼす影響に関して,肯定的解釈の行使が肯定的効果を有し,対人接近型行動と回避的思考の行使が否定的効果を有していた。
以上の結果から,日常生活の中で継続的にストレスに感じさせる出来事に対して,問題を解決するための積極的な対処(積極的行動,肯定的解釈)もしくは問題から距離をとる対処(回避型行動)が有効であり,他者への相談(対人接近型行動)や回避的思考は有効でないことが明らかとされた。
謝 辞
本研究の実施には長谷部真理さん,畠山美彩さん,平山咲月さんに多大なるご協力を得ました。ここに記して感謝申し上げます。