The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD054] 学級集団状態と生徒の学級適応との関連Ⅳ

学級機能因子が精神的健康・本来感・自尊感情に及ぼす影響

折笠国康1, 松崎学2, 新館啓一#3 (1.郡山女子大学短期大学部, 2.山形大学, 3.酒田市教育委員会)

Keywords:学級機能, 本来感, 自尊感情

【問題と目的】
一連の研究Ⅰにおいて中学生の学級機能尺度を,同Ⅱにおいて,中学生の精神的健康尺度を開発した。
小学校では,それらの学級機能因子が,その集団で育つ児童の個人特性に影響を与えていることもわかっている(松﨑, 2007, 2013)。特に自尊感情の一側面である,“Good enough”とほぼ同義的であると考えられる「本来感(伊藤・小玉, 2005)」には,「教師のかかわり」因子が直接効果よりはむしろ間接効果のかたちで,強い影響を与えていることがわかっている(松﨑, 2013)。
本研究においては,学級機能因子が,中学校における学級集団で育つ生徒の精神的健康・本来感および自尊感情に与える影響について検討する。
【方 法】
対象者等,すべて研究Ⅰと同様である。
【結 果】
学級機能因子が精神的健康・本来感・自尊感情に及ぼす影響を検討するために,ステップワイズ法による重回帰分析を実施した。その結果を,表7に示す。
1.学級機能因子が精神的健康に及ぼす影響
①学級機能因子が精神的健康「他者貢献」に及ぼす影響
精神的健康「他者貢献」には,「有能感・貢献感」の中程度のパスと,「教師のかかわり」と「凝集性」因子が弱いが正のパスを示していることがわかった。
②学級機能因子が精神的健康「他者信頼」に及ぼす影響
精神的健康「他者信頼」には,「教師のかかわり」・「有能感・貢献感」と「凝集性」因子がある程度の強さで正の影響を与えていることがわかった。他方で,学級機能「問題解決」因子が非常に弱いが負のパスを示したことがわかった。
③学級機能因子が精神的健康「自己受容」に及ぼす影響
精神的健康「自己受容」には,「有能感・貢献感」因子がある程度の強さで正の影響を与えていることがわかった。
④学級機能因子が精神的健康「独自性」に及ぼす影響
精神的健康「独自性」には,「有能感・貢献感」因子がある程度の強さで正の影響を与えていること,また,「教師のかかわり」と「凝集性」因子は,その影響は弱いが,正の影響を与えていることがわかった。なお,学級機能因子「問題解決」因子が,非常に弱いが,負のパスを示していることもわかった。
2.学級機能因子が「本来感」に及ぼす影響
「本来感」には,「有能感・貢献感」がやや強い正のパスを,「教師のかかわり」および「凝集性」因子がその影響は弱いが,正のパスを示していることがわかった。
3.学級機能因子が「自尊感情」に及ぼす影響
①学級機能因子が「肯定的自尊感情」に及ぼす影響
「肯定的自尊感情」には,「有能感・貢献感」がやや強い正のパスを,「教師のかかわり」および「凝集性」因子がその影響は弱いが,正のパスを示していることがわかった。なお,学級機能因子「問題解決」因子が,非常に弱いが,負のパスを示していることもわかった。
②学級機能因子が「否定的自尊感情」に及ぼす影響
「否定的自尊感情」には,「有能感・貢献感」因子がある程度の強さで正の影響を与えていること,また,「教師のかかわり」因子は,その影響は弱いが,正の影響を与えていることがわかった。
【考察】
「教師のかかわり」の影響
一連の研究Ⅲにおいて,学級機能因子「教師のかかわり」の直接的影響が機能していたのはQ-U因子「教師との関係」に対してであった。教師が創出する民主的なかかわりは,教師-生徒間の関係性に肯定的な影響を与えるのは,当然の結果であると言える。
本研究結果における「教師のかかわり」は,生徒の精神的健康・本来感および自尊感情に対して,弱いが一貫してポジティヴな影響を及ぼしていることがわかった。その意味で,教師が民主的なかかわりを実行することは,生徒の精神的健康に重要な意味を持つと言えよう。
「凝集性」の影響
学級機能因子「凝集性」は,生徒の精神的健康においては「他者信頼」に寄与することがわかった。
「有能感・貢献感」の影響
その集団への有能感や貢献感を感じることができていることは,当然かもしれないが,「他者貢献」・「本来感」・「肯定的自尊感情」に十分な効果を持つことがわかった。また,「自己受容」・「独自性」・「否定的自尊感情」にも一定程度のポジティヴな影響があり,この集団機能がどの生徒にも機能するように強化する必要があることがわかる。
「問題解決」の影響
ほとんど明確な影響を見出しがたい結果であった。相互尊重の問題解決そのものが中学校では十分機能するほど活用されていないのかもしれない。