[PD055] 道徳判断ときまり遵守意見との関係
大学生の道徳判断パターンからの分析
Keywords:道徳発達段階, きまり遵守
Gibbsら(1992)は,Kohlbergの道徳発達段階を一部修正した4段階の道徳発達段階を提示し,個々人の発達段階を測定するために,ある行為が大切である理由を説明させ,その説明のうち最上位の段階を得点化するSociomoral Reflection Measure(SQR)を開発している。ところで,上位の段階の判断ができるように発達したからといって,実際に判断する際,その最上位の発達段階で行うとは限らず,むしろ,複数の段階の判断を同時並行的に行っていると推測される。また,SQRでは,説明内容がいずれの発達段階に相当するかをコード化しているが,コード化は煩雑である。そこで今回は,ある行為が大切とされる理由について,各発達段階に相当する項目を提示の上,そのそれぞれの項目にどの程度重きを置いて判断しているのかを問う形で測定することにした。
さらに,このようにして測定した道徳判断のパターンときまり遵守に対する意見との関係を明らかにすることを目的にした。
【方 法】
大学生155名(男性70名,女性85名,年齢18から23歳,平均年齢20.2歳)を調査協力者とした。きまり遵守に対する意見(5件法)に加えて,人を怪我させないこと,人のものを盗まないこと,人を罵倒しないこと,のそれぞれが大切とされる理由について,道徳の各発達段階に相当する理由を提示し,自身の判断に際してそのそれぞれの比重(総計10点)について回答を求める無記名自記式の調査票を,2013年10月中旬から同年11月中旬に配布の上,調査を実施した。
【結果&考察】
きまり遵守意見について因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った結果,「自分より上の立場の人に教わったら,そのきまりを正しいものとして守る」等の5項目(序列秩序尊重因子),「守ることの見返りを期待できないきまりであれば,守らないかもしれない」等の10項目(損得因子),「親しい人を守るために,世の中で認められていない方法を使うことがあるかもしれない」等の3項目(親近者配慮因子),「全く知らない人が不正なことをしているのに気づいたとしても,さほど気にならない(R)」等の3項目(社会的正義因子)の因子負荷量が高い4因子が抽出された。また,該当項目で構成される各尺度の信頼性係数αは,.79,.79,.60,.52であった。若干信頼性は低かったものの,該当項目の総得点を各尺度得点として,以下の分析に用いた。
一方,道徳判断についての回答結果は図1のとおりであった。
つづいて,道徳判断の各発達段階の比重の平均値を調査協力者毎に算出し,それをクラスター分析(Ward法)した結果,図2が示すとおり,段階1の比重が重いクラスター1,段階2の比重が重めのクラスター2,段階3の比重が圧倒的に重いクラスター3,段階3のほか段階4の比重が重いクラスター4,の4クラスターになった。そのクラスター毎にきまり遵守意見尺度得点について検討したところ,表1の結果が得られた。
信頼性が十分でなかった親近者配慮,社会的正義の両尺度に関しては,クラスター間に有意差が見られなかったものの,どの道徳発達段階に比重を置いて判断するかによって,きまり遵守意見が異なるとの結果が得られ,きまり遵守の働きかけへの示唆を得ることができた。
付 記
林桃花氏が収集したデータを再分析したものである。
さらに,このようにして測定した道徳判断のパターンときまり遵守に対する意見との関係を明らかにすることを目的にした。
【方 法】
大学生155名(男性70名,女性85名,年齢18から23歳,平均年齢20.2歳)を調査協力者とした。きまり遵守に対する意見(5件法)に加えて,人を怪我させないこと,人のものを盗まないこと,人を罵倒しないこと,のそれぞれが大切とされる理由について,道徳の各発達段階に相当する理由を提示し,自身の判断に際してそのそれぞれの比重(総計10点)について回答を求める無記名自記式の調査票を,2013年10月中旬から同年11月中旬に配布の上,調査を実施した。
【結果&考察】
きまり遵守意見について因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った結果,「自分より上の立場の人に教わったら,そのきまりを正しいものとして守る」等の5項目(序列秩序尊重因子),「守ることの見返りを期待できないきまりであれば,守らないかもしれない」等の10項目(損得因子),「親しい人を守るために,世の中で認められていない方法を使うことがあるかもしれない」等の3項目(親近者配慮因子),「全く知らない人が不正なことをしているのに気づいたとしても,さほど気にならない(R)」等の3項目(社会的正義因子)の因子負荷量が高い4因子が抽出された。また,該当項目で構成される各尺度の信頼性係数αは,.79,.79,.60,.52であった。若干信頼性は低かったものの,該当項目の総得点を各尺度得点として,以下の分析に用いた。
一方,道徳判断についての回答結果は図1のとおりであった。
つづいて,道徳判断の各発達段階の比重の平均値を調査協力者毎に算出し,それをクラスター分析(Ward法)した結果,図2が示すとおり,段階1の比重が重いクラスター1,段階2の比重が重めのクラスター2,段階3の比重が圧倒的に重いクラスター3,段階3のほか段階4の比重が重いクラスター4,の4クラスターになった。そのクラスター毎にきまり遵守意見尺度得点について検討したところ,表1の結果が得られた。
信頼性が十分でなかった親近者配慮,社会的正義の両尺度に関しては,クラスター間に有意差が見られなかったものの,どの道徳発達段階に比重を置いて判断するかによって,きまり遵守意見が異なるとの結果が得られ,きまり遵守の働きかけへの示唆を得ることができた。
付 記
林桃花氏が収集したデータを再分析したものである。