The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD056] 循環型いじめに関する研究

拒絶感受性に着目して

三島浩路 (中部大学)

Keywords:いじめ, 拒絶感受性, 小学生

<目 的>
被害者と加害者とが入れ替わりながら継続する「いじめ」を「循環型いじめ」とする。関係性攻撃による「循環型いじめ」について,いくつかの事例が報告されている(e.g., Harachi et al., 1999)。オーストラリアの中学生・高校生約4,000人を対象に行った調査(Herbert et al., 2004)の結果でも,被害経験と加害経験との相関が高いことが報告されており,その背景として,「循環型いじめ」の存在を著者は示唆している。「循環型いじめ」に関して,我が国においてはこれまで実証的な研究は行われていない。また,先に紹介した海外の研究においても,「循環型いじめ」が起きるメカニズムについては検討されていない。
本研究では,拒絶感受性(Downey & Feldman, 1996)に着目し,被害者と加害者とが入れ替わるプロセスを検討する。
拒絶感受性が強い児童・生徒は,仲間から排斥されたと感じやすく,「いじめ」被害者となるリスクが大きい。さらに,拒絶感受性が強い児童・生徒は,拒絶されたことに対する怒りを感じやすいために,反撃的な攻撃行動を行いやすく加害者となるリスクも合わせ持っている。こうしたプロセスをモデル化して妥当性を検証する。
<方 法>
対象と時期:A市立B小学校4~6年生180人(男子86人 女子94人)を対象に2013年6月と2014年1月の2回調査を行った。なお,欠損値があるデータは除外したため分析に用いたのは,154人分(4年54人 5年生46人 6年生54人)のデータである。さらに,第2回調査時に学級担任(6人)に対して,学級のすべての児童について,関係性攻撃傾向(質問内容:仲間はずれにしたり,無視したりするなど,人間関係を利用した攻撃を頻繁に行う)について5段階で評定するように依頼した。
質問の概要:拒絶感受性(三島, 2014)に関する3因子のうち2因子(F1:対人関係の不安定感・拒絶の予期(8項目) F2:拒絶に対する不安・過敏(4項目))について,第1回調査時に収集したデータを使用し,第3因子(拒絶に対する怒り・反撃)については,第2回調査時に収集したデータを使用した。「いじめ被害」に関しては,親しい仲間からのいじめ被害(2項目),親しくない相手からのいじめ被害(2項目)について第2回調査時に収集したデータを使用した。
<結果と考察>
共分散構造分析を行った結果,データに対するモデルのあてはまりは良好だった(GFI=.98, AGFI=.94, CFI=.98, RMSEA=.051)。年度当初に測定した拒絶感受性(F1・F2)は,年度末に測定した「いじめ被害」に影響を与えることが示唆された。さらに,「いじめ」被害の程度は,教師評定の関係性攻撃傾向に直接的な影響は与えないが,拒絶感受性(F3)に影響を与えることを通して,間接的に影響を与えることも示唆され,これらの結果は,拒絶感受性が「循環型いじめ」に関連する可能性を示すものである。
■本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号25380898)によるものである。