The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD060] 4歳児発達チェックリストの開発とその活用の検討

早期発見・早期支援の仕組みのために

荻野昌秀 (足立区障がい福祉センター)

Keywords:発達課題, 早期発見, 早期支援

問題と目的
通常学級に在籍する「発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒」が6.5%から6.8%(95%信頼区間)とされる(文部科学省,2012)昨今,発達課題のある児の早期発見,早期支援が求められていることは明白である。
5歳児健診などの対策が取られているが,5歳児で発達課題が確認された児に対しては,就学までに支援を受けられる期間が短いという問題が挙げられる。また,実施場所については保健所や就学時健診などが想定されるが,集団活動という観点から,所属する集団で行うことが効果的かつ効率的ではないかと考えられる。
そこで本研究では,保育所における4歳児時点の早期発見,早期支援の仕組みを構築するため,4歳児対象の発達チェックリストの開発とその活用について検討する。
方 法
調査対象 調査当時,A市の公立保育所に在籍していた4歳児の担当保育士。有効回答は894名分(男児475名,女児419名),平均月齢53.52ヶ月(範囲:48~62ヶ月,SD=3.40)。
尺度の作成 SDQ(Goodman,1997),ASQ(大六ら,2003)や新版K式発達検査(中瀬・西尾,2001)などを参考にして仮のチェックリストを作成し試行実施し,内容や表現について検討を行った。
質問項目および手続き 「名前を呼んでも振り向くこともなく,どんどん行ってしまう」など認知や自己統制に関する4項目,「同年齢の仲間とのごっこ遊びに参加しない」など対人性や社会性に関する4項目,「会話の中で,相手の質問を無視したりちぐはぐな答えが返ってくることがある」など言語やコミュニケーションに関する4項目,「はさみで簡単な図形を切り抜くことに困難さがある」など粗大,微細運動に関する4項目,「粘土や砂を触ることを過度に嫌がる,全く嫌がらない」など過敏・非過敏性に関する4項目の計20項目を実施した。各項目に対して1(全く見られない)から4(常に見られる)の4件法で回答を依頼した。
結果と考察
主因子法,promax回転による因子分析を実施した。因子負荷量.40未満を基準に5項目を除外して15項目で再度因子分析を実施した結果,4因子が抽出された(Table 1)。各項目の内容から,第1因子を「理解・言語・コミュニケーション」,第2因子を「対人性・社会性」,第3因子を「粗大・微細運動」,第4因子を「多動・衝動性」と命名した。
続いて,各因子のα係数および5ヶ月後に再実施した再検査信頼性(対象児159名,男児79名,女児80名)を算出した(Table 2)。α係数は.74から.91の範囲にあり,再検査信頼性は全体が.90であり各因子は.71から.89の範囲であった。
以上の結果から,本研究において作成したチェックリストは一定の信頼性,妥当性を備えていることが確認された。しかし,他の尺度との関連性を分析して構成概念妥当性を確認するなど,さらなる検証が望まれる。
本尺度は保育士が記入することから項目数を少なくし,効率性にすぐれ,スクリーニングにも適した尺度となった。チェックリストの活用として,保育士が記入したシートを元に心理士,作業療法士等の専門職による行動観察を行い,支援が必要な児に対しての具体的な手立てを保育所の担当者と検討し,実施している。これらの活用方法と効果についても,今後検証していく予定である。