[PD064] 小学校における個別の指導計画の観点に関する検討
書式の現状と課題
Keywords:小学校, 個別の指導計画, 観点
目 的
小学校において個別の指導計画の作成が求められ,その作成には特別支援教育コーディネーター(以下コーディネーター)も大きくかかわっている(腰川ら,2014)。小学校の個別の指導計画の作成率は90%以上(文部科学省,2014)であるが,個別の指導計画を作成する際に,「実態」「目標」「手立て」の記述やつながりが適切ではない(海津ら,2004;栗原ら,2011;猪子,2012),書式の項目のとらえ方が幅広く,的確に内容を捉えていない(栗原ら,2011)ことも示されてきた。一方で,個別の指導計画の書式の変更が記述内容の変化につながっている(栗原ら,2011)こと,各学校においてコーディネーターが中心となって個別の指導計画の書式を工夫している(腰川ら,2014)という報告もある。これらのことから、個別の指導計画の書式がどのような内容で構成されているのかが,支援の具体化と深く関わっており、コーディネーターの活動の指針としても重要であると考えられる。そこで,本研究では小学校の個別の指導計画書式における記述の観点の現状および課題を検討した。
方 法
1.分析対象:首都圏小学校9校(a~f通常学級6校,g~i特別支援学級3校)の個別の指導計画
2.分析方法:各学校の個別の指導計画の記述の観点を ア.児童の実態(困難さや課題,課題の原因,得意な側面)イ.目標(長期目標,短期目標)ウ.指導の手立て○児童に対する手立て;学期ごと,教科ごと,領域ごと○児童以外の手立て○指導の担当者や場面 エ.評価と課題(評価,今後の課題)に分けて,観点の有無を検討した。ただし,学期途中の個別の指導計画の場合は,評価と課題の有無は分析を行わなかった。
結 果
ア.児童の実態では,hを除くすべての学校で記述があり,困難さや課題は観点が多かったが,得意な側面はやや少なく,課題の原因の観点はaのみであった。イ.目標では,短期目標の観点は7校であったが、長期目標は3校のみであった。ウ.指導の手立てでは,すべての学校に観点があり,児童への手立ては領域ごとの観点が7校と多く,次いで学期ごと4校,教科ごと2校であった。児童以外の観点3校,担当者や場面に関する記述は1校にとどまった。エ.評価と課題では,分析可能である個別の指導計画にはすべて観点があり,そのうち評価と課題の一方のみが2校であった。
考 察
困難や課題の項目が9校中8校にあるのに対し、自助資源となる得意な側面の項目は4校である。また、長期目標,短期目標の観点がない書式も見られた。指導の具体化のために指導の目標と児童のもつ資源への着目が位置づけられる必要がある。また,通常学級においても教科ごとの指導の手立てよりも領域ごとの観点が多く,作成された指導の手立ての内容,授業への生かし方についてさらに検討することも課題である。以上のことから,個別の指導計画が的確な児童の支援となるためには、指導計画の書式の検討及び書式の各項目についてのコーディネーターの理解が必要である。このためには、指導計画の書式を見直し活用を図るための検討・研修の機会が必要であると考える。
小学校において個別の指導計画の作成が求められ,その作成には特別支援教育コーディネーター(以下コーディネーター)も大きくかかわっている(腰川ら,2014)。小学校の個別の指導計画の作成率は90%以上(文部科学省,2014)であるが,個別の指導計画を作成する際に,「実態」「目標」「手立て」の記述やつながりが適切ではない(海津ら,2004;栗原ら,2011;猪子,2012),書式の項目のとらえ方が幅広く,的確に内容を捉えていない(栗原ら,2011)ことも示されてきた。一方で,個別の指導計画の書式の変更が記述内容の変化につながっている(栗原ら,2011)こと,各学校においてコーディネーターが中心となって個別の指導計画の書式を工夫している(腰川ら,2014)という報告もある。これらのことから、個別の指導計画の書式がどのような内容で構成されているのかが,支援の具体化と深く関わっており、コーディネーターの活動の指針としても重要であると考えられる。そこで,本研究では小学校の個別の指導計画書式における記述の観点の現状および課題を検討した。
方 法
1.分析対象:首都圏小学校9校(a~f通常学級6校,g~i特別支援学級3校)の個別の指導計画
2.分析方法:各学校の個別の指導計画の記述の観点を ア.児童の実態(困難さや課題,課題の原因,得意な側面)イ.目標(長期目標,短期目標)ウ.指導の手立て○児童に対する手立て;学期ごと,教科ごと,領域ごと○児童以外の手立て○指導の担当者や場面 エ.評価と課題(評価,今後の課題)に分けて,観点の有無を検討した。ただし,学期途中の個別の指導計画の場合は,評価と課題の有無は分析を行わなかった。
結 果
ア.児童の実態では,hを除くすべての学校で記述があり,困難さや課題は観点が多かったが,得意な側面はやや少なく,課題の原因の観点はaのみであった。イ.目標では,短期目標の観点は7校であったが、長期目標は3校のみであった。ウ.指導の手立てでは,すべての学校に観点があり,児童への手立ては領域ごとの観点が7校と多く,次いで学期ごと4校,教科ごと2校であった。児童以外の観点3校,担当者や場面に関する記述は1校にとどまった。エ.評価と課題では,分析可能である個別の指導計画にはすべて観点があり,そのうち評価と課題の一方のみが2校であった。
考 察
困難や課題の項目が9校中8校にあるのに対し、自助資源となる得意な側面の項目は4校である。また、長期目標,短期目標の観点がない書式も見られた。指導の具体化のために指導の目標と児童のもつ資源への着目が位置づけられる必要がある。また,通常学級においても教科ごとの指導の手立てよりも領域ごとの観点が多く,作成された指導の手立ての内容,授業への生かし方についてさらに検討することも課題である。以上のことから,個別の指導計画が的確な児童の支援となるためには、指導計画の書式の検討及び書式の各項目についてのコーディネーターの理解が必要である。このためには、指導計画の書式を見直し活用を図るための検討・研修の機会が必要であると考える。