The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD068] 養護教諭を目指す学生の発達障害に対するイメージと知識・理解

角田智恵美, 高木恵利佳# (園田学園女子大学)

Keywords:養護教諭, 発達障害, 特別支援教育

問題と目的
平成19年度より「特別支援教育」が本格的に開始され,現在学校現場では様々な体制や工夫の下教育が展開されている。しかし,文部科学省より平成24年に発表された調査では,支援が必要である児童生徒で,何らかの支援がなされている割合は約半数程度であり,未だ十分な実施に至っているとは言い難い。上記の調査結果を受け,教員全体の専門性の向上のためには,特別支援コーディネータや教員養成段階での知識・指導技術の習得の必要性が指摘されている。
本研究では,将来特別支援教育の中核となることも多い養護教諭を目指す学生に質問紙調査を実施し,現在学生が発達障害に対しどのような知識や認知を持っているかを明らかにするとともに,今後求められる知識・理解,実践力について検討することを目的とした。
方 法
A大学の養護教諭養成コースに在籍する1年生38人,2年生38人,3年生31人,4年生34人,合計141人(いずれも女子)を対象に質問紙調査を実施した。この内,121人より回答を得た(回答率85.8%)。
調査内容は,「発達障害者との関わりの有無」,「発達障害のイメージ」,「発達障害者への対応方法」,「大学での発達障害に関する学びについて」である。
結果と考察
今までに発達障害を持つ人(以下,疑いも含め発達障害者と記す)と関わった経験について問うたところ,全体の71.7%の者が関わったことが「ある」と答えた。学年別に見ると,特に4年生では96.3%と,ほとんどの者が関わった経験を有しており,他学年より有意に高い結果となった(p<0.01)。一方,3年生は関わった経験が「ある」と答えた者は,55.6%と有意に低い結果となった(p<0.05)。A大学では,多くの者が3年生の後期に養護実習(教育実習)を行っており,調査時に,4年生は既に学校での実習を終えていたため,実習先での関わりがあったものと考えられる。一方,3年生が高校在学中には既に特別支援教育が開始されていたとはいえ,始まって間もない時期であり,学校現場で生徒が意識するほど特別支援教育が定着していなかったことが推測された。
発達障害者と関わった経験が「ある」者に関わる前のイメージについて自由記述で回答を得た結果,110件のコードが抽出された。カテゴリー分類した結果,「コミュニケーションが困難」(17),「接し方がわからない」(15),「普通と違う」(14),「怖い」(11),「覚えていない」(10)が多く挙げられた。関わった後イメージに変化があったかどうか聞いたところ,68.6%の者が変化があったと答えた。変化の内容を分析すると「イメージの好転」「理解の深まり」などいずれも肯定的な回答であり,否定的な回答は見られなかった。
発達障害者への対応方法について簡単な事例を提示し,養護教諭としてどのような対応を行うか質問した。自由記述の回答から229件のコードが抽出された。カテゴリー分類した結果,以下の5つが多く挙げられた。「話を聞く」(58),「落ち着かせる」(40),「保護者・担任と話し合う」(26),「居場所を作ってあげる」(12),「友人との交友関係の改善を図る」(7)。回答から,発達障害者への一般的な対応のポイントについては理解している者が多いものの,具体的な対応方法についてはこれまでに学ぶ機会もあまりないため,不十分な理解に留まっていた。
また、実際に養護教諭として対応する際に不安に思う点について自由記述で聞いたところ,173件のコードが抽出された。カテゴリー分類した結果,「接し方」(68),「対応方法」(52),「保護者や教員との連携方法」(32),「発達障害に対する自身の基本的な知識・理解」(12)について不安を抱いていることが分かった。
発達障害について大学で学ぶ必要性について聞いたところ,94.7%の者が学ぶ必要性が「ある」と答えた。学ぶ理由としては,「養護教諭になったら関わるため」,「養護教諭になった時適切に対応できるように」など将来必要とされる場面を想定した回答が多かった。学ぶべき内容について自由記述で聞いたところ,56件のコードが抽出された。カテゴリー分類した結果,「対応の仕方」(21),「発達障害の基本事項」(⒕),「保護者や主治医、他教員との連携の仕方」(2)が挙げられた。
養護教諭は,特別支援教育を推進していく際,重要な立場にあり,学生の学びへのニーズも高い。今後大学では,特別支援教育に特化した科目を設定するなど学びを充実させていく必要があろう。