The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD071] 発達障害のある人の青年期における課題と支援

インタビューによる検討

日花滋子 (高島市教育委員会)

Keywords:発達課題, 自立, 包括的支援

1.はじめに
QOL思想が広まってきた近年,その人らしい生き方をしているかどうかが問われる。学び,遊び,働き等の時間を充実させ豊かにすることがQOLの向上をもたらすと論じられている。だが,発達障害のある人のQOLを高めるには様々な課題がある。
そこで,発達障害のある人の青年期の生活と労働,障害福祉制度の問題等,具体的な事例を示しながら,彼らの青年期における課題と支援について考えたい。またQOLの観点から,彼らの未来を納得のいくものにするために,就労支援だけではなく,余暇や人間関係のあり方等を含めた社会生活支援の方向性も探っていきたい。
2.目的と方法
1)目的
当事者と家族からの聴き取り調査による事例検討を通して,発達障害のある人の発達的課題を明らかにする。そして,彼らの自立に向けての基礎となる力やQOLを高めるための支援とは何かを明らかにする。この2点を研究の目的とする。
尚,研究の目的をより確かにするために,T市支援体制等についての聞き取り調査と青年期の自己理解アンケート調査を併せて実施する。
2)方法と対象
・青年期の自己理解アンケート調査
調査の対象:当事者(12歳~30歳)7名,当事者のきょうだい(20歳~25歳)3名,一般の青年(20歳~25歳)6名
調査期間:2014年7月15日~12月15日
・発達障害のある青年,家族からの聴き取り調査
調査の対象:通級指導教室終了者(23歳~30歳)3名,通級指導教室終了者の家族 6名
調査期間:2014年1月23日~12月23日
・関係機関への訪問と聞き取り調査
調査の対象:障害者福祉関係機関6ヶ所
調査期間:2014年9月18日~11月10日
3.研究結果と考察
1)当事者等(青年)へのアンケート結果と考察
青年期には社会的な自己を意識し,次第に自己の内面に目を向けるようになる。ポジティブな自己認識を維持することは,QOLを高めるためにも必要な視点である。「自分が好き」「自分に満足する」ことは,日々の生活を幸せに,健康的に送るためのポイントであると考える。
2)事例分析対象者の検討
-3事例を通しての考察
当事者と親への聴き取り調査を通して,親子の関係,本人の自己理解や自尊感情,彼らが必要としている支援とは何かを検討した。課題に直面した彼らがそれをどう乗り越えていくか,その彼らをどう支援するか,当事者やその家族の面接への聴き取りを通して考察した。
発達障害のある人の青年期における課題には,自己理解,親子関係,職場の抱える課題,障害福祉制度のあり方等が大きく影響していた。
3)T市の支援体制の現状(特徴と課題)
企業就労に関しては,T市にある50人以上の企業の障害者雇用率は平均2%を超えており,雇用率を引き合いにしての市内での進路開拓は限界に来ている。50人以下の中小企業も障害者の雇用に積極的で,すでに障害者雇用率は高い。就労移行型や就労継続A型・B型事業のさらなる展開が求められる。
5.おわりに
発達障害のある人の青年期における課題を取り上げたが,「自立」の課題は発達に障害のある青年に限った問題ではない。自立するという課題は,人にとって人生最大の課題である。それは同時に社会全体にとっても重要な課題である。