The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD072] 知的障害児童の身体活動に及ぼす授業形態の影響

体育と遊びの指導の比較

松崎保弘 (大阪体育大学)

Keywords:知的障害, 身体活動, 授業

【はじめに】
知的障害の児童は一般的に不活発である。そのため多くの特別支援学校で児童生徒の運動を確保する取り組みがなされている。本研究では運動量の確保をねらいとして行った体育の授業と遊びの指導の授業を比較し,知的障害児の運動能力の向上にむけた授業について考察する。
【方 法】
1 対象
小学部4年生を対象とした。授業は同じ教師群によるチームティーチングで実施されている。授業のリード担当は異なり,体育は教師経験16年,遊びの指導は教師経験9年の女性教諭が行った。
2 授業内容
体育の授業は体育館で実施したキックベースボールであり,児童は体育館に移動直後にジョギング,準備運動としてのダンスの後,2イニングのゲームを行った。授業時間は約50分であった。一方,遊びの指導はプレイルームで行い,内容は「狼さん」と「猫とネズミ」のオペレッタを題材にした鬼ごっこであった。児童は狼あるいは猫を周回した後に逃げる。授業時間は約45分であった。
3 身体活動の測定
男子児童3名に小型心拍計(ユニオンツール製,WHS-1)を装着し,心拍数を測定した。心拍数は4秒毎に計測されるので,1分ごとの平均を当該児童の心拍数とした。
【結果と考察】
図1は体育と遊びの指導における心拍数の変化である。体育の授業は常にジョギングから始まり,心拍数は160bpmを示した。ダンスの心拍数も最高151bpmであった。しかし,授業が守備、攻撃の順で2セットのゲームを行った際の心拍数は最高135bpm(M=101, SD=12.2)であった。一方,遊びの指導は開始当初に教師による場面の説明や確認などを行うため座った状況が続いた。しかし,鬼ごっこ様の11分間のゲーム中の心拍数は最高165bpm(M=117, SD=26.4)と体育より高い値を示した。
体育において,児童の活動水準が高かった内容は教師の関与がほとんどないジョギングである。このジョギングを除く体育と遊びの指導の活動水準を心拍数出現頻度で比較した(図2)。体育の授業では80~100bpmの心拍水準の頻度が高く,強度においては150bpmの心拍数を一人が示したが,他の二人の心拍数は最高でも130bpm程度であった。一方,遊びの指導においては出現頻度の多い心拍水準域に違いは無かったが,最高心拍数はいずれの児童も160bpm以上を示した。
知的障害児の運動能力の向上には体育の授業より余暇時間の活動が効果を上げ,さらに運動強度との関係を示唆する報告がある(Sit et al., 2008)。特別支援学校における小学部段階の運動指導として,遊びの指導は効果的であると考える。