[PE001] スクールカウンセラーと教師のアセスメントの共有方略パターンに関する検討
職種別の特徴の検討
Keywords:アセスメント, 協働, 共有方略
本研究の目的
学校教育現場における心理専門職と教師の協働的援助の基盤として,アセスメントの果たす役割は大きい(松澤,2008)。しかし,従来の先行研究では,職種間の専門的視点を踏まえてアセスメントを円滑に共有するための方略の実態について十分に検討されているとは言い難い。したがってアセスメントの違いを認識し相互の考えを共有しながら協働へとつなげるため,現場の心理専門職や教師が用いる実践的な方略を検討することで,より質の高い協働への示唆が得られると考える。そこで,本研究では中学校のスクールカウンセラー(以下,SC)および教師のアセスメントの共有方略のパターンの実態について職種別の特徴の検討を行う。
方 法
⑴対象:関東地方の公立中学校500校を無作為に抽出し,質問紙を郵送・配布した。128校から返送され(回収率25.6%),SC96名,学級担任142名,養護教諭69名,その他の教師111名,合計418名を分析対象とした。⑵質問紙の構成:①フェイスシート,②アセスメントの共有方略尺度6因子27項目5件法(「積極的かつ迅速な情報・意見の共有」「情報・意見共有時の配慮」「苦労への労い」「他の教師を通した意見調整」「専門的見解の伝達」「見解の不一致時の対処」),③集団内葛藤対処行動(村山・三浦,2012),④チーム内葛藤尺度(西村,2005),⑤事例援助におけるSCと教師の協働尺度(石隈(2001)を参考)。
結果と考察
アセスメントの共有方略の下位尺度得点の標準得点を用いてWard法によるクラスター分析を行った結果,全ての下位尺度得点が高い「方略多様群」(CL1;166名,39.7%),積極的かつ迅速な情報・意見交換のみ高い値が示された「積極的・迅速な共有群」(CL2;69名,16.5%),他の教師を通した意見調整が高い「他教師仲介群」(CL3;117名,28.0%),全ての方略得点が低い「低方略群」(CL4(66名,15.8%)に分類された。
続いて,SC,学級担任,養護教諭,その他の教師が,どのクラスターに多く属しているのかを検討するため,CL1~CL4と職種の度数(人数)・割合のクロス集計を行いχ²検定を行ったところ(Table 1),1%水準で有意な差が見られた(χ²=47.39, df=9, p<.01)。調整済み残差の値を踏まえると,「方略多様群」(CL1)にはSCが属する割合が高く,学級担任が属する割合が低かった。「積極的・迅速な共有群」(CL2)には学級担任が属する割合が高く,反対にSCが属する割合が低い傾向が示された。また,「他教師仲介群」(CL3)にはSCが属する割合が高い傾向が示された。さらに,「低方略群」(CL4)には,学級担任が属する割合が高く,反対にSCが属する割合が低い傾向が示された。
以上から職種ごとにアセスメントの共有方略に関するパターンに違いがあり,特にSCや担任が実践現場で用いている特徴的な方略が示されたと考えられる。
キーワード:アセスメント,協働,共有方略
学校教育現場における心理専門職と教師の協働的援助の基盤として,アセスメントの果たす役割は大きい(松澤,2008)。しかし,従来の先行研究では,職種間の専門的視点を踏まえてアセスメントを円滑に共有するための方略の実態について十分に検討されているとは言い難い。したがってアセスメントの違いを認識し相互の考えを共有しながら協働へとつなげるため,現場の心理専門職や教師が用いる実践的な方略を検討することで,より質の高い協働への示唆が得られると考える。そこで,本研究では中学校のスクールカウンセラー(以下,SC)および教師のアセスメントの共有方略のパターンの実態について職種別の特徴の検討を行う。
方 法
⑴対象:関東地方の公立中学校500校を無作為に抽出し,質問紙を郵送・配布した。128校から返送され(回収率25.6%),SC96名,学級担任142名,養護教諭69名,その他の教師111名,合計418名を分析対象とした。⑵質問紙の構成:①フェイスシート,②アセスメントの共有方略尺度6因子27項目5件法(「積極的かつ迅速な情報・意見の共有」「情報・意見共有時の配慮」「苦労への労い」「他の教師を通した意見調整」「専門的見解の伝達」「見解の不一致時の対処」),③集団内葛藤対処行動(村山・三浦,2012),④チーム内葛藤尺度(西村,2005),⑤事例援助におけるSCと教師の協働尺度(石隈(2001)を参考)。
結果と考察
アセスメントの共有方略の下位尺度得点の標準得点を用いてWard法によるクラスター分析を行った結果,全ての下位尺度得点が高い「方略多様群」(CL1;166名,39.7%),積極的かつ迅速な情報・意見交換のみ高い値が示された「積極的・迅速な共有群」(CL2;69名,16.5%),他の教師を通した意見調整が高い「他教師仲介群」(CL3;117名,28.0%),全ての方略得点が低い「低方略群」(CL4(66名,15.8%)に分類された。
続いて,SC,学級担任,養護教諭,その他の教師が,どのクラスターに多く属しているのかを検討するため,CL1~CL4と職種の度数(人数)・割合のクロス集計を行いχ²検定を行ったところ(Table 1),1%水準で有意な差が見られた(χ²=47.39, df=9, p<.01)。調整済み残差の値を踏まえると,「方略多様群」(CL1)にはSCが属する割合が高く,学級担任が属する割合が低かった。「積極的・迅速な共有群」(CL2)には学級担任が属する割合が高く,反対にSCが属する割合が低い傾向が示された。また,「他教師仲介群」(CL3)にはSCが属する割合が高い傾向が示された。さらに,「低方略群」(CL4)には,学級担任が属する割合が高く,反対にSCが属する割合が低い傾向が示された。
以上から職種ごとにアセスメントの共有方略に関するパターンに違いがあり,特にSCや担任が実践現場で用いている特徴的な方略が示されたと考えられる。
キーワード:アセスメント,協働,共有方略