日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PE

2015年8月27日(木) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PE002] 友人の授業態度が生徒の授業態度に及ぼす影響

友人に対する親和的感情と競争的感情の調整効果に着目して

石田靖彦1, 友廣真由#2 (1.愛知教育大学, 2.十社小学校)

キーワード:授業態度, 友人からの影響, 友人に対する感情

問題と目的
授業は教室という集団場面で実施されており,他の生徒の授業態度や生徒との関係といった社会的な要因が生徒の授業態度に影響を及ぼしている。
本研究では,生徒の授業態度に影響する要因として,⑴友人の授業態度,⑵友人に対する感情(親和的,競争的)を取り上げる。そして友人からの影響が友人に対する感情によって異なるかどうか(調整されるかどうか)を明らかにする。
仮説はこれまでの研究(石田・永田,2011,石田・吉田,2015)を踏まえて以下の3つを設定した。
・仮説1:友人の授業態度が良い生徒ほど授業態度が良い。
・仮説2:友人に対する感情が親和的,競争的である生徒ほど授業態度が良い。
・仮説3:友人の授業態度の影響は,その友人に対する感情の強さに調整される。具体的には友人に対する親和的,競争的感情が強いほどその友人からの影響は強い。
方 法
調査対象・調査時期 公立中学校1・3年生計370名(男=186,女=184)。調査時期2013年10月。
調査内容 同じ学級に所属する親しい同性友人をひとりを想起させて⑴⑵に回答を求めた。
⑴ 友人の授業態度
石田・永田(2011)で使用した4項目を修正して使用した。「授業中は,黒板に書かれたことや先生の話をしっかり聞いて理解している」「宿題や課題が出されたときは忘れずにきちんとしてくる」「先生が質問したときは自分から進んで発言する」「グループで課題に取り組むときはふざけずにまじめに取り組む」の4項目。5件法。
⑵ 友人に対する感情
榎本(1999),太田(1999)を参考にした10項目で測定した。因子分析(主因子法,プロマックス回転)の結果,「親和的感情(5項目:その友だちと一緒にいるとほっとする)」「競争的感情(5項目:その友だちに負けると悔しい)」の2因子が抽出された。
⑶ 生徒自身の授業態度
友人の授業態度と同じ項目を主語を「あなた」に変えて使用した。
結果と考察
生徒の授業態度を基準変数とし,友人の授業態度,友人に対する感情,友人の授業態度×友人に対する感情の交互作用項(友人に対する感情の調整効果)を説明変数とする階層的重回帰分析を,親和的感情と競争的感情別に行った。
親和的感情の分析では,友人の取り組み(b=.29***),親和的感情(b=.18***)が有意となり,授業態度が良い友人を持つ生徒ほど授業態度が良いこと(仮説1を支持),友人に対する親和的感情が高いほど授業態度が良いこと(仮説2を支持)が示された。親和的感情の調整効果(交互作用項)は有意とはならなかった(仮説3を不支持)。
競争的感情の分析では,友人の授業態度(b=.28***:仮説1を支持),競争的的感情(b=.23***:仮説2を支持),友人の授業態度×競争的感情の交互作用(b=.02*:仮説3を支持)が有意となった。そこで競争的感情の調整効果について,競争的感情の低・中・高における友人の学習態度の単純傾斜検定を行った。その結果,友人からの影響は競争的感情が高いほど強い可能性が示唆された(競争的感情が高い場合b=.36***,中程度の場合b=.28***,低い場合b=.20**:Figure1)。
以上の結果から,1.友人の授業態度は生徒の授業態度を高める,2.友人に対する親和的感情,競争的感情はともに生徒の授業態度を高める,3.友人の授業態度が生徒の授業態度に及ぼす影響は友人に対する競争的感情が高いほど強いといえる。