The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE003] 小学校における学級の社会的目標と学習動機づけの関係

友人との学習活動に着目して

大谷和大1, 岡田涼2, 中谷素之3, 伊藤崇達4 (1.大阪大学大学院, 2.香川大学, 3.名古屋大学大学院, 4.京都教育大学)

Keywords:学級環境, 学習動機づけ

問題
日常の教育活動において,学級では様々な目標が強調されている。なかでも,人間関係の円滑化や規範遵守に関する社会面の目標が特に強調される傾向にある(大谷ら,2014)。こうした社会的な目標が強調されると,学級内の人間関係が円滑化し,様々な派生的な影響をもたらす可能性がある。学級の社会的風土については,近年いくつかの実証的研究が見られるが(e.g., Patrick et al.,2011),それらでは必ずしも社会的目標の次元が明確に概念化されていないこと,学級レベルの学業達成プロセスが明らかにされていないという問題があると考えられる。そこで,本研究では,学級の社会的な目標構造が児童の学習動機づけに間接的に関わるプロセスについて,マルチレベルモデルをあてはめ,学級水準と児童水準の2水準から検討する。
方法
調査対象者
関西圏内の2県に属する3市の小学校23校(117学級)に所属する小学生合計3609名(女児=1756名,男児=1817名,不明=36名)。
質問紙
以下の内容について全て5件法で回答を求めた。①学級の社会的目標構造(大谷ら,2014):14項目。②友人との学習活動(相互学習)(岡田,2008):5項目。③内発的動機づけ(田中・山内,2000)6項目。④学業自己効力感(松沼,2004)8項目。
結果と考察
尺度構成と記述統計
本研究で用いる尺度について,信頼性係数(ω)を算出したところ,それぞれの尺度は内的に一貫していたため,全ての変数について加算平均を使用した。また,級内相関係数(ICC)は,全ての尺度において0.1%水準で有意であったことから,マルチレベルモデルを用いる必要があるといえる。記述統計量をTable 1に示す。
マルチレベルSEMによるモデルの検討
学級の社会的目標が児童の学習動機づけに関連するプロセスを検討するためにマルチレベルSEMを行った。友人との学習活動を媒介変数,性別を児童レベル,学年を学級レベルの統制変数として投入した。モデルの適合度は良好であった(Figure 1)。
学級レベルにおいて,媒介分析(Sobelの検定)を行ったところ,向社会的目標→友人との学習活動→内発的動機づけの間接効果(B= 0.18,p= .002),向社会的目標→友人との学習活動→学業自己効力感の間接効果が有意であった(B= 0.22,p= .002)。すなわち,向社会的目標が強調される学級ほど,そこに所属する児童は,友だちと相互学習を行う傾向にある。そして,学業に対する内発的動機づけと自己効力感も高いことが分かった。なお,児童レベルにおいても,ほぼ同様の結果が得られた。
学級の社会的目標構造は,児童の社会面に関するものであるものの,対人面での交流を増加させ,異なった領域である学業面への動機づけに関連することが分かった。このことは,児童の社会面,学業面における適応を考える上で,向社会性に関するメッセージを伝えていくことの重要性を示唆するものである。今後は,縦断的に検討するなど精緻に検討していくことが求められる。