[PE004] 大学の心理教育相談室における学習支援に関する研究(9)
学習支援が大学生に及ぼす効果
キーワード:学習支援, 認知カウンセリング, 大学生
広島大学大学院教育学研究科附属教育実践総合センターでは,心理教育相談室(にこにこルーム)の支援活動として地域の小学生(4~6年生)に対し,算数に関する学習支援を行いながら,教職を目指す大学生の学習支援の力量育成に取組んでいる。この学習支援は,市川(1993)が提唱する認知カウンセリングの手法に基づき行っている。そして,当面のつまずきの解消を図るとともに,それぞれの小学生にあった学習方法を身につけさせることも視野に入れた学習支援を行っている。このような学習支援プログラムへの参加による効果は,平成20年度から毎期検討しているが,本研究では,平成26年度における学習支援プログラムが大学生に及ぼす効果について検討した。
方法
調査方法・時期 平成26年度に子どもたちを学習支援した大学生を対象に,質問紙調査を行った。分析対象者は,実際に学習支援を行った大学生24名(以下,担当群;男性8名,女性16名;平均年齢19.25歳,SD=.79)と,それを観察した大学生38名(以下,観察群;男性11名,女性27名;平均年齢20.00歳,SD=1.39)であった。
調査内容 大学生の力量および教育・教職に対する態度に関する28項目について,「非常にそう思う(4点)」から「全くそう思わない(1点)」の4段階で評定させた。
結果および考察
小島・岡・児玉・深田(2010)の因子分析結果で,各因子を構成していた項目に該当する項目群をそれぞれの因子とみなした。具体的には,指導技術6項目,保護者との関係2項目,子どもとの関係1項目,アセスメント2項目,教育に対する態度2項目,教職志望度1項目であった。全因子の事前と事後の得点は2.50以上(1.00-4.00の間)と高かった。
調査時期(事前,事後)と群(担当群,観察群)を独立変数とし,力量および教育・教職に対する態度を従属変数とした2要因分散分析を行ったが,時期と群との有意な交互作用は確認されなかった。時期の有意な主効果が「指導技術(F(1,60)=14.10, p<.001)」「アセスメント(F(1,60)=14.80, p<.001)」「教育への態度(F(1,60)=6.87, p<.05)」にみられ,事前得点に比べて,事後得点のほうが有意に高かった。実際に学習支援することを通しても,それを観察することを通しても,大学生は指導技術やアセスメントに関する力量を形成すること,教育への態度が高まることが確認された。また,群の有意な主効果が「子どもとの関係(F(1,60)=6.32, p<.05)にみられた。担当群の得点は,観察群の得点より高かった。子どもとの関係は,実際に子どもと関わることで形成されることがうかがわれる。
因子分析の結果では力量の因子に含まれなかった項目について同様の分散分析をおこなったところ,「算数に関連する情報を自主的に集めて勉強している」,「心理学に関連する情報を自主的に集めて勉強している」,「認知カウンセリングに関連する情報を自主的に集めて勉強している」において,時期の主効果が有意であり,事後の得点が高くなっていた(それぞれ,F(1,60)=5.91, p<.05; F(1,60)=4.67, p<.05; F(1,60)=4.97, p<.05)。この結果は,学習支援を実際に担当しても観察しても,このような経験を通して自ら学ぶ姿勢が身につくことを示唆している。つまり,アクティブ・ラーニングの観点からもこの取組の有効性を示すものである。
また,プログラム実施後に測定したプログラム自体への満足度は,担当群(M=3.68, SD=.46),観察群(M=3.47, SD=.48)であり,両群とも非常に高いことが明らかとなった。この高い満足度は,これまでの調査においても常に,現れており,この取組の意義を示すものといえよう。
方法
調査方法・時期 平成26年度に子どもたちを学習支援した大学生を対象に,質問紙調査を行った。分析対象者は,実際に学習支援を行った大学生24名(以下,担当群;男性8名,女性16名;平均年齢19.25歳,SD=.79)と,それを観察した大学生38名(以下,観察群;男性11名,女性27名;平均年齢20.00歳,SD=1.39)であった。
調査内容 大学生の力量および教育・教職に対する態度に関する28項目について,「非常にそう思う(4点)」から「全くそう思わない(1点)」の4段階で評定させた。
結果および考察
小島・岡・児玉・深田(2010)の因子分析結果で,各因子を構成していた項目に該当する項目群をそれぞれの因子とみなした。具体的には,指導技術6項目,保護者との関係2項目,子どもとの関係1項目,アセスメント2項目,教育に対する態度2項目,教職志望度1項目であった。全因子の事前と事後の得点は2.50以上(1.00-4.00の間)と高かった。
調査時期(事前,事後)と群(担当群,観察群)を独立変数とし,力量および教育・教職に対する態度を従属変数とした2要因分散分析を行ったが,時期と群との有意な交互作用は確認されなかった。時期の有意な主効果が「指導技術(F(1,60)=14.10, p<.001)」「アセスメント(F(1,60)=14.80, p<.001)」「教育への態度(F(1,60)=6.87, p<.05)」にみられ,事前得点に比べて,事後得点のほうが有意に高かった。実際に学習支援することを通しても,それを観察することを通しても,大学生は指導技術やアセスメントに関する力量を形成すること,教育への態度が高まることが確認された。また,群の有意な主効果が「子どもとの関係(F(1,60)=6.32, p<.05)にみられた。担当群の得点は,観察群の得点より高かった。子どもとの関係は,実際に子どもと関わることで形成されることがうかがわれる。
因子分析の結果では力量の因子に含まれなかった項目について同様の分散分析をおこなったところ,「算数に関連する情報を自主的に集めて勉強している」,「心理学に関連する情報を自主的に集めて勉強している」,「認知カウンセリングに関連する情報を自主的に集めて勉強している」において,時期の主効果が有意であり,事後の得点が高くなっていた(それぞれ,F(1,60)=5.91, p<.05; F(1,60)=4.67, p<.05; F(1,60)=4.97, p<.05)。この結果は,学習支援を実際に担当しても観察しても,このような経験を通して自ら学ぶ姿勢が身につくことを示唆している。つまり,アクティブ・ラーニングの観点からもこの取組の有効性を示すものである。
また,プログラム実施後に測定したプログラム自体への満足度は,担当群(M=3.68, SD=.46),観察群(M=3.47, SD=.48)であり,両群とも非常に高いことが明らかとなった。この高い満足度は,これまでの調査においても常に,現れており,この取組の意義を示すものといえよう。