The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE005] 小学校教師が求める援助(1)

援助ニーズの測定と援助者への役割期待について

佐藤広崇1, 金子智栄子2 (1.聖セシリア女子短期大学, 2.文京学院大学)

Keywords:小学校教師, 援助ニーズ, 援助者への役割期待

問題と目的
これまで,スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW),特別支援教育コーディネーター(Co)への教師のニーズや期待する役割に関する研究は数多く行われてきた(例えばSCについては,伊藤・中村,1998;中島ら,1997など多数)。しかし,こうした研究の多くは,SCやSSW,Coそれぞれの援助者が果たすべき役割をはじめに想定したうえで,それらについて,教師の認識を検討したものがほとんどであり,厳密な意味で教師がそもそもどういった援助ニーズをもっているのかを検討しているとは言い難い。そこで,援助者を特定せず,教師が主観的にどのような援助を求めているのかについて詳細に検討する必要があると考えた。本研究では,小学校教師がどういった援助ニーズをもっているかについて明らかにするために,その援助必要度を測定する尺度を構成する。その上で,改めて,それらのニーズに対する3援助者(SC,SSW,Co)への役割期待を比較して検討していく。
方法
調査時期:2010年7月。
調査対象:首都圏の3県および,東日本の1県の公立小学校教師210名に質問紙を配布し,122名から回答が得られた(回収率58.1%)。年齢の平均は43.5歳(SD=9.03),勤続年数の平均は19.4年(SD=9.58)。
調査内容:
1)援助必要度:Meares(1994)をもとに,①家庭‐学校間の連絡調整(7項目),②教育カウンセリング・アセスメント(5項目),③社会資源の活用支援(5項目),④啓発的な活動(5項目),⑤特別な配慮を要する児童生徒への支援(5項目)の5つのカテゴリーを想定し,中島ら(1997)や,石隈(1999),Agresta(2004)を参考に項目を構成した(4.とても必要としている~1.必要でない)。
2)SC,SSW,Coへの役割期待:“援助必要度”において作成した27項目を用い,それぞれの項目の援助活動は3者のうち誰が担うべきであるかを問うた。役割期待ありを2点,なしを1点として得点化を行った。
結果と考察
援助必要度を測定する27項目について,探索的因子分析(最尤法, promax回転)を行い,固有値の減衰状況および解釈可能性から4因子を抽出した。第一因子からの因子負荷量の高い項目は「保護者に対して専門機関を紹介すること」などで,“児童・保護者支援”と命名した。第二因子については「教員が児童の理解を深め,よりよい接し方を身につけるための指導をすること」などで,“子ども理解を深めるための支援”と命名した。第三因子は「担任と児童の関係がこじれた場合,両者の仲介役となって双方の関係が良好となるようにすること」,などで“関係調整”と命名した。第四因子は「障害など,特別な支援を要する子どもをもつ保護者の代弁者的役割を担うこと」などで“特別な配慮を要する児童への支援”と命名した。因子負荷量が1つの因子について.48以上であり,かつ複数の因子に.48以上の負荷を示さない項目を選出したところ,第一因子は7項目,第二因子は7項目,第三因子は2項目,第四因子は3項目となった。次に,これら4因子構造が妥当であるか検討するため,検証的因子分析を行った。説明率の低い項目を削除した後,適合度はχ2 =66.77,df =63,p=.35,GFI =.923,AGFI=.872,CFI=.992,RMSEA=.024とある程度の値を示した。最終的に残った14項目に対して,再度,因子分析(最尤法, promax回転)を行ったところ,項目と因子の対応は一致していた。クロンバックのα係数は“児童・保護者支援”において.77,“特別な配慮を要する児童への支援”は.78,“子ども理解を深めるための支援”は.74,“関係調整”は.72であり,内的整合性はある程度高いといえた。各下位尺度の合計得点を項目数で除したものを下位尺度得点とし,一元配置分散分析により比較を行った。その結果,“子ども理解を深めるための支援”及び“関係調整”が最も必要度が高く,次いで“児童保護者支援”が,そして他の下位尺度と比べて“特別支援”が一番低い結果となった(Table1)。
援助者に対して子ども理解や関係調整の支援を最も必要としていることが示された。
また,4下位尺度に対する援助者への役割期待について検討を行うため,下位尺度ごとにSC,SSW,Coの役割期待得点を比較した。その結果,“児童保護者支援”は,SC(M=1.66,SD=.27),SSW(M=1.50,SD=.31),Co(M=1.33,SD=.29)の順に役割期待が有意に高かった(p<.001)。“特別支援”は,SC(M=1.52,SD=.30)およびCo(1.49,SD=.30)がSSW(M=1.27,SD=.32)より役割期待が高く(p<.001),“子ども理解”については,SC(M=1.56,SD=.30)がSSW(M=1.43,SD=.29)およびCo(M=1.45,SD=.34)より得点が高かった(p<.01)。“関係調整”については有意な差が認められなかった。

このように,下位尺度ごとに役割期待が異なることは,援助のニーズが生じた時に,教師がどの援助者に援助を求めるかを決定する大きな要因となると考える。今後は,援助欲求などとの関連を踏まえて検討する。