[PE008] クラスで取り組む文化祭活動を通して高校生が得たものに関する検討
キーワード:高校生, 文化祭活動, 自己変容
問題と目的
文化祭や体育祭,修学旅行などの行事では,教科の授業や上下関係が生じる部活動とは異なり,非日常的な活動の中で自分が思っていることを話したり,ありのままの自分を出すことができる。その中でも,文化祭では,仲間と共に,ゼロから新しいものを創り上げていくことができる。
文化祭活動には,演劇や体験,飲食・販売,展示,映画制作など,様々な活動がある。それらの活動では,生徒同士の意見の対立やトラブル・葛藤などの問題がでてくるが,それらの壁を乗り越えることで,相互理解を深めることができる(井上,2001;樽木・蘭・石隈,2008;和井田,2001)。菅沼(2013)は,文化祭活動の活動内容に関係なく,どの活動でも,多くの生徒がクラスメイトとの友情を育んでいることを示した。また,展示以外の活動(演劇や体験,飲食・販売,映画制作)では,これまでにできなかったことが,文化祭活動を通してできるようになったことで,自分に自信をもつようになったことが見出された。
これらの記述から,生徒は,クラスの文化祭活動を通して,友情や自信を得ることができると思われる。ところが,現時点では,生徒は,クラスの文化祭活動を通して得られたものについて記した研究は限られている。
そこで本研究では,生徒は,クラスの文化祭活動を通してどのようなものを得られたのかについて,検討していく。なお本研究では,前年度までに高校生活における文化祭活動に取り組んだ経験のない高校1年生を,調査の対象としている。
方法
調査対象者 3つの高校(共学)に在籍している高校1年生381人(男子175人,女子206人)が,調査に協力した。381人の回答者のうち,演劇(ロミオとジュリエットやシンデレラなど)は153人,体験(お化け屋敷や宝探しなど)は106人,飲食・販売(たこ焼き屋やお茶漬け屋など)は62人,展示(短歌の展示)は16人,映画制作・映画
上映は44人であった。
調査時期
2012年9月10日~10月3日(各高校の文化祭後)
質問紙 「クラスの文化祭活動を通して得られたものはあるか」と「もし得られたものがあるならば,どのようなものを得られたと思うか」について,自由記述で尋ねた。
結果と考察
クラスの文化祭活動を通して得られたものがあるかどうかを検討するため,活動内容ごとに分けて,KJ法の分析を行なった。その結果,「友情」や「つながり」,「個性把握」に関する記述は,どの活動でも見られた(Table1)。このように,どの活動内容でも,約9割以上の生徒が,文化祭活動を通してポジティブなものを得たと捉えていることが読み取れる。一方で,「自己変容」や「マイナス的な要素」に関する記述が見られたかどうかは,活動内容によって異なることが示された。
これらの結果から,多くの生徒が,文化祭活動を通して仲間の個性を知ったり,これまであまり関わらなかった人と話すようになったことが窺える。活動内容による「自己変容」の有無の違いについては,ロミオ役やお化け役など,その役になりきって,その世界で起こることを疑似体験することが関係していると思われる。「マイナス的な要素」に関する記述は,展示以外の活動で見られた。その理由として,多くの人と関わり合いながら作業を積み重ねていく活動では,生徒は仲間との議論の中で自己主張をしたり,相手の意見に自分を合わせることで,人間関係によるストレスを抱えてしまうことが挙げられる。
文化祭や体育祭,修学旅行などの行事では,教科の授業や上下関係が生じる部活動とは異なり,非日常的な活動の中で自分が思っていることを話したり,ありのままの自分を出すことができる。その中でも,文化祭では,仲間と共に,ゼロから新しいものを創り上げていくことができる。
文化祭活動には,演劇や体験,飲食・販売,展示,映画制作など,様々な活動がある。それらの活動では,生徒同士の意見の対立やトラブル・葛藤などの問題がでてくるが,それらの壁を乗り越えることで,相互理解を深めることができる(井上,2001;樽木・蘭・石隈,2008;和井田,2001)。菅沼(2013)は,文化祭活動の活動内容に関係なく,どの活動でも,多くの生徒がクラスメイトとの友情を育んでいることを示した。また,展示以外の活動(演劇や体験,飲食・販売,映画制作)では,これまでにできなかったことが,文化祭活動を通してできるようになったことで,自分に自信をもつようになったことが見出された。
これらの記述から,生徒は,クラスの文化祭活動を通して,友情や自信を得ることができると思われる。ところが,現時点では,生徒は,クラスの文化祭活動を通して得られたものについて記した研究は限られている。
そこで本研究では,生徒は,クラスの文化祭活動を通してどのようなものを得られたのかについて,検討していく。なお本研究では,前年度までに高校生活における文化祭活動に取り組んだ経験のない高校1年生を,調査の対象としている。
方法
調査対象者 3つの高校(共学)に在籍している高校1年生381人(男子175人,女子206人)が,調査に協力した。381人の回答者のうち,演劇(ロミオとジュリエットやシンデレラなど)は153人,体験(お化け屋敷や宝探しなど)は106人,飲食・販売(たこ焼き屋やお茶漬け屋など)は62人,展示(短歌の展示)は16人,映画制作・映画
上映は44人であった。
調査時期
2012年9月10日~10月3日(各高校の文化祭後)
質問紙 「クラスの文化祭活動を通して得られたものはあるか」と「もし得られたものがあるならば,どのようなものを得られたと思うか」について,自由記述で尋ねた。
結果と考察
クラスの文化祭活動を通して得られたものがあるかどうかを検討するため,活動内容ごとに分けて,KJ法の分析を行なった。その結果,「友情」や「つながり」,「個性把握」に関する記述は,どの活動でも見られた(Table1)。このように,どの活動内容でも,約9割以上の生徒が,文化祭活動を通してポジティブなものを得たと捉えていることが読み取れる。一方で,「自己変容」や「マイナス的な要素」に関する記述が見られたかどうかは,活動内容によって異なることが示された。
これらの結果から,多くの生徒が,文化祭活動を通して仲間の個性を知ったり,これまであまり関わらなかった人と話すようになったことが窺える。活動内容による「自己変容」の有無の違いについては,ロミオ役やお化け役など,その役になりきって,その世界で起こることを疑似体験することが関係していると思われる。「マイナス的な要素」に関する記述は,展示以外の活動で見られた。その理由として,多くの人と関わり合いながら作業を積み重ねていく活動では,生徒は仲間との議論の中で自己主張をしたり,相手の意見に自分を合わせることで,人間関係によるストレスを抱えてしまうことが挙げられる。