[PE009] 小学5年生の話し合い活動における機会利用型SSTの試み
キーワード:機会利用型, SST, 話し合い活動
問題と目的
適切な行動が生起するために環境設定を行い,適切な自発行動を待ち,自発行動が起これば指導の機会として利用する機会利用型指導法は般化と維持に優れた効果が示され,社会的スキル訓練(以下,SSTとする)にも適用されてきた。
本研究では,算数の問題解決型授業で展開される話し合い活動の場面において機会利用型SSTを実施し,目標スキルおよび自己効力感が向上するか,社会的スキルへの般化が認められるか,仲間からの承認感が肯定的に変化するか,を検討する。
方 法
目標スキル 前話者の話を引き継いで話す(以下,「引き継ぐ」とする),積極的な聞き方,あたたかい言葉かけ。
対象 5年生児童,介入群15名,教示群15名。
介入時期 X年10月15日から24日,全6回。
手続き 介入開始の1週間前に学級を対象(両群)に目標スキルを教示し,動機づけを高め,構成要素と話型のポスターを掲示し,倫理的配慮の説明後,事前テストを実施した。その後,算数の分割授業を利用して,介入群へは通常の授業を行いながら機会利用型SSTを実施した。具体的な手続きは,話し合い活動が開始されると,担任は児童の様子を観察し,目標スキルの構成要素のうちの一部でも生起すると,すぐに当該児童に対して社会的強化を行い,授業展開を乱さないタイミングで,全体への機会利用型SSTを行った。全体へのSSTは,目標スキルが生起した場面を提示し,適切な目標行動を再現させ,学級全体で学習し(モデリング),行為者および被行為者の気持ちを確認し,目標スキルの使用を奨励する,である。
測定尺度 目標スキル(自己/他者評価・自己効力感)4件法,「積極的な聞き方」の構成要素および話を聞いた直後の行動の増減5件法,児童用社会的スキル尺度(嶋田・戸ヶ崎・岡安・坂野,1996)15項目4件法,グループ内承認感6項目4件法。
結果と考察
目標スキルの検討 群×時期の2要因分散分析の結果,自己評価に関して,「積極的な聞き方」における群の主効果と交互作用が有意であり,介入群は事前より授業2以降に増加し,教示群より授業2と授業5において高かった。「あたたかい言葉かけ」の交互作用が有意傾向であり,介入群は教示群より高い傾向であった。他者評価に関して,「引き継ぐ」の交互作用が有意であり,介入群は介入の後半に増加し,教示群は授業4と授業6に減少した。「相槌」における群と時期の主効果および交互作用が有意であり,介入群は介入後半に増加し,教示群は介入後半に減少した。「あたたかい言葉かけ」における群の主効果が有意であり,教示群より介入群が高かった。自己効力感得点に関して,「あたたかい言葉かけ」における群の主効果が有意であり,介入群は教示群より高かった。
聞き方に関する検討 t検定の結果,「相手を見て」「相槌」の構成要素に関して,介入群は増加したと評価し,話を聞いた直後の行動に関して,介入群は教示群より「笑顔」「拍手」が増加し,「無関係発言」が減少した。
社会的スキルの検討 群×時期の2要因分散分析の結果,向社会的行動における時期の主効果と交互作用が有意であり,介入群は増加した。
グループ内承認感の検討 群×時期の2要因分散分析の結果,交互作用が有意であり,介入群は増加し,介入後に教示群より高くなった。
したがって,介入群は目標スキルが向上し,社会的スキルへの般化,および仲間への承認感の肯定的変化が明らかとなり,スキルの維持と般化には,教示だけでなく,日常における機会を利用しての働きかけが重要である可能性が示唆された。
適切な行動が生起するために環境設定を行い,適切な自発行動を待ち,自発行動が起これば指導の機会として利用する機会利用型指導法は般化と維持に優れた効果が示され,社会的スキル訓練(以下,SSTとする)にも適用されてきた。
本研究では,算数の問題解決型授業で展開される話し合い活動の場面において機会利用型SSTを実施し,目標スキルおよび自己効力感が向上するか,社会的スキルへの般化が認められるか,仲間からの承認感が肯定的に変化するか,を検討する。
方 法
目標スキル 前話者の話を引き継いで話す(以下,「引き継ぐ」とする),積極的な聞き方,あたたかい言葉かけ。
対象 5年生児童,介入群15名,教示群15名。
介入時期 X年10月15日から24日,全6回。
手続き 介入開始の1週間前に学級を対象(両群)に目標スキルを教示し,動機づけを高め,構成要素と話型のポスターを掲示し,倫理的配慮の説明後,事前テストを実施した。その後,算数の分割授業を利用して,介入群へは通常の授業を行いながら機会利用型SSTを実施した。具体的な手続きは,話し合い活動が開始されると,担任は児童の様子を観察し,目標スキルの構成要素のうちの一部でも生起すると,すぐに当該児童に対して社会的強化を行い,授業展開を乱さないタイミングで,全体への機会利用型SSTを行った。全体へのSSTは,目標スキルが生起した場面を提示し,適切な目標行動を再現させ,学級全体で学習し(モデリング),行為者および被行為者の気持ちを確認し,目標スキルの使用を奨励する,である。
測定尺度 目標スキル(自己/他者評価・自己効力感)4件法,「積極的な聞き方」の構成要素および話を聞いた直後の行動の増減5件法,児童用社会的スキル尺度(嶋田・戸ヶ崎・岡安・坂野,1996)15項目4件法,グループ内承認感6項目4件法。
結果と考察
目標スキルの検討 群×時期の2要因分散分析の結果,自己評価に関して,「積極的な聞き方」における群の主効果と交互作用が有意であり,介入群は事前より授業2以降に増加し,教示群より授業2と授業5において高かった。「あたたかい言葉かけ」の交互作用が有意傾向であり,介入群は教示群より高い傾向であった。他者評価に関して,「引き継ぐ」の交互作用が有意であり,介入群は介入の後半に増加し,教示群は授業4と授業6に減少した。「相槌」における群と時期の主効果および交互作用が有意であり,介入群は介入後半に増加し,教示群は介入後半に減少した。「あたたかい言葉かけ」における群の主効果が有意であり,教示群より介入群が高かった。自己効力感得点に関して,「あたたかい言葉かけ」における群の主効果が有意であり,介入群は教示群より高かった。
聞き方に関する検討 t検定の結果,「相手を見て」「相槌」の構成要素に関して,介入群は増加したと評価し,話を聞いた直後の行動に関して,介入群は教示群より「笑顔」「拍手」が増加し,「無関係発言」が減少した。
社会的スキルの検討 群×時期の2要因分散分析の結果,向社会的行動における時期の主効果と交互作用が有意であり,介入群は増加した。
グループ内承認感の検討 群×時期の2要因分散分析の結果,交互作用が有意であり,介入群は増加し,介入後に教示群より高くなった。
したがって,介入群は目標スキルが向上し,社会的スキルへの般化,および仲間への承認感の肯定的変化が明らかとなり,スキルの維持と般化には,教示だけでなく,日常における機会を利用しての働きかけが重要である可能性が示唆された。