[PE012] 小学生のQOL
子ども本人と親の認識の差異に関する検討
Keywords:QOL, 小学生, 親と子の認識
Ⅰ.問題と目的
QOLとは,世界保健機構(WHO)によれば「個人が生活する文化や価値観の中で,生きることの目標や期待,基準,関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」であると定義されている。QOL評価には,ある特定の疾患が対象者に与える影響を調べるための「疾病特異尺度」と健康な人を対象とした「包括的尺度」とがある。もともとは,特定の疾患の対象者に対して行われることが多かったQOL評価であるが,近年では定型発達の子どもの尺度としても使われるようになってきている。Ravensら(1998b)によって開発されたQOLの国際的尺度であるKid-KINDLRの日本語版の開発にあたった根本ら(2005)によれば,「小学生版QOL尺度」による子ども本人と親の両方の評価を実施することにより,学校における子どもの精神面への支援に役立つと述べている。
そこで,本研究では,小学校の2年生と5年生における,子ども本人と親記入によるQOL評価の差異を比較検討することによって,子どもの精神面への発達支援の手がかりを得ることを目的とした。
Ⅱ.方法
東京都の国立大学法人附属小学校の小学2年生と5年生を対象に,保護者記入と子ども本人記入のQOL質問紙調査を行った。調査は,研究倫理に則って行い,保護者の同意を得た小学2年生100名(男児48名,女児52名)と小学5年生117名(男児61名,女児56名)を調査対象とした。親記入は,自宅で記入してもらい学校で回収,子ども記入は,調査者が各学級で質問項目を読みあげてその場で記入してもらった。なお現在治療中の疾患のある子どもについては,解析から除外した。
「小学生版QOL尺度」は,「身体的健康」「情緒的健康」「自尊感情」「家族関係」「友人関係」「学校生活」の6つの下位項目があり,項目ごとに4つの質問がある。回答は「ぜんぜんない」(0点)から「いつも」(4点)までの5段階で評価し,逆転項目を考慮して合計点を出す。
Ⅲ.結果
1.親のQOLと子どものQOLの相関
親子のQOLの相関を学年別男女別に求めたところ,Table 1のような相関が認められた。5年生男児は,自尊感情や友人関係,学校生活,トータルなどで相関が認められ,学校生活に関する認識が,親子である程度一致していると考えられる。2年生男児と5年生女児は,身体的健康,自尊感情,家族関係,トータルに相関が認められ,心身の変化に関する親子の認識が一致していることを示している。2年生女児は相関がほとんど見られなかったが,身体的健康に関してのみ相関が認められた。
2.親のQOLと子どものQOLの差
子どものQOLをもとに,低評価群(55点以下,24名,約12%)と対照群に分けて,親のQOLから子どものQOLを引いた得点差をグラフに示した(Figure 1)。解析の結果,すべての項目において,低評価群の方が対照群よりも,親と子のQOLの差が有意に大きかった。
Ⅳ.考察
親子のQOLは,学年や性別で相関する項目に違いがあること,低評価群の子どものQOLは,親子の認識に差があることが明らかになり,子どものQOLは,親だけでなく,子ども本人の調査も行い,比較検討することが有効であることが示唆された。
QOLとは,世界保健機構(WHO)によれば「個人が生活する文化や価値観の中で,生きることの目標や期待,基準,関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」であると定義されている。QOL評価には,ある特定の疾患が対象者に与える影響を調べるための「疾病特異尺度」と健康な人を対象とした「包括的尺度」とがある。もともとは,特定の疾患の対象者に対して行われることが多かったQOL評価であるが,近年では定型発達の子どもの尺度としても使われるようになってきている。Ravensら(1998b)によって開発されたQOLの国際的尺度であるKid-KINDLRの日本語版の開発にあたった根本ら(2005)によれば,「小学生版QOL尺度」による子ども本人と親の両方の評価を実施することにより,学校における子どもの精神面への支援に役立つと述べている。
そこで,本研究では,小学校の2年生と5年生における,子ども本人と親記入によるQOL評価の差異を比較検討することによって,子どもの精神面への発達支援の手がかりを得ることを目的とした。
Ⅱ.方法
東京都の国立大学法人附属小学校の小学2年生と5年生を対象に,保護者記入と子ども本人記入のQOL質問紙調査を行った。調査は,研究倫理に則って行い,保護者の同意を得た小学2年生100名(男児48名,女児52名)と小学5年生117名(男児61名,女児56名)を調査対象とした。親記入は,自宅で記入してもらい学校で回収,子ども記入は,調査者が各学級で質問項目を読みあげてその場で記入してもらった。なお現在治療中の疾患のある子どもについては,解析から除外した。
「小学生版QOL尺度」は,「身体的健康」「情緒的健康」「自尊感情」「家族関係」「友人関係」「学校生活」の6つの下位項目があり,項目ごとに4つの質問がある。回答は「ぜんぜんない」(0点)から「いつも」(4点)までの5段階で評価し,逆転項目を考慮して合計点を出す。
Ⅲ.結果
1.親のQOLと子どものQOLの相関
親子のQOLの相関を学年別男女別に求めたところ,Table 1のような相関が認められた。5年生男児は,自尊感情や友人関係,学校生活,トータルなどで相関が認められ,学校生活に関する認識が,親子である程度一致していると考えられる。2年生男児と5年生女児は,身体的健康,自尊感情,家族関係,トータルに相関が認められ,心身の変化に関する親子の認識が一致していることを示している。2年生女児は相関がほとんど見られなかったが,身体的健康に関してのみ相関が認められた。
2.親のQOLと子どものQOLの差
子どものQOLをもとに,低評価群(55点以下,24名,約12%)と対照群に分けて,親のQOLから子どものQOLを引いた得点差をグラフに示した(Figure 1)。解析の結果,すべての項目において,低評価群の方が対照群よりも,親と子のQOLの差が有意に大きかった。
Ⅳ.考察
親子のQOLは,学年や性別で相関する項目に違いがあること,低評価群の子どものQOLは,親子の認識に差があることが明らかになり,子どものQOLは,親だけでなく,子ども本人の調査も行い,比較検討することが有効であることが示唆された。