[PE023] 小学校図工科における協同が促す造形活動
「造形遊び」における他者との交流に着目して
キーワード:協同, 造形活動, 談話分析
<問題と目的>
本研究の目的は,他者との交流が児童の造形活動に与える影響を検討することである。
協同による学習の目的の一つは,「理解を深め,自ら学ぶ」ことである。しかし,降旗(2011)は,小学校教師を対象にしたアンケートを行い,図画工作科の指導に対する課題の多くは,技術指導や個々の学習者への支援方法であり協同への視点が欠如していることを指摘した。
1977年に図画工作科の指導内容に「造形遊び」が位置づけられている。そこで期待される児童の姿は,児童が自ら表現したいことを見つけ,満足して活動を行うことである。素材の質感を楽しんだり,他者の活動を見て学ぶことが挙げられる。図画工作科における「造形遊び」には協同の視点が内在しているといえるが,理論的・実践的検討は十分になされていない。
そこで,本研究は,造形活動と協同の双方を取り入れた授業事例における,児童の学習過程の記述から,協同が造形活動に与える影響を検討することを目的とする。
<方 法>
対象:公立小学校2年図工科授業(2013年9月)「造形遊び」における協同を意図的に取り入れた第2著者による実践。ビデオカメラを用いて得られた映像・音声から,対象児Yの発話内容を文字化し,分析の対象とした。
授業概要:自然物と人工物という異素材を用いて,Tシャツに型押しをし,デザインする。3,4限と昼休み,5限を使用した授業。3,4人の班を形成し,話し合いや相互鑑賞がし易い環境を設定している。
手続き:授業の活動展開を基に,3つの場面にわけ,Yくんの様相の変化を検討した。対象児Yくの他者とのコミュニケーションの様相を明らかにするために,発話相手と発話内容について,カテゴリーを生成し,変化を検討した(研究1)。各発話における評定については,第2著者と教育学研究科大学院生1名の計2名で行った。カッパ係数を求めたところ,高い一致度が確認された。(k=.80,k-.80)不一致だったものは協議の上で決定した。3場面による発話の変化は,カイ二乗検定により独立性を検討し,残差分析を用いて発言頻度の偏りを同定した。次に,研究1に加えて,活動の内容と過程を明らかにするために,対象児Yくんの様相を質的に記述した。(研究2)
<結 果>
[研究1]対象児のコミュニケーションの様相と変化
Yくんは活動が進んでいくにつれ,Nくんに対する発言回数が減っており,Nくんに対する依存が薄れていっているということがわかった。また,場面Ⅲで,Nくん以外の児童と関わりを持ち始めていたことも明らかになった。Yくんは活動が進んでいくにつれ,Nくんに対する発言回数が減っており,Nくんに対する依存が薄れていっているということがわかった。また,場面Ⅲで,Nくん以外の児童と関わりを持ち始めていたことも明らかになった。
[研究2]対象児Yくんの造形活動
研究1の成果を対照しながら,Yくんの造形活動の進捗に焦点を当て,活動の様相を記述した。
場面1:対象児Yくんは,当初Nくんを特別な存在とみなし,同調的で依存的行動が多く見られた。
場面2:Nくんの言動に従うことで学習課題や活動に安心を得る一方で,自らの意思で表現ができない不満を持ちながら行動する様子が捉えられた。
場面3:Nくん以外の児童と書くぁることで,Nくんへの特別な依存が見られなくなる。コミュニケーションの相手が広がることで,自らの造形活動が進み始める様子が見られた。
(※発表当日,具体的な発話内容を示す)
<考 察>
以上の結果から,Yくんの他者とのコミュニケーションは常に充実しているように見えていたが,その質には違いがあることが示唆される。その質的変化が,造形活動の進捗に影響を与えていることが明らかになった。また,相互作用が活動を充実させ,児童の活動過程を詳細に記録する重要性が示唆された。
今後の課題として,本研究は,実際に行った授業を事例とした実証的研究ではあるが,限られた事例による考察に留まっているため,多様な造形活動のプロセスを検討していく必要がある。また,協同と造形活動の双方を支援する方法についての検討が必要である。
本研究の目的は,他者との交流が児童の造形活動に与える影響を検討することである。
協同による学習の目的の一つは,「理解を深め,自ら学ぶ」ことである。しかし,降旗(2011)は,小学校教師を対象にしたアンケートを行い,図画工作科の指導に対する課題の多くは,技術指導や個々の学習者への支援方法であり協同への視点が欠如していることを指摘した。
1977年に図画工作科の指導内容に「造形遊び」が位置づけられている。そこで期待される児童の姿は,児童が自ら表現したいことを見つけ,満足して活動を行うことである。素材の質感を楽しんだり,他者の活動を見て学ぶことが挙げられる。図画工作科における「造形遊び」には協同の視点が内在しているといえるが,理論的・実践的検討は十分になされていない。
そこで,本研究は,造形活動と協同の双方を取り入れた授業事例における,児童の学習過程の記述から,協同が造形活動に与える影響を検討することを目的とする。
<方 法>
対象:公立小学校2年図工科授業(2013年9月)「造形遊び」における協同を意図的に取り入れた第2著者による実践。ビデオカメラを用いて得られた映像・音声から,対象児Yの発話内容を文字化し,分析の対象とした。
授業概要:自然物と人工物という異素材を用いて,Tシャツに型押しをし,デザインする。3,4限と昼休み,5限を使用した授業。3,4人の班を形成し,話し合いや相互鑑賞がし易い環境を設定している。
手続き:授業の活動展開を基に,3つの場面にわけ,Yくんの様相の変化を検討した。対象児Yくの他者とのコミュニケーションの様相を明らかにするために,発話相手と発話内容について,カテゴリーを生成し,変化を検討した(研究1)。各発話における評定については,第2著者と教育学研究科大学院生1名の計2名で行った。カッパ係数を求めたところ,高い一致度が確認された。(k=.80,k-.80)不一致だったものは協議の上で決定した。3場面による発話の変化は,カイ二乗検定により独立性を検討し,残差分析を用いて発言頻度の偏りを同定した。次に,研究1に加えて,活動の内容と過程を明らかにするために,対象児Yくんの様相を質的に記述した。(研究2)
<結 果>
[研究1]対象児のコミュニケーションの様相と変化
Yくんは活動が進んでいくにつれ,Nくんに対する発言回数が減っており,Nくんに対する依存が薄れていっているということがわかった。また,場面Ⅲで,Nくん以外の児童と関わりを持ち始めていたことも明らかになった。Yくんは活動が進んでいくにつれ,Nくんに対する発言回数が減っており,Nくんに対する依存が薄れていっているということがわかった。また,場面Ⅲで,Nくん以外の児童と関わりを持ち始めていたことも明らかになった。
[研究2]対象児Yくんの造形活動
研究1の成果を対照しながら,Yくんの造形活動の進捗に焦点を当て,活動の様相を記述した。
場面1:対象児Yくんは,当初Nくんを特別な存在とみなし,同調的で依存的行動が多く見られた。
場面2:Nくんの言動に従うことで学習課題や活動に安心を得る一方で,自らの意思で表現ができない不満を持ちながら行動する様子が捉えられた。
場面3:Nくん以外の児童と書くぁることで,Nくんへの特別な依存が見られなくなる。コミュニケーションの相手が広がることで,自らの造形活動が進み始める様子が見られた。
(※発表当日,具体的な発話内容を示す)
<考 察>
以上の結果から,Yくんの他者とのコミュニケーションは常に充実しているように見えていたが,その質には違いがあることが示唆される。その質的変化が,造形活動の進捗に影響を与えていることが明らかになった。また,相互作用が活動を充実させ,児童の活動過程を詳細に記録する重要性が示唆された。
今後の課題として,本研究は,実際に行った授業を事例とした実証的研究ではあるが,限られた事例による考察に留まっているため,多様な造形活動のプロセスを検討していく必要がある。また,協同と造形活動の双方を支援する方法についての検討が必要である。