The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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Cancelled

ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE032] 小学校就学を控えた幼稚園年長児保護者の意識

保護者がとらえる段差とは

滝口圭子 (金沢大学)

Keywords:幼小接続, 学びの連続性, 保護者

幼児教育(保育所や幼稚園等での幼児を対象とした教育)と小学校教育の接続については,両者間の段差の解消が目指される一方で,段差の持つ意義を的確にとらえることの必要性も主張されてきた。本研究の目的は,幼小の段差を多面的にとらえるための基礎的資料を提供することである。
方法
調査対象:金沢市内公立K幼稚園及び私立A幼稚園5歳児クラス保護者計58名を対象に調査票を配布し,46名から回答を得た(回収率79%)。
調査期間:2014(平成26)年3月
結果と考察
①就学に対する年長児と保護者の意識:「全く楽しみにしていない」から「とても楽しみにしている」(5件法)の評定では,平均値はともに4.3であり,両者とも就学を前向きにとらえていた。
②就学に対する保護者の心配の有無:「ある」45%,「ない」41%,「わからない」14%であり,「わからない」の選択率が低かった(p < .05)。約5割の保護者に心配があるようだが,約4割の保護者はそうしたことはないようだ。
③就学に際して保護者が心配する内容:「心配ではない」から「とても心配である」(4件法)の評定(山田・大伴,2010)では,「子ども同士の関係」(M=2.4)と「学習(文字・数等)」(M= 2.3)の評定平均値が,「食事」(M=1.8),「集団行動」(M=1.8),「運動」(M=1.8),「大人(担任等)との関係」(M=1.9)よりも高かった(p < .01)。
④保護者が考える幼稚園と小学校との相違:「異なっていない」から「とても異なっている」(4件法)の評定(山田・大伴,2010)では,「学習」(M =3.5)の評定平均値が,「施設」(M=2.6),「友達との関わり」(M=2.7),「学年の違い」(M=2.8),「先生との関わり」(M=2.9),「遊び」(M=3.0)等よりも高かった(図1)。幼児教育と小学校教育とでは,「学習」のあり方に決定的な相違があると認識されているようだ。
⑤保護者が考える小学校不適応の背景要因:「あてはまらない」から「とてもあてはまる」(4件法)の評定(丹羽・酒井・藤江,2004)では,第1因子「家庭にある問題」(M=1.9),第2因子「子どもの生活の変化」(M=2.0),第3因子「幼保小の段差」(M=1.9),第4因子「小学校をめぐる問題」(M=1.9)について,尺度得点の因子間差は認められなかった。項目ごとでは,「遊び中心から授業中心の生活になる(第3因子)」(M = 3.0),「地域において異年齢集団で遊ぶことが少なくなっている(第2因子)」(M = 2.8),「地域住民のネットワークが希薄になっている(第4因子)」(M = 2.7),「小学生になると,自分の席に座った生活が中心になる(第3因子)」(M = 2.7)の評定平均値が高かった。幼小移行に付随する可能性のある課題の背景として,保護者は,幼小の学習形態の相違を指摘する一方で,地域の中での子どもの育ちの弱まりにも着目しており,子どもの成長を支える周囲の人的環境にも留意している点が指摘される。
Keiko TAKIGUCHI
引用文献
丹羽さがの・酒井朗・藤江康彦 2004 幼稚園,保育所,小学校教諭と保護者の意識調査:よりよい幼保小連携に向けて お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター紀要,2,39-50.
山田有希子・大伴潔 2010 保幼・小接続期における実態と支援のあり方に関する検討:保幼5歳児担任・小1年生担任・保護者の意識からとらえる 東京学芸大学紀要総合教育科学系II,61,97-108.