[PE037] 2つの達成目標尺度の妥当性の検討
仮想の授業場面による比較
キーワード:達成目標, 達成水準, AGQ-R
問題と目的
4つの達成目標のうち習得回避目標では,完全主義との明確な区別のつかないことが問題として指摘されている(Bong, 2009)。徳岡(2012)では,習得回避目標を測定する項目内容について,完全主義的な表現をなくした達成目標尺度が作成されている。完全主義と区別されるのであれば,習得回避目標を目指す人の目標達成水準は,習得接近目標よりも低くなると考えられる。徳岡(2013)では,徳岡(2012)の達成目標尺度の妥当性を検討するため,参加者間要因で4つの達成目標を強調する仮想場面法を使用して検討した。しかし,場面による目標の変動を検討するには個人内変動に着目する必要がある。本研究では,徳岡(2013)の追試を参加者内要因計画で実施し,徳岡(2012)の達成目標尺度とAchievement Goal Questionnaire-Revesed(AGQ-R: Elliot & Murayama, 2008)の妥当性を検討する
方 法
調査協力者 大学生32名(女性26名; 男性5名; 無回答1名; 平均年齢19.91歳, SD=1.42)に調査を実施した。
調査内容 達成目標:徳岡(2012)が作成した達成目標尺度12項目とAGQ-R(Elliot & Murayama, 2008)を使用した。調査協力者は,各調査用紙の仮想場面に登場する主人公にとって達成目標尺度の各項目がどのくらいあてはまると思うかについて,7段階で評定するように求められた。
仮想の授業場面の設定 達成目標を実験場面で操作した先行研究(Darnon, Dompnier, Gilliéron, & Butera, 2010)を参考に,4つの達成目標のそれぞれを強調する仮想の授業場面を設定した。
手続き 調査は授業前の時間を利用して集団で実施した。仮想の授業場面はカウンターバランスをとって実施した。
結果と考察
各達成目標場面における主人公の達成目標 仮想場面ごとに主人公の4つの達成目標別に1項目あたりの平均得点を算出した。徳岡(2012)の達成目標尺度とAGQ-Rと各達成目標の得点を従属変数,仮想場面(4場面; 習得接近目標場面,習得回避目標場面,遂行接近目標場面,遂行回避目標場面)を独立変数とする混合モデルを用いた分散分析を行った。その結果,両尺度の全ての達成目標において仮想場面の主効果が有意であった(ps<.001)。両尺度の各達成目標について,多重比較を行った。その結果,習得接近目標得点では,両尺度とも習得接近目標場面が他の3つの場面よりも有意に高かった(ps<.001)。遂行接近目標得点では,両尺度とも遂行接近目標場面が他の3つの場面よりも有意に高かった(ps<.001)。徳岡(2012)の遂行回避目標得点では,遂行回避目標場面が他の3つの場面よりも有意に高かった(ps<.001)。AGQ-Rの遂行回避目標得点では,遂行回避目標場面が習得接近目標場面と習得回避目標場面よりも有意に高かった(ps<.001)が,遂行接近目標と有意な差がみられなかった(n.s.)。AGQ-Rの習得回避目標得点では,習得接近目標場面が他の3つの場面よりも有意に高く(ps<.001),習得回避目標場面は遂行回避目標場面よりも有意に高いだけであった(p=.02)。徳岡(2012)の習得回避目標得点では,習得回避目標場面が他の3つの場面よりも有意に高かった。
これらの結果は徳岡(2013)と一致した結果であった。徳岡(2012)の達成目標尺度は,授業環境を反映する尺度でることが示唆される。
本研究の結果から,AGQ-Rの習得回避目標は,Bong(2009)の指摘するように習得接近目標のように捉えられていることを示唆する。
4つの達成目標のうち習得回避目標では,完全主義との明確な区別のつかないことが問題として指摘されている(Bong, 2009)。徳岡(2012)では,習得回避目標を測定する項目内容について,完全主義的な表現をなくした達成目標尺度が作成されている。完全主義と区別されるのであれば,習得回避目標を目指す人の目標達成水準は,習得接近目標よりも低くなると考えられる。徳岡(2013)では,徳岡(2012)の達成目標尺度の妥当性を検討するため,参加者間要因で4つの達成目標を強調する仮想場面法を使用して検討した。しかし,場面による目標の変動を検討するには個人内変動に着目する必要がある。本研究では,徳岡(2013)の追試を参加者内要因計画で実施し,徳岡(2012)の達成目標尺度とAchievement Goal Questionnaire-Revesed(AGQ-R: Elliot & Murayama, 2008)の妥当性を検討する
方 法
調査協力者 大学生32名(女性26名; 男性5名; 無回答1名; 平均年齢19.91歳, SD=1.42)に調査を実施した。
調査内容 達成目標:徳岡(2012)が作成した達成目標尺度12項目とAGQ-R(Elliot & Murayama, 2008)を使用した。調査協力者は,各調査用紙の仮想場面に登場する主人公にとって達成目標尺度の各項目がどのくらいあてはまると思うかについて,7段階で評定するように求められた。
仮想の授業場面の設定 達成目標を実験場面で操作した先行研究(Darnon, Dompnier, Gilliéron, & Butera, 2010)を参考に,4つの達成目標のそれぞれを強調する仮想の授業場面を設定した。
手続き 調査は授業前の時間を利用して集団で実施した。仮想の授業場面はカウンターバランスをとって実施した。
結果と考察
各達成目標場面における主人公の達成目標 仮想場面ごとに主人公の4つの達成目標別に1項目あたりの平均得点を算出した。徳岡(2012)の達成目標尺度とAGQ-Rと各達成目標の得点を従属変数,仮想場面(4場面; 習得接近目標場面,習得回避目標場面,遂行接近目標場面,遂行回避目標場面)を独立変数とする混合モデルを用いた分散分析を行った。その結果,両尺度の全ての達成目標において仮想場面の主効果が有意であった(ps<.001)。両尺度の各達成目標について,多重比較を行った。その結果,習得接近目標得点では,両尺度とも習得接近目標場面が他の3つの場面よりも有意に高かった(ps<.001)。遂行接近目標得点では,両尺度とも遂行接近目標場面が他の3つの場面よりも有意に高かった(ps<.001)。徳岡(2012)の遂行回避目標得点では,遂行回避目標場面が他の3つの場面よりも有意に高かった(ps<.001)。AGQ-Rの遂行回避目標得点では,遂行回避目標場面が習得接近目標場面と習得回避目標場面よりも有意に高かった(ps<.001)が,遂行接近目標と有意な差がみられなかった(n.s.)。AGQ-Rの習得回避目標得点では,習得接近目標場面が他の3つの場面よりも有意に高く(ps<.001),習得回避目標場面は遂行回避目標場面よりも有意に高いだけであった(p=.02)。徳岡(2012)の習得回避目標得点では,習得回避目標場面が他の3つの場面よりも有意に高かった。
これらの結果は徳岡(2013)と一致した結果であった。徳岡(2012)の達成目標尺度は,授業環境を反映する尺度でることが示唆される。
本研究の結果から,AGQ-Rの習得回避目標は,Bong(2009)の指摘するように習得接近目標のように捉えられていることを示唆する。