The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE039] 中高一貫校における動機づけ(2)

― 英語における教室の目標構造と生徒の達成目標のマッチングと学業成績の関連 ―

中谷素之1, 脇田貴文2, 別府正彦3 (1.名古屋大学大学院, 2.関西大学, 3.㈱ハピラル・テストソリューションズ)

Keywords:動機づけ, 中高一貫校, 達成目標

問題と目的
近年,従来の中学校と高等学校を一貫した学習課程や環境の下で教育を行う,中高一貫教育が注目を集め,(文部科学省, 2011)その数も私立・公立を含め全国的増加傾向にある。一方でその質的側面が問題になっているとも考えられ,このことから,中高一貫校の強みや特色といった点について,教育心理学に基づく実証的観点によって検討することが重要な意味をもつ。
中高一貫校では,6年間の一貫した教育課程を保障し,学習環境を整えるという特徴から,学校や教師の影響が重要になるだろう。生徒の学ぶ学習環境の認知によって生徒自身の学習の志向性も変化し,学業達成に影響を及ぼしているという学習過程が考えられる。
さて,このような学習過程を検討するための有用な理論として,近年の動機づけ研究の主流のひとつである達成目標理論があげられる(例えば Elliot & Dweck, 2005)。この理論では,教師の指導行動に基づく教室の目標構造が生徒自身の達成目標志向性に関わることで,生徒の学習過程や学業達成に影響を及ぼすととらえている(Ames, 1992)。系統的な教育環境のなかで,生徒は教室の目標構造から影響を受け,どのような学習方略を用い,また実際にどのような学業成果を得ているのだろうか。本研究では,これまでほとんど検討されていない,中高一貫校における学習動機づけの特徴を明らかにするため,特に英語科について,教室と生徒の達成目標の一致が学習方略使用および実際の学業成績にどのような影響を及ぼしているかを明らかにする。
方 法
調査対象:首都圏,関西圏を中心に,公立および私立の全国の中高一貫校36校に通う中学3年生,2,847名。
質問紙:1.生徒の達成目標 Elliot & McGregor(2001)などを参考に,個人の達成目標を測定した。遂行接近目標,遂行回避目標,熟達目標各3項目,計9項目。
2.教室の達成目標構造 教師の指導行動に関して,英語に関する教室の目標構造を測定した。遂行接近目標,遂行回避目標,熟達目標各3項目,計9項目。
3.学習方略 予習や復習,認知的方略など,英語における適切な学習行動を測定する項目として,各7項目,計21項目。
4.学習動機づけ 英語の自信・有能感の6項目。
5.学力テスト 中学3年生1学期末時点の基礎的学力を測定するテストを用いた。主な範囲は中1,2年の既習レベルであった。
結果と考察
まず全変数の平均値および標準偏差によって分布を確認し,各尺度の信頼性係数(α),および変数間相関を算出した。次に,遂行目標と熟達目標の組合せにより,英語における教室の目標構造と生徒の達成目標のタイプを構成し,特に,達成目標のマッチングに注目し,4タイプについて各変数の得点を算出した。その結果,適応的な学習方略の使用について,全ての行動でPM一致型,pM一致型,Pm一致型,pm一致型の順で得点が高かった。英語の動機づけでもほぼ同様の傾向であった。一方学力テスト得点ではpM一致型の得点がもっとも高く,反対にPm一致型がもっとも低かった。
本研究の結果,遂行と熟達の両目標において,教室の目標構造と生徒の達成目標が適応的に一致したときに,ポジティブな効果をもつことが示された。さらに学業成績については,教室の熟達目標構造が生徒の熟達目標を高めることによって,達成が高められる可能性が示唆された。今後は、中高一貫校以外の学校との比較から、動機づけや学習過程の違いを検討することが必要であろう。