The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE043] 女子大学生間のアドバイス場面における言葉かけによって喚起される反省感情

真下知子1, 三宮真智子2 (1.京都文教短期大学, 2.大阪大学大学院)

Keywords:コミュニケーション, 言葉かけ, アドバイス

【問題と目的】
我々にとって,対人コミュニケーション・スキルを向上させることは,人との関係構築,維持,そして他者との相互作用を活かした学びを充実させていくために重要な課題である。筆者らは,大学生を対象としたコミュニケーション教育を設計するため,大学生活で日常的な場面の一つである友人間のアドバイス場面に着目し,(1)場面の収集,(2)場面の評定,(3)言葉かけの収集,(4)受け手の認知や感情に関する検討の4段階に分けて実態把握に取り組んできた(真下・三宮 2014,真下ら 2015)。本稿では(4)のうち,条件,場面,言葉かけの種類によって,アドバイスの受け手が自分の行動を反省する程度(反省感情とする)が異なるかを明らかにすることを目的として行った実験の結果を報告する。
【方 法】
京阪地区の女子大学生85名(中央値19歳,幅18~19歳)を対象に場面想定法による質問紙実験を実施した。真下ら(2015)によって,心理的負担感が高く評定されたグループワーク(GWとする)場面と低く評定された課題場面において,自発的にアドバイスする場合(自発)と聞き手に求められて返答する場合(返答)の2条件を設定し,4種類の言葉かけ(指示,提案,ヒント,非難)を提示した。そして,親しい友人から,それぞれの言葉かけをされた時,実験参加者がこれまでの自分の行動を反省する程度に関する2項目(ア.言葉かけによって自分のやり方を反省するかどうか,イ.言葉かけによって行動を改善しようと思うかどうか)について,「全く思わない(1)」から「そう思う(5)」までの5件法でたずねた。2項目の得点を平均し,反省感情得点とした。
【結果と考察】
反省感情得点の平均値をTable 1に示す。反省感情項目のα係数は.68~.97であった。
条件(自発・返答)×場面(GW・課題)×言葉かけ(指示・提案・ヒント・非難)の3要因分散分析(被験者内計画)を行った結果,言葉かけの主効果が有意であり,(F(2.13,164.08)=19.06, p<.001),多重比較の結果,ヒントが指示,提案,非難より低かった(すべてp<.05)。条件の主効果,および場面の主効果はみられなかった(順に,F(1,77)=0.18, n.s.; F(1,77)=0.99, n.s.)次に,場面×言葉かけの交互作用が有意であったため(F(2.61,201.28)=8.10, p<.001),単純主効果の検定を行った結果,課題場面では,ヒントが指示,提案,非難より低かった(すべてp<.05)が,GW場面では,指示と提案がヒントと非難より高かった(すべてp<.05)。なお,条件×場面,条件×言葉かけ,および条件×場面×言葉かけの交互作用はみられなかった(順に,F (1,77)=0.31, n.s.; F (2.42,186.39)=2.07, n.s.; F (2.65,204.26)=0.35, n.s.)。
言葉かけによって自分の行動を反省する程度は,条件,場面を問わずヒントが最も低かった。受け手の意図認知を検討した真下・三宮(2014)では,求める行動に直接言及しないヒントの表現は,指示や非難よりもポジティブな影響を与えることが示されたが,反省感情を喚起する程度は低いと考えられる。しかし,場面によって結果は異なっている。課題場面ではヒントが他の言葉かけより低いが,GW場面ではヒントと非難が指示や提案よりも低かった。課題場面では,受け手自身が,問題の所在は自分の努力や計画性にあると自覚しやすいが,GW場面では,受け手はGWを進めるために積極的に行動しており,それが他者に良くない印象を与えていると自覚しにくい場合も考えられる。後者の場合には,非難することが反発を招き,反省感情が低くなる可能性がある。このように,反省感情の喚起には,話し手の意図が正確に伝わる表現,および状況に応じて聞き手が受容しやすい表現の工夫が必要であることが示唆された。