[PE058] 協同学習の行動場面にみる教育機能統合の探索的研究(1)
行動場面の特性の分析
Keywords:協同学習, 行動場面, 外集団
目的
学校教育場面における協同学習研究は,主に協同成立に向けた手法の分析や開発,協同成果としての児童生徒の心理・学習の検討に焦点をあててきた。これに対し,本調査は,協同学習の単位である集合体や行動場面(行動セッティング)の持つ対人心理的意味から,協同成立の要件を探索的に検討することを目的とする。ここでは,協同学習成立状態を児童同士の協力と個人の学習意欲との双方の向上とする。
方法
調査対象 中部地域のA小学校5,6年生(n=120)。
調査時期 2014年11月下旬から12月上旬。
調査手続き 質問紙調査を実施した。協同学習成立場面(みんなでいっしょにやってできるようになった,わかるようになった授業場面)と成立しなかった場面(みんなでいっしょにやったけどやりきった感がなかった授業場面)を各1想起させて,以下に回答してもらった。
⑴ 自由記述:教科,活動内容,活動場所,めあて,活動単位(班,学級,同学年,異学年,学校全体)
⑵ 項目評定(5件法):外集団(活動単位集団以外)との交流,リーダーの存在,協力の必要性,課題に取り組む必要性,教師の指導行動,グルーピング,所属感,協力度,学習意欲。
結果
今回は,自由記述から行動場面の分析,行動場面と項目評定「外集団との交流」得点との関連を検討した。
操作チェック 協同成立のほうが不成立場面より協力度(成立M=3.96,不成立M=3.42),学習意欲(成立M=3.94,不成立M=3.28)ともに高かった(協力:t(106)=5.07, p<.001, 学習意欲:t(104)=6.63, p<.001)。
教科・場所・めあて・活動単位の比較 教科については,協同学習成立場面には理科,家庭科,体育,算数が多く,協同学習不成立場面には体育,理科,総合学習が多く挙げられた。また,成立,不成立いずれも普通教室外での活動が多かった。各場面のめあてと活動単位との関連について協同成立と不成立を比べると(Table 1),協同学習成立のめあては「協力・楽しさ」(e.g.,みんなで協力する,楽しく料理する)と「多義的成果」(e.g.,きれいに作品をつくる,安全に実験する)が多く,また班活動が多かった。対して,不成立のめあては「一律的成果」が多く(e.g.,相手に勝つ,3個以上取る),学級単位での活動が多かった。
交流した外集団の特徴 協同学習成立・不成立場面ごとに,めあて×活動単位×交流した外集団の分散分析を実施した結果,成立場面ではめあて×外集団が有意であり(F(9, 288)=2.22, p<.05),めあてが「一律的」「多義的」成果のとき同学年の他クラスとの交流が多く,判断の拠り所が一義的ではない「協力・楽しさ」や「多義的成果」では学年を超えた外集団との交流が多かった(Table 2)。協同学習不成立場面では活動単位×外集団が有意であり(F(6, 264)=3.84, p<.001),活動単位である同・異学年に準じた外集団と交流が特徴である(Table 3)。
考察
協同学習成立の行動場面の特徴として,多様に判断できるめあてが多く,学級内の班活動が多い一方めあて(課題)と交流する外集団の範囲とが連動することが示唆される。複数校のデータを収集し,どこで・いつ(課題)・どのような外集団交流がみられるか分析し,協同学習の行動場面の心的意味を集合体の意味から理解したい。
(本調査は平成26年度愛知教育大学卒業研究〔小池速人〕のデータを再分析したものである。平成26年度科研費〔23530852〕の助成を受けた。)
学校教育場面における協同学習研究は,主に協同成立に向けた手法の分析や開発,協同成果としての児童生徒の心理・学習の検討に焦点をあててきた。これに対し,本調査は,協同学習の単位である集合体や行動場面(行動セッティング)の持つ対人心理的意味から,協同成立の要件を探索的に検討することを目的とする。ここでは,協同学習成立状態を児童同士の協力と個人の学習意欲との双方の向上とする。
方法
調査対象 中部地域のA小学校5,6年生(n=120)。
調査時期 2014年11月下旬から12月上旬。
調査手続き 質問紙調査を実施した。協同学習成立場面(みんなでいっしょにやってできるようになった,わかるようになった授業場面)と成立しなかった場面(みんなでいっしょにやったけどやりきった感がなかった授業場面)を各1想起させて,以下に回答してもらった。
⑴ 自由記述:教科,活動内容,活動場所,めあて,活動単位(班,学級,同学年,異学年,学校全体)
⑵ 項目評定(5件法):外集団(活動単位集団以外)との交流,リーダーの存在,協力の必要性,課題に取り組む必要性,教師の指導行動,グルーピング,所属感,協力度,学習意欲。
結果
今回は,自由記述から行動場面の分析,行動場面と項目評定「外集団との交流」得点との関連を検討した。
操作チェック 協同成立のほうが不成立場面より協力度(成立M=3.96,不成立M=3.42),学習意欲(成立M=3.94,不成立M=3.28)ともに高かった(協力:t(106)=5.07, p<.001, 学習意欲:t(104)=6.63, p<.001)。
教科・場所・めあて・活動単位の比較 教科については,協同学習成立場面には理科,家庭科,体育,算数が多く,協同学習不成立場面には体育,理科,総合学習が多く挙げられた。また,成立,不成立いずれも普通教室外での活動が多かった。各場面のめあてと活動単位との関連について協同成立と不成立を比べると(Table 1),協同学習成立のめあては「協力・楽しさ」(e.g.,みんなで協力する,楽しく料理する)と「多義的成果」(e.g.,きれいに作品をつくる,安全に実験する)が多く,また班活動が多かった。対して,不成立のめあては「一律的成果」が多く(e.g.,相手に勝つ,3個以上取る),学級単位での活動が多かった。
交流した外集団の特徴 協同学習成立・不成立場面ごとに,めあて×活動単位×交流した外集団の分散分析を実施した結果,成立場面ではめあて×外集団が有意であり(F(9, 288)=2.22, p<.05),めあてが「一律的」「多義的」成果のとき同学年の他クラスとの交流が多く,判断の拠り所が一義的ではない「協力・楽しさ」や「多義的成果」では学年を超えた外集団との交流が多かった(Table 2)。協同学習不成立場面では活動単位×外集団が有意であり(F(6, 264)=3.84, p<.001),活動単位である同・異学年に準じた外集団と交流が特徴である(Table 3)。
考察
協同学習成立の行動場面の特徴として,多様に判断できるめあてが多く,学級内の班活動が多い一方めあて(課題)と交流する外集団の範囲とが連動することが示唆される。複数校のデータを収集し,どこで・いつ(課題)・どのような外集団交流がみられるか分析し,協同学習の行動場面の心的意味を集合体の意味から理解したい。
(本調査は平成26年度愛知教育大学卒業研究〔小池速人〕のデータを再分析したものである。平成26年度科研費〔23530852〕の助成を受けた。)