The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE063] 大学生における抑うつ尺度SDS,CES-D,PHQ-9の計量心理学的特徴(1)

古典的テスト理論および確認的因子分析による比較

梅垣佑介1, 登藤直弥2 (1.奈良女子大学, 2.国立情報学研究所)

Keywords:抑うつ尺度, 古典的テスト理論, 確認的因子分析

問題と目的
大学生の抑うつ度を自己記入式尺度を用いて測定する試みは,臨床心理学や精神医学領域で頻繁に行われている。よく用いられる尺度としては,SDS(例えばHirao, 2014; 木村・梅垣・水野, 2014),CES-D(例えば川人・堀・大塚, 2010; 永井, 2010),BDI-II(例えばArnault et al., 2006; Hirao, 2014),PHQ-9(例えばHirao, 2014; Mitsui et al., 2013)などがあるが,これらを日本の大学生を対象に実施した際の計量心理学的特徴を比較検討した研究はこれまでない。そこで本研究では,SDS,CES-D,PHQ-9の3尺度を大学生を対象に実施し,古典的テスト理論および確認的因子分析により計量心理学的特徴を比較した。
方法
対象者と調査手続き
インターネット調査会社Macromillにモニター登録する大学生1,000名(男女各500名)に対し,オンラインで質問紙を配信した。トップページに調査の概要と匿名性・任意性について記載し,回答をもって同意が得られたとした。本研究は第一著者が所属する大学の研究倫理委員会の承認を受けて実施された。
質問紙の構成
SDS Zung(1965)が作成し,福田・小林(1973)が翻訳した日本語版を用いた(20項目,4件法)。
CES-D Radloff(1977)が作成し,島ら(1985)が翻訳した日本語版を用いた(20項目,4件法)。
PHQ-9 Kroenke et al.(2001)が作成し,Muramatsu et al.(2006)により翻訳された日本語版を用いた(9項目,4件法)。
フェイスシート 性別,年齢,学年といった個人を特定できない情報を尋ねた。
分析手続き
α係数による信頼性の検討,尺度得点間相関による構成概念の同一性の検討,1因子性を仮定した確認的因子分析の結果得られた因子間相関による構成概念の同一性の検討と因子負荷量による各項目の妥当性の検討を行った。
結果
各尺度のα係数は,SDSでα=0.845,CES-Dでα=0.920,PHQ-9でα=0.907であった。また,各尺度得点間の積率相関係数はr=.639-.776であった。
さらに,各尺度に1因子性を仮定して確認的因子分析を行い,因子間相関および各項目の因子負荷量を検討した。得られた因子間相関は
r =.827-.885であった。因子負荷量は,PHQ-9においては.559-.875であった。CES-Dにおいては項目4(.185),項目8(.132),項目12(.281)において低く,それ以外では.552-.883であった。SDSにおいては項目2(-.077),項目5(.198),項目6(-.006),項目7(.272),項目8(.353),項目16(.277)において低く,それ以外では.415-.917であった。
考察
SDS,CES-D,PHQ-9を大学生を対象に実施した際,いずれの尺度も一定の信頼性を示し,尺度得点間相関および因子間相関は高い値を示した。ただし,SDSおよびCES-Dの一部の項目に関して因子負荷量が低い項目が見つかった。これら項目の特徴を検討したところ,これらの多くは反転項目であり,残りは身体的変化(痩せ,便秘)に関する項目であった。大学生を対象に抑うつ尺度を実施した際,反転項目が作成者の意図とは異なる作用(Sliter & Zickar, 2014; Wang, Chen, & Jin, 2015)をし,抑うつ以外の要因の影響を受けやすい身体的変化に関する項目とともに尺度の妥当性に影響することが示唆された。