[PE066] 問題生徒は誰の空気を読むのか?
学級の荒れを支える単位
Keywords:学級の荒れ, 中学生, 問題行動
問題
「学級崩壊」や「学級の荒れ」と言われる学校における集団的な問題は,時代にかかわらず現場を悩ます問題である。これまでいくつかの研究が行われており,困難学級においては,通常学級に比べ,問題生徒のみならず,一般生徒においても反社会的な生徒文化が形成されていることが指摘されている(加藤・大久保, 2006)。つまり,こんな学級において問題生徒が起こす問題,不適応行動というより,周囲の生徒の期待に応えるという意味で適応的な行動なのではないかというわけである(加藤,2007)。
しかし,従来の研究では,困難学級と通常学級において,問題行動をしない生徒の雰囲気に違いがあるということが指摘されているのみである。実際,問題生徒が他の一般生徒の雰囲気をどのように認知しているのかということは明らかにされていない。また生徒同士の人間関係が島宇宙化していると指摘されるように,生徒が影響を受ける人間関係が制限されている可能性も考えられる。したがって,困難学級で問題行動を起こす生徒は,クラス全体の雰囲気を読んでいるのか,それとも仲のよい友だち関係の雰囲気を読んで問題行動を行っているのかが定かではない。
そこで本研究では,困難学級と通常学級で,問題生徒が,他者の規範意識をどのように認識しているのかを,「他の多くの生徒」と「仲のよい友だち」の2水準に分けて検討する。
方法
調査協力者 公立中学校2校33学級の1~3年生889名(1年生305名,2年生299名,3年生295名;男子455名,女子444名)。なお対象校は,2校ともに生徒指導困難校であった。
調査手続き 以下の内容を含む質問紙を行った。①学級の荒れ尺度(深谷・三枝,2000),②自分の規範意識,③他者の規範意識,④問題行動の経験。①~③は5件法,②は2件法。③に関しては「あなた以外の多くの生徒はどう思うか」(生徒全般群),「あなたの仲のよい友だちはどう思うか」(友だち群)の2種類の問い方による教示文の質問紙を作成し,学級ごとにランダムに配付した。
調査期間は2011年12月~2012年2月。
結果と考察
学級・生徒の分類 学級の荒れ尺度によって,学級を困難学級と通常学級の3つに分類し,下位2群を通常学級,上位1群を困難学級に分類した。また過去1年以内の問題行動の経験から生徒を3分類し,得点の下位2群を一般生徒(71.5%),上位1群を問題生徒(18.5%)と分類した。
規範意識 まず生徒自身の規範意識を検討するために,規範意識に関して学級(2)×生徒(2)で2要因分散分析を行った。その結果,生徒間では差が見られたが(F (1,885)=238.65, p=.000, η2=.21),学級間では有意な差は見られなかったF (1,885)=2.72,n.s.η2=.00)。つまり,生徒自身の規範意識については,問題生徒と一般生徒では,問題生徒のほうが規範意識は低いが,困難学級と通常学級の間では規範意識の違いは見られない。
他者の規範意識の認知 次に他の生徒の規範意識の認知に生徒タイプ,学級タイプによる違いがみられるのかを検討するために,学級(2)×生徒(2)×問い方(2)で3要因分散分析を行った。その結果,学級と問い方の1次の交互作用で有意差がみられた(F (1,889)=13.35, p=.000, η2=.02)。単純主効果を検討した結果,通常学級の生徒に比べ,困難学級の一般生徒,問題生徒はともに,生徒全般の規範意識を低く見積もっていた。また困難学級の生徒は,一般生徒,問題生徒ともに自分と仲のよい友だちよりも,自分以外の多くの生徒のほうの規範意識を低く見積もっていた。つまり,困難学級の生徒は,自分の仲間よりも,学級全般の生徒の規範意識を低く認知しており,そのことが彼らの問題行動の生起に関係していると考えられる。
「学級崩壊」や「学級の荒れ」と言われる学校における集団的な問題は,時代にかかわらず現場を悩ます問題である。これまでいくつかの研究が行われており,困難学級においては,通常学級に比べ,問題生徒のみならず,一般生徒においても反社会的な生徒文化が形成されていることが指摘されている(加藤・大久保, 2006)。つまり,こんな学級において問題生徒が起こす問題,不適応行動というより,周囲の生徒の期待に応えるという意味で適応的な行動なのではないかというわけである(加藤,2007)。
しかし,従来の研究では,困難学級と通常学級において,問題行動をしない生徒の雰囲気に違いがあるということが指摘されているのみである。実際,問題生徒が他の一般生徒の雰囲気をどのように認知しているのかということは明らかにされていない。また生徒同士の人間関係が島宇宙化していると指摘されるように,生徒が影響を受ける人間関係が制限されている可能性も考えられる。したがって,困難学級で問題行動を起こす生徒は,クラス全体の雰囲気を読んでいるのか,それとも仲のよい友だち関係の雰囲気を読んで問題行動を行っているのかが定かではない。
そこで本研究では,困難学級と通常学級で,問題生徒が,他者の規範意識をどのように認識しているのかを,「他の多くの生徒」と「仲のよい友だち」の2水準に分けて検討する。
方法
調査協力者 公立中学校2校33学級の1~3年生889名(1年生305名,2年生299名,3年生295名;男子455名,女子444名)。なお対象校は,2校ともに生徒指導困難校であった。
調査手続き 以下の内容を含む質問紙を行った。①学級の荒れ尺度(深谷・三枝,2000),②自分の規範意識,③他者の規範意識,④問題行動の経験。①~③は5件法,②は2件法。③に関しては「あなた以外の多くの生徒はどう思うか」(生徒全般群),「あなたの仲のよい友だちはどう思うか」(友だち群)の2種類の問い方による教示文の質問紙を作成し,学級ごとにランダムに配付した。
調査期間は2011年12月~2012年2月。
結果と考察
学級・生徒の分類 学級の荒れ尺度によって,学級を困難学級と通常学級の3つに分類し,下位2群を通常学級,上位1群を困難学級に分類した。また過去1年以内の問題行動の経験から生徒を3分類し,得点の下位2群を一般生徒(71.5%),上位1群を問題生徒(18.5%)と分類した。
規範意識 まず生徒自身の規範意識を検討するために,規範意識に関して学級(2)×生徒(2)で2要因分散分析を行った。その結果,生徒間では差が見られたが(F (1,885)=238.65, p=.000, η2=.21),学級間では有意な差は見られなかったF (1,885)=2.72,n.s.η2=.00)。つまり,生徒自身の規範意識については,問題生徒と一般生徒では,問題生徒のほうが規範意識は低いが,困難学級と通常学級の間では規範意識の違いは見られない。
他者の規範意識の認知 次に他の生徒の規範意識の認知に生徒タイプ,学級タイプによる違いがみられるのかを検討するために,学級(2)×生徒(2)×問い方(2)で3要因分散分析を行った。その結果,学級と問い方の1次の交互作用で有意差がみられた(F (1,889)=13.35, p=.000, η2=.02)。単純主効果を検討した結果,通常学級の生徒に比べ,困難学級の一般生徒,問題生徒はともに,生徒全般の規範意識を低く見積もっていた。また困難学級の生徒は,一般生徒,問題生徒ともに自分と仲のよい友だちよりも,自分以外の多くの生徒のほうの規範意識を低く見積もっていた。つまり,困難学級の生徒は,自分の仲間よりも,学級全般の生徒の規範意識を低く認知しており,そのことが彼らの問題行動の生起に関係していると考えられる。