[PE068] 青年期の精神的回復力に及ぼす幼少期の親子関係と性差の影響
両親との信頼性に関する検討
Keywords:青年期, 精神的回復力, 親子関係
[目的]
田村(2013)では青年期の精神的回復力に幼少期の両親との信頼性が影響していることが明らかにされた。しかし,田村(2013)の分析では,調査対象者の性別が区別されていない。両親との信頼性から受ける影響を考えた場合,性別によって親との信頼性による影響力が異なっているということが考えられる。さらに親が同性であるか異性であるかによってもその影響力が異なっているということも考えられる。
そこで本研究では,青年期の精神的回復力に及ぼす幼少期の両親との信頼性の影響に性差がどのように関与しているかについて検討する。
[方法]
調査対象者 調査対象者は専門学校生と大学生273人であった(女112人,男161人)。平均年齢は19歳7ヶ月であった。
調査手続き 幼少時の親子関係を調査するために,親との親密性尺度(森下,1980)の親との信頼性に関わる7項目の質問について,幼少期の母親と父親との関係について尺度評定を求めた。この尺度は例えば「お母さんはあなたことをよく知っていると思っていましたか」との質問に対して「はい」「?」「いいえ」で答えさせるものであった。
精神的回復力を調査するために,小塩ら(2002)の精神的回復力尺度の21項目について尺度評定を求めた。この尺度は,新奇性追求,感情調整,肯定的未来志向の3つの因子に関する項目から成り,「5.あてはまる」~「1.あてはまらない」の5段階で評定させるものであった。
[結果と考察]
母親,父親のそれぞれについて,男性,女性毎に親との親密性尺度の評定値の上位,下位からそれぞれ25%にあたる調査対象者の評定値と同じ評定値の者をすべて含めて信頼性高群,信頼性低群とした。Table1,Table2は母親,父親との関係に付いての各群の精神的回復力に関わる平均評定値(SD)を示したものである。精神的回復力に及ぼす親との親密性と性差の影響を検討するために2(親との信頼性:高低)×2(性差:男女)の分散分析を行った。その結果,母親との関係については,信頼性×性別の交互作用が有意であり(F (1,180)=10.06, p< .01),単純主効果の検定を行ったところ,母親との関係において男性では,精神的回復力の評定値において信頼性高群と低群の間に有意差はみられなかったのに対して,女性で は信頼性高群が低群よりも有意に高かった(F (1,180)=34.60, p< .001)。同様の交互作用が新奇追求,感情調整についてもみられた。父親との関係においては性別の主効果のみ有意であり(F (1,174)=9.41, p< .01),男性よりも女性の方が精神的回復力の評定値が高かったが,信頼性×性別の交互作用は有意ではなかった。同様の有意な主効果が新奇性追求,感情調整,肯定的な未来志向にいずれにもみられた。青年期の精神的快復力に及ぼす幼少期の親子関係の影響には性差に関する要因が関与していることが示された。
田村(2013)では青年期の精神的回復力に幼少期の両親との信頼性が影響していることが明らかにされた。しかし,田村(2013)の分析では,調査対象者の性別が区別されていない。両親との信頼性から受ける影響を考えた場合,性別によって親との信頼性による影響力が異なっているということが考えられる。さらに親が同性であるか異性であるかによってもその影響力が異なっているということも考えられる。
そこで本研究では,青年期の精神的回復力に及ぼす幼少期の両親との信頼性の影響に性差がどのように関与しているかについて検討する。
[方法]
調査対象者 調査対象者は専門学校生と大学生273人であった(女112人,男161人)。平均年齢は19歳7ヶ月であった。
調査手続き 幼少時の親子関係を調査するために,親との親密性尺度(森下,1980)の親との信頼性に関わる7項目の質問について,幼少期の母親と父親との関係について尺度評定を求めた。この尺度は例えば「お母さんはあなたことをよく知っていると思っていましたか」との質問に対して「はい」「?」「いいえ」で答えさせるものであった。
精神的回復力を調査するために,小塩ら(2002)の精神的回復力尺度の21項目について尺度評定を求めた。この尺度は,新奇性追求,感情調整,肯定的未来志向の3つの因子に関する項目から成り,「5.あてはまる」~「1.あてはまらない」の5段階で評定させるものであった。
[結果と考察]
母親,父親のそれぞれについて,男性,女性毎に親との親密性尺度の評定値の上位,下位からそれぞれ25%にあたる調査対象者の評定値と同じ評定値の者をすべて含めて信頼性高群,信頼性低群とした。Table1,Table2は母親,父親との関係に付いての各群の精神的回復力に関わる平均評定値(SD)を示したものである。精神的回復力に及ぼす親との親密性と性差の影響を検討するために2(親との信頼性:高低)×2(性差:男女)の分散分析を行った。その結果,母親との関係については,信頼性×性別の交互作用が有意であり(F (1,180)=10.06, p< .01),単純主効果の検定を行ったところ,母親との関係において男性では,精神的回復力の評定値において信頼性高群と低群の間に有意差はみられなかったのに対して,女性で は信頼性高群が低群よりも有意に高かった(F (1,180)=34.60, p< .001)。同様の交互作用が新奇追求,感情調整についてもみられた。父親との関係においては性別の主効果のみ有意であり(F (1,174)=9.41, p< .01),男性よりも女性の方が精神的回復力の評定値が高かったが,信頼性×性別の交互作用は有意ではなかった。同様の有意な主効果が新奇性追求,感情調整,肯定的な未来志向にいずれにもみられた。青年期の精神的快復力に及ぼす幼少期の親子関係の影響には性差に関する要因が関与していることが示された。