[PE070] 非行少女の異性関係における承認欲求の現れ
共犯男性に「追従」して幸せを求める少女達
Keywords:女子非行, 異性関係, 追従
問題
非行少女は,共犯である異性と行動を共にする中で,生活を崩していく場合が多い。中島(2008)は,非行少女が,共犯である異性との関係の中で,それまで抱いていた否定的な自己像が一時的にも払拭できている可能性があると指摘している。なぜ,払拭は一時的にすぎないのか?自己像の形成は,承認欲求とも関連が強い。本研究の目的は,非行少女の生育歴の自己物語を通して,承認欲求の現れの一つである「追従」の過程と,自分が相手にとって,特別で重要な他者であるという「承認」を感じる情況に着目し,その特徴について考察・検討することである。
手続
1.対象 X年~X+3年の間,少年鑑別所に在所または女子少年院に在院していた非行少女のうち,交際相手や恋人など,恋愛対象を共犯にして非行を行った者,または,援助交際など異性と関わる非行を繰り返していた者のうち,5名。A~Eが保護されたときの年齢,保護に至った非行名は以下のとおりである。(1)A。19歳。覚せい剤取締法違反。(2)B。18歳。覚せい剤取締法違反。(3)C。14歳。ぐ犯(家出・深夜徘徊・有機溶剤濫用)。(4)D。15歳。恐喝。(5)E。15歳。ぐ犯(家出・援助交際・売春)。なお,いずれのケースも少女たちは,「主犯格」ではない。主犯格は,恋人または恋人が属する集団であった。また,彼女たちは,本研究の内容,発表について了解し,自らの立ち直りに生かそうと,自己物語の分析・考察に協力した者であることを付記する。
2.方法 少年鑑別所在所中または少年院在院中,A~Eに面接をし,生育歴や家族,自分についての作文を書かせ,保護されるに及ぶまでの自己物語を整理し,非行場面での異性との関係の過程と,承認を感じる情況について,分類し,特徴を抽出した。
結果
Table 1は,自己物語について,「非行場面での異性との関係の過程」と「承認を感じる情況」を観点にまとめたものである。A~Eの5人の少女は,生活が崩れる中で,親しみを感じた異性,あるいは,恋人となった共犯男性に「誘われて一緒に(非行を)する」と,追従していた。その際,「悪いことだから本当はしてはいけない」「したくない」という気持ちは抑えていた。このような,自己を抑えて追従する過程と,相手が喜ぶであろう結果が生じることを繰り返し,少女たちは「自分は特別である」「かわいがってもらえる」「恋人や恋人の仲間の役に立っている」と感じるという特徴が見られた。また,そこからさらに非行が多岐に及ぶという傾向も示された。
考察
非行少女は,親しみを感じた異性や,恋人である共犯に,追従していく過程にあって,承認されていると感じる傾向があり,その承認の感じ方が,追従傾向をまた強め,非行を一層深刻化させる悪循環に陥るという可能性が示された。この循環の中で,承認を感じられる共犯である異性(または恋人)との関係へのしがみつきが強まり,それ以外の他者(家族など)との関係は避け,人間関係が狭まることも推察された。
非行少女は,共犯である異性と行動を共にする中で,生活を崩していく場合が多い。中島(2008)は,非行少女が,共犯である異性との関係の中で,それまで抱いていた否定的な自己像が一時的にも払拭できている可能性があると指摘している。なぜ,払拭は一時的にすぎないのか?自己像の形成は,承認欲求とも関連が強い。本研究の目的は,非行少女の生育歴の自己物語を通して,承認欲求の現れの一つである「追従」の過程と,自分が相手にとって,特別で重要な他者であるという「承認」を感じる情況に着目し,その特徴について考察・検討することである。
手続
1.対象 X年~X+3年の間,少年鑑別所に在所または女子少年院に在院していた非行少女のうち,交際相手や恋人など,恋愛対象を共犯にして非行を行った者,または,援助交際など異性と関わる非行を繰り返していた者のうち,5名。A~Eが保護されたときの年齢,保護に至った非行名は以下のとおりである。(1)A。19歳。覚せい剤取締法違反。(2)B。18歳。覚せい剤取締法違反。(3)C。14歳。ぐ犯(家出・深夜徘徊・有機溶剤濫用)。(4)D。15歳。恐喝。(5)E。15歳。ぐ犯(家出・援助交際・売春)。なお,いずれのケースも少女たちは,「主犯格」ではない。主犯格は,恋人または恋人が属する集団であった。また,彼女たちは,本研究の内容,発表について了解し,自らの立ち直りに生かそうと,自己物語の分析・考察に協力した者であることを付記する。
2.方法 少年鑑別所在所中または少年院在院中,A~Eに面接をし,生育歴や家族,自分についての作文を書かせ,保護されるに及ぶまでの自己物語を整理し,非行場面での異性との関係の過程と,承認を感じる情況について,分類し,特徴を抽出した。
結果
Table 1は,自己物語について,「非行場面での異性との関係の過程」と「承認を感じる情況」を観点にまとめたものである。A~Eの5人の少女は,生活が崩れる中で,親しみを感じた異性,あるいは,恋人となった共犯男性に「誘われて一緒に(非行を)する」と,追従していた。その際,「悪いことだから本当はしてはいけない」「したくない」という気持ちは抑えていた。このような,自己を抑えて追従する過程と,相手が喜ぶであろう結果が生じることを繰り返し,少女たちは「自分は特別である」「かわいがってもらえる」「恋人や恋人の仲間の役に立っている」と感じるという特徴が見られた。また,そこからさらに非行が多岐に及ぶという傾向も示された。
考察
非行少女は,親しみを感じた異性や,恋人である共犯に,追従していく過程にあって,承認されていると感じる傾向があり,その承認の感じ方が,追従傾向をまた強め,非行を一層深刻化させる悪循環に陥るという可能性が示された。この循環の中で,承認を感じられる共犯である異性(または恋人)との関係へのしがみつきが強まり,それ以外の他者(家族など)との関係は避け,人間関係が狭まることも推察された。