The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE073] 援助要請感受性の概念検討(1)

概念の提案と定義・意義

本田真大1, 本田(三鈷)泰代2 (1.北海道教育大学, 2.函館大学)

Keywords:援助要請, 被援助志向性

【問題と目的】
悩みを相談するという現象は援助要請行動(help-seeking behavior)として研究され,知見が蓄積されている。援助要請研究は援助を受ける側に焦点を当てているが,援助を求めない(相談しない・できない)人に適切に援助を届けるためには,周囲の他者の要因を検討することも有用であろう。本発表では「援助要請感受性」という概念を提案し,これまでの援助要請研究の理論上に位置づけることを目的とする。
【援助要請研究の目標】
援助要請行動とは「情動的または行動的問題を解決する目的でメンタルヘルスサービスや他のフォーマルまたはインフォーマルなサポート資源に援助を求めること」と定義され(Srebnik,Cause,& Baydar,1996),大きく2つの方向性から研究されている。1つは「最適な(optimal)援助要請行動」の解明であり,個人が一人で解決することが困難な悩みや問題状況に遭遇してから援助要請行動を行うまでの過程に関する研究により,過不足のない(最適な)援助要請行動の在り方を検討している。もう1つは「機能的な(functional)援助要請行動の解明」であり,援助要請行動を実行してからその後の結果(精神的健康など)への影響過程を検討し,個人に望ましい結果をもたらす援助要請行動の在り方を検討している。
【援助要請感受性概念の提案】
これまでの援助要請研究は一人で解決できない問題状況で援助を求めない個人が援助を求めやすくすることと,援助要請行動への抵抗に配慮した援助方法を開発することから(水野・石隈・田村,2006),実践へのアプローチを模索している。
一方で,深刻な問題状況にいる個人が自ら援助を求めなくても周囲の他者が困難さに的確に気づいて援助することも極めて重要であろう。つまり,「一人では解決困難な状況で,援助要請意図が高いものの援助要請行動を実行していない個人に周囲の他者がいかに気づけるか」という点が援助要請研究上の重要な検討課題であると言える。
このような観点が必要な理由は以下の2つである。第1に近年の実態調査から,悩みがあったりいじめ被害に遭ったりした時に相談しない子どもが一定数存在するためである(例えば,文部科学省,2013;佐藤・渡邉,2013)。第2に,心理主義(山本,1986)の点から,援助要請に焦点を当てることで,「援助要請できないのはその個人の責任である」という結論に陥る可能性があり,この姿勢は実践上望ましくないと考えられるためである。
【援助要請感受性の定義と意義】
援助要請感受性の中核である「周囲の他者の気づき(相手の意図の推測)」と関連する研究として,ノンバーバルコミュニケーションの観点から検討された感受性の研究や(和田,1992),他者の内面を否定的に推測する心理である拒否に対する感受性の研究(本多・桜井,2000)などがある。これらの概念定義を参考に,本研究では新たに「援助要請感受性(help-seeking sensitivity)」という概念を提案し,「一人で解決することが困難な問題状況にいる他者の,明確な援助要請行動を伴わない援助要請意図に対する個人の知覚」と定義する。
援助要請しない・できない人の周囲にいる他者の心理を援助要請感受性の点から明らかにし,必要に応じて介入し高めることで,非常に深刻な問題状況にいる個人が援助を求めなくても必要な援助を得る可能性が高まると期待される。
今後は援助要請感受性の概念をデータに基づいて検討することが課題である。
【主要引用文献】
Srebnik,D., Cause,A.M. & Baydar,N. (1996). Help-seeking pathways for children and Adolescents. Journal of Emotional and Behavioral Disorders, 4,210-220.