The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE075] 教師は自校の「文化」をどうとらえているか

別所崇1, 松嶋秀明2 (1.滋賀県立大学大学院, 2.滋賀県立大学)

Keywords:学校文化, 地域文化, スクールカウンセラー

問題と目的
学校心理臨床場面では,外部者であるスクールカウンセラー(SC)は,円滑な参与をおこなっていくために,当該の学校がもつ特質を理解することが重要である(例えば,定森, 2005)。学校のもつ特質をあらわす概念のなかに「学校文化」がある。新教育社会学辞典(1986)によれば,これは「学校集団の全成員あるいはその一部によって学習され,共有され,伝達される文化の複合体」であり,「組織ないし制度が普遍的に」もつものと,「各学校の歴史や社会的文脈の中での独特の展開を示す中で形成された特質」との双方を併せ持つものである。
学校文化を扱おうとするとき,以下の2点が重要になるだろう。すなわち,(1)こうした「文化」は,実体としてある「モノ」であると同時に,構成員の不断の相互作用のなかでうみだされる過程でもある。文化をとらえるうえでは,この両側面をとらえる必要があるだろう。(2)こうした「文化」は,そのなかで生活する教師にとっては,いわば日常の延長であるがゆえに,その特質は意識化されにくい。それが明確に意識化されるのは,こうした日常性が失われた時だろう。
本報告でとりあげる小学校は,2つの小学校の統合によって新しく生まれたものであり,新たな文化がうみだされる過程をとらえるうえでは有用である。そこで自校の文化を,教師がどのようにとらえ/感じているかを,半構造化インタビューによって明らかにすることを目的にする。
方法
調査方法:(1)教師2名(教諭1名,養護教諭1名)への半構造化インタビュー。(2)実践関与的フィールドワーク。なお,本研究の実施・発表は,研究協力校および研究協力者の双方より同意を得ている。
調査対象校:X県内の公立小学校1校(Y小学校)。Y小の属する市は,X県内の西部にあり,都市部へのアクセスがよいため,急速なベッドタウン化が進んだエリアではあるが,Y小の位置する地域は,古くからの農村部で,人口の流入も少ない。なお,Y小は昨年度より隣接するZ小学校との統廃合が実施され,Y小を存続校としてその校舎で児童は学んでいる。
調査時期:Y小統合後のX年8月に2回,12月に1回,X+1年3月に1回の合計4回,調査協力者の終業後の時間帯に,インタビューを実施した。なお報告者はX-1年4月から現在まで県採用のSCとして年間30回,午前中の3時間Y小にて勤務している。
結果と考察
インタビューにおける語りからは,「決まっていることが少なく,いろんなことへの選択権が広い学校」で「アットホームな雰囲気の,いればいるほど温かい学校」といった学校全体の雰囲気に関するイメージが語られた。また,児童に関しては「いい意味で田舎の子,田舎ののびのびとした子どもたち」というイメージが2名共通で挙げられていた。これは温かさという言葉にもあるように,当該コミュニティに参入できた場合には居心地のよさを感じるものである。しかしその一方,Y小の児童は「みんなタメ口」で「純粋でほのぼのとしていて自由にマイペース」な子どもであり,「前任校での指導通り児童を全員さんづけで呼んでいたら,1週間もしないうちに“さんづけって変”と指摘された」というエピソードがA教諭から,幼稚園・保育所からの繋がりが強すぎて「人間関係のトラブルを引きずっている」という点が2名共に語られた。これらはB教諭から「友達を大事にする」というポジティブな側面として語られることもあるが,当該コミュニティに参与するうえでの対人心理的距離の近さが戸惑いをうむものでもあり,当該コミュニティ内での人間関係の流動性のなさからくる失敗のできなさといった困難につながるものでもあることがうかがわれる。
次に,「家族がY小出身ということが多く,保護者・地域の協力がすごくある」,「地元色が強い」,「地域の繋がりがものすごく厚いので,地域の方の温かさを感じる」,「地域に根付いた伝統校」といった地域と学校とのかかわりについての言及が多く見られた。これは,地域の文化が強くY小学校に存在する「文化」に影響を与えていることを示唆するものではないだろうか。
今後は,こうした「文化」が年数を経てどのように変化していくのか,あるいはスクールカウンセラー活動にかかわって,支援の必要な子どもへの対応にどのように影響するのかといった点を明らかにする必要がある。