[PF015] 思春期のこころの理解と援助のためのワークショップ・プログラム
学校と家庭でできることを考えてみよう
Keywords:思春期, SEL, ワークショップ
1.はじめに
中学時代は思春期とも呼ばれる時期に相当し,次第に家族よりも友人を重視するようになり,対人関係に敏感になったり,親や大人に対しては自立と依存の葛藤を感じる不安定な時期でもある(植村・桜井,2003)。メンタルヘルスの領域では「故意に自分の健康を害する症候群」(悩みに葛藤する中でて危険な行動や自らを傷つける自傷行為等をあえてしてしまう)の存在が危惧されている(松本,2009)。対策としては一般的な啓発的なアプローチはかえって「自分とは関係ない」話として遠ざけてしまう可能性が指摘がされている。
思春期の特性を踏まえた手法はいくつか開発されているが,教室で教師自身が実践できる必要がある。欧米では,この種の心理教育プログラムは,総称としてSEL(Social and Emotional Learning:社会性と情動の学習)と呼ばれ,実践が進められている。SEL-8S(小泉,2011)はSELの中の特定プログラムで,8つの社会的能力育成を目標とし,3学年で段階的に学習することができる。我々はさらにその短縮版SEL-8S Shortの開発を試みた。これは,中学生が悩んでいる時,一番助けを求めやすいのは「友人」である(石毛他,2005)ことに着目したワークショップ・プログラム(以下,WS)である。こうしたプログラムが有効に機能するためには,学校全体,保護者,地域が子どもたちを見守る環境を作っていくことも重要である。本稿では,そのWSを学校関係者(教育者・保護者)向けに実施し「学校と家庭でできること」について検討した。学習効果は「自己効力感」から分析し,WSの効果を検証したのでここに発表する。
2.研究の方法
首都圏のA市教育委員会の協力のもと,毎年開催されるPTA会長と教育関係者との研究会にてWSを実施した。参加者は公立小中学校PTA会長31名,小中学校長33名,教育委員会11名,合計75名である。参加者にはWS前後にアンケートに回答をしてもらい,その場で回収した(回収率94.5%)。
WSの内容
WSはⅠ相手の気持ちの理解,Ⅱソーシャルサポートの理解と把握,に主眼を置いて構成されている。Ⅰは子どもの態度・仕草・表情などから子どもの気持ちを推し量るワーク,Ⅱは受けたい援助と主な援助者をシートに書き示して可視化するワークである。
3.結果と考察
図1には「子どもたちに命や自己と他者の存在の大切さなどを伝えたい時,以下のことはどれくらい重要だと思いますか」についての回答割合を事前事後の変化がわかるように示した。啓発的な働きかけより,仲間作りの支援や大人と子どもの信頼関係づくりを重視する方向に変化が見られた。
図2には子どもへのサポートとしてできる事を具体的に聞くと,「自分が助けや支えになれる」「家族・職場に相談する」「家庭と学校で連携を取る」「相談機関と連携を取る」「子どもの気持ちを尊重する」「自分の気持ちを安定させる」の項目がWSの後に有意に高くなっていた。
中学時代は思春期とも呼ばれる時期に相当し,次第に家族よりも友人を重視するようになり,対人関係に敏感になったり,親や大人に対しては自立と依存の葛藤を感じる不安定な時期でもある(植村・桜井,2003)。メンタルヘルスの領域では「故意に自分の健康を害する症候群」(悩みに葛藤する中でて危険な行動や自らを傷つける自傷行為等をあえてしてしまう)の存在が危惧されている(松本,2009)。対策としては一般的な啓発的なアプローチはかえって「自分とは関係ない」話として遠ざけてしまう可能性が指摘がされている。
思春期の特性を踏まえた手法はいくつか開発されているが,教室で教師自身が実践できる必要がある。欧米では,この種の心理教育プログラムは,総称としてSEL(Social and Emotional Learning:社会性と情動の学習)と呼ばれ,実践が進められている。SEL-8S(小泉,2011)はSELの中の特定プログラムで,8つの社会的能力育成を目標とし,3学年で段階的に学習することができる。我々はさらにその短縮版SEL-8S Shortの開発を試みた。これは,中学生が悩んでいる時,一番助けを求めやすいのは「友人」である(石毛他,2005)ことに着目したワークショップ・プログラム(以下,WS)である。こうしたプログラムが有効に機能するためには,学校全体,保護者,地域が子どもたちを見守る環境を作っていくことも重要である。本稿では,そのWSを学校関係者(教育者・保護者)向けに実施し「学校と家庭でできること」について検討した。学習効果は「自己効力感」から分析し,WSの効果を検証したのでここに発表する。
2.研究の方法
首都圏のA市教育委員会の協力のもと,毎年開催されるPTA会長と教育関係者との研究会にてWSを実施した。参加者は公立小中学校PTA会長31名,小中学校長33名,教育委員会11名,合計75名である。参加者にはWS前後にアンケートに回答をしてもらい,その場で回収した(回収率94.5%)。
WSの内容
WSはⅠ相手の気持ちの理解,Ⅱソーシャルサポートの理解と把握,に主眼を置いて構成されている。Ⅰは子どもの態度・仕草・表情などから子どもの気持ちを推し量るワーク,Ⅱは受けたい援助と主な援助者をシートに書き示して可視化するワークである。
3.結果と考察
図1には「子どもたちに命や自己と他者の存在の大切さなどを伝えたい時,以下のことはどれくらい重要だと思いますか」についての回答割合を事前事後の変化がわかるように示した。啓発的な働きかけより,仲間作りの支援や大人と子どもの信頼関係づくりを重視する方向に変化が見られた。
図2には子どもへのサポートとしてできる事を具体的に聞くと,「自分が助けや支えになれる」「家族・職場に相談する」「家庭と学校で連携を取る」「相談機関と連携を取る」「子どもの気持ちを尊重する」「自分の気持ちを安定させる」の項目がWSの後に有意に高くなっていた。