The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PF

Thu. Aug 27, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PF016] 自己モニタリングの基準と安定性

学習理解判断基準の設定によって

浅井淳 (大同大学)

Keywords:メタ認知, モニタリング, 基準

背景・目的
学習理解に対する自己モニタリングの様相が調べられてきた結果,学習項目間の難度差が縮小して判断される傾向が判明している。その一因は多段階判定の回答値の分散が,習得度合いよりも大きいことと推測し,理解の判断方法について一つの検討と事例蓄積を図った。
方法
対象・内容
4年制大学生1・2年生が(A)外国語学習(英語)または(B)コンピュータ言語学習(C言語)に取り組み,学習内容の理解度を自己判定した。(B)プログラミングは初級で配列,ユーザー関数,ポインタなどの内容であった。
自己判定手順・集計
4,5,6件法で調査したが,最終合格基準の得点率60%とスケールが合致する6件法を用いて,実施の都合から(A)30週のうち3週ごとに10回,(B)15週毎回,授業と宿題の理解に対して回答してもらった結果を集計した。(A)では判断基準がなく,(B)では回答選択肢4が学習到達基準と記した。質問を宿題に付与して無報酬で授業時間外に自主的に回答してもらい,集計した。
結果
回答値分布
(A)判断基準がない回答値の分布をFigure1に示す。回答1,588件の選択肢ごとの割合である。到達度が比較的高くても選択肢3を選ぶ場合がかなりあり,標準偏差の平均値は0.51であった。
(B)判断基準がある回答値の分布をFigure2に示す。回答が299件と少ないが影響は小さいと推測された。標準偏差の平均値は0.45とやや小さく,学習到達基準を超える選択肢が選ばれやすかった。基準値4への集中が増すことなく,最上位選択肢6も選ばれやすくなった。
他指標との関連
授業理解と宿題理解の間の自己判定は相関係数0.90と高く一貫性があった。到達度試験結果との相関係数は(A)0.25,(B)0.46となった。
考 察
これまで学習期間中に自己判定する場合は判断基準を設定しないことがあり,学習内容や難度によらずFigure1に近い分布が多いためにフィードバックがかけにくかった。基準設定の結果,個人差が小さくなり,学習の進行とともに習得度合いよりも大きく自己判定値が低下するような変動が少なくなった。また,到達度試験との相関がある程度上がるため,個別の学習支援上にも学習者全体の学習進行にも利点がありそうである。
今後の課題
学習分野や学習者集団の特性,ならびに基準の明確さなど課題も多い。いくつかの学習心理面のモニタリングとの組み合わせなど,現場に活かせるようなさらなる調査・検討が必要である。