The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PF

Thu. Aug 27, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PF017] 理科の授業での話し合い参加の要因の検討(1)

学級・個人の特徴によって話し合い参加の要因は異なるのか

綾田栞1, 河口美穂2, 湯浅英幸3, 大久保智生4 (1.香川大学大学院, 2.香川大学大学院, 3.香川大学大学院, 4.香川大学)

Keywords:協同学習, 学習動機づけ, 公的自己意識

問題と目的
グループでの話し合いは,学校の授業で多くみられる活動の一つである。文部科学省(2011)では,学習の基盤となるのは言語に関する能力であるとし,能力の育成に関して,児童同士での話し合いの重要性を指摘している。児童の積極的な話し合いの参加に影響を及ぼす要因を明らかにすることは,児童の言語に関する能力の育成という観点からも重要な課題である。
先行研究においては,自己の認知のモニタリング(中川・梅本,2003)や教師の指導(出口,2001)の視点からグループでの話し合い参加に影響を及ぼす要因が明らかにされてきた。しかし,学級やグループは様々な特徴を持つ成員で構成されているため,積極的な話し合い参加に影響を及ぼす要因は,学級や児童のもつ特徴によって異なると考えられる。本研究ではグループでの話し合い参加の指標として発話頻度を取り上げ,話し合い参加に影響を及ぼす要因として学習動機づけ,教師の指導認知,メタ認知に注目する。また,他者の目が気になる場合には,動機づけやメタ認知が高くとも発話をしにくいと考えられるため,公的自己意識によって学級・個人の特徴を捉え,学級や個人のもつ特徴によって話し合い参加に影響を及ぼす要因が異なるのかについて検討する。
以上をふまえ,本研究ではグループでの話し合い参加に影響を及ぼす要因が学級や個人の特徴によって異なるのかについて検討することを目的とする。
方 法
対象者 小学校5年生の2学級の児童。授業観察日に欠席していた者,質問紙調査のデータに大きな欠損の見られた者を除いた70名。
質問紙調査 (1)理科に対する学習動機づけ:西村・河村・櫻井(2011)の作成した学習動機づけ尺度20項目を,理科の学習について尋ねるように教示文を変更して使用した。回答形式は4件法。(2)教師の指導認知:教師を対象とした出口(2002)のグループ学習に対する指導(教師用)17項目について児童がどのように認知しているか測定するため表現を一部変えて使用した。(3)理科の実験中のメタ認知:理科の観察・実験活動におけるメタ認知を測定する木下・松浦・角屋(2007)の小学生用質問紙14項目を使用した。回答形式は5件法。(4)公的自己意識:桜井(1992)の自己意識尺度のうち公的自己意識について尋ねる14項目を使用した。回答形式は4件法。
授業観察 5年生理科の単元「電流が生み出す力」の1時間を対象とした。ビデオカメラとICレコーダーによって授業時間中の発話を記録した。
授業の構成 授業時間中のグループでの話し合い場面について,本研究では話し合いの内容や目的によって参加の要因が異なると考え,「実験の予想を立てる話し合い」「実験中の話し合い」の2つに分けて分析を行なった。
グループでの話し合いにおける発話頻度 発話頻度の採取は岸・野嶋(2006)を参考に①文脈の話者の交代②同一話者の発話における発話機能の区切りを発話単位として,2名の大学院生によって行われた。カウントが一致しないものについては協議のうえ決定した。
結果と考察
学級ごとに公的自己意識得点の平均点を比較したところ,有意な差がみられた(t(68)=2.85, p<.01)。そこで公的自己意識得点の高い学級を「他者の目が気になる学級」,低い学級を「他者の目を気にしない学級」と命名し,以降の分析は学級ごとに行なうものとする。
学級ごとの話し合い参加に影響を及ぼす要因を明らかにするため,グループでの話し合いにおける発話頻度と理科に対する学習動機づけ,教師の指導認知,理科の実験中のメタ認知の相関分析を行なった。その結果,「他者の目が気になる学級」では「実験の予想を立てる話し合い」において発話頻度と内発的動機づけとの間に正の相関がみられた(r=.417, p<.05)。「他者の目を気にしない学級」においては,発話頻度と理科に対する学習動機づけ,教師の指導認知,理科の実験中のメタ認知との間に有意な相関は見られなかった。
以上の結果より,異なる学級において発話頻度に影響を及ぼす要因は一定ではないことが示唆された。「他者の目が気になる学級」では,他者の目を気にすることによる話しづらさから理科に対する内発的動機づけの高い児童が発話を多く行なっていることが考えられる。今後の課題として,公的自己意識以外の尺度によっても学級・個人の特徴を捉え,話し合い参加に影響を及ぼす要因が異なるか検討することが必要であると考えられる。