[PF021] 動機づけ調整方略と動機づけ変数の関連
Keywords:動機づけ調整方略, 動機づけ, 自己調整学習
問題と目的
学習を効果的に進めるためには,動機づけが重要となる。しかし,常に意欲的に学習に取り組むことは難しいため,自分自身で動機づけを調整することが重要となる。自己調整学習分野では,こういった動機づけを調整するやり方を,動機づけ調整方略として研究している(Wolters, 2003)。
さて,それでは,どのような動機づけ調整方略が,どのような動機づけ変数に影響するのであろうか。本研究では,代表的な動機づけ変数と考えられる,期待と価値を取り上げる(e.g., Pintrich & De Groot, 1990)。具体的には,自己効力感,内発的価値,その後の興味を用いる。
方 法
手続き
2014年4月から7月にかけて,心理学科目を履修した5つの大学の学生計229名(平均年齢19.95,SD=1.28; 男性94名,女性135名)に2回の縦断的な質問紙調査を行った。第1回目調査は4月(半期授業の1回目)に,第2回目調査は7月(半期授業の最後)に行われた。
調査内容
第1回目調査 動機づけ調整方略(37項目):梅本(2013)の尺度を修正して用いた。下位尺度として,自律的調整方略(自律的な方法でやる気を出す方略),協同方略(他者と協同することでやる気を出す方略),成績重視方略(成績を意識することでやる気を出す方略)が含まれた。
第2回目調査 自己効力感(6項目):中西(2004)の項目を用いた。内発的価値(6項目):伊藤(1996)の項目を修正して用いた。その後の興味(2項目):Hulman & Durik(2008)の項目を日本語訳して用いた(例:心理学の授業をもっと履修したい)。
結果と考察
尺度構成
3つの動機づけ調整方略,自己効力感,内発的価値については,先行研究に従ってα係数を算出した(α=.82~.95)。その後の興味ついては,2項目について相関係数を算出した(r=.68)。十分な値が得られたため,それぞれの下位尺度項目の加算平均を用いて尺度構成を行った。
重回帰分析
次に,3つの動機づけ調整方略を独立変数,自己効力感,内発的価値,その後の興味を従属変数とした重回帰分析を行った(Table 1)。その結果,自己効力感と内発的価値については,自律的調整方略が正の関連を,成績重視方略が負の関連を示した。自律的調整方略には,学習内容を自身の興味のあることと関連づけたり,この学習は将来に役立つかもしれないと考えたり,価値づけを行ってやる気を出すといった側面が含まれるため,特に内発的価値に関連を示したと考えられる。一方で,成績を意識して動機づけを高めようとすることで,逆に自己効力感や内発的価値が低くなる可能性が示された。
また,その後の興味ついては,自律的調整方略が正の関連を示した。これは,自律的に動機づけを調整して学習に取り組むことで,「もっと授業を履修したい」というように,特定の授業を超えてその後の学習につながることを示している。この結果は,大学生の積極的な学習を促すための1つの重要な示唆を与えるものである。
本研究において,協同方略は動機づけ変数との関連を示さなかった。協同方略は先行研究においても,学習行動との関連が見られていない(e.g., 梅本・田中, 2012)。今後は,協同方略が学習行動に関連する条件についても,検討する必要がある。
学習を効果的に進めるためには,動機づけが重要となる。しかし,常に意欲的に学習に取り組むことは難しいため,自分自身で動機づけを調整することが重要となる。自己調整学習分野では,こういった動機づけを調整するやり方を,動機づけ調整方略として研究している(Wolters, 2003)。
さて,それでは,どのような動機づけ調整方略が,どのような動機づけ変数に影響するのであろうか。本研究では,代表的な動機づけ変数と考えられる,期待と価値を取り上げる(e.g., Pintrich & De Groot, 1990)。具体的には,自己効力感,内発的価値,その後の興味を用いる。
方 法
手続き
2014年4月から7月にかけて,心理学科目を履修した5つの大学の学生計229名(平均年齢19.95,SD=1.28; 男性94名,女性135名)に2回の縦断的な質問紙調査を行った。第1回目調査は4月(半期授業の1回目)に,第2回目調査は7月(半期授業の最後)に行われた。
調査内容
第1回目調査 動機づけ調整方略(37項目):梅本(2013)の尺度を修正して用いた。下位尺度として,自律的調整方略(自律的な方法でやる気を出す方略),協同方略(他者と協同することでやる気を出す方略),成績重視方略(成績を意識することでやる気を出す方略)が含まれた。
第2回目調査 自己効力感(6項目):中西(2004)の項目を用いた。内発的価値(6項目):伊藤(1996)の項目を修正して用いた。その後の興味(2項目):Hulman & Durik(2008)の項目を日本語訳して用いた(例:心理学の授業をもっと履修したい)。
結果と考察
尺度構成
3つの動機づけ調整方略,自己効力感,内発的価値については,先行研究に従ってα係数を算出した(α=.82~.95)。その後の興味ついては,2項目について相関係数を算出した(r=.68)。十分な値が得られたため,それぞれの下位尺度項目の加算平均を用いて尺度構成を行った。
重回帰分析
次に,3つの動機づけ調整方略を独立変数,自己効力感,内発的価値,その後の興味を従属変数とした重回帰分析を行った(Table 1)。その結果,自己効力感と内発的価値については,自律的調整方略が正の関連を,成績重視方略が負の関連を示した。自律的調整方略には,学習内容を自身の興味のあることと関連づけたり,この学習は将来に役立つかもしれないと考えたり,価値づけを行ってやる気を出すといった側面が含まれるため,特に内発的価値に関連を示したと考えられる。一方で,成績を意識して動機づけを高めようとすることで,逆に自己効力感や内発的価値が低くなる可能性が示された。
また,その後の興味ついては,自律的調整方略が正の関連を示した。これは,自律的に動機づけを調整して学習に取り組むことで,「もっと授業を履修したい」というように,特定の授業を超えてその後の学習につながることを示している。この結果は,大学生の積極的な学習を促すための1つの重要な示唆を与えるものである。
本研究において,協同方略は動機づけ変数との関連を示さなかった。協同方略は先行研究においても,学習行動との関連が見られていない(e.g., 梅本・田中, 2012)。今後は,協同方略が学習行動に関連する条件についても,検討する必要がある。