[PF026] 行動として捉える先延ばしの探索的研究
参加者の抱く課題を用いた縦断的調査
キーワード:先延ばし, 縦断的調査, 課題価値
やらなければいけない課題の開始や完了を,不適応的に遅延することは,“先延ばし(procrastina- tion)”と呼ばれる。先行研究においては,先延ばしを大局的な計画の錯誤のようにとらえ,回顧による検討が多くなされている。そこで本研究では先延ばしを,課題の遂行期間に何度も生じうる行動(以下,先延ばし行動)であると仮定し,より短期的な視点からの検討を試みる。また,調査を実際の文脈に近づけ,先延ばしに関係する諸要因を検出するためには,縦断的に調査を行うことは有効な手続きだと考えられる。本研究の目的は,課題を与えられてから提出に至るまでの期間,同一の参加者を縦断的に調査し,先延ばしを行動単位で捉える妥当性を検討することである。
方 法
実験参加者 大学生27名。ただし欠損値がある場合は,分析から除外した。
課題 基礎心理学の授業中で,担当教員から課された読書感想文課題。提出は各回の授業開始時のみとされ,3週間後に提出期限が設定された。
手続き 担当教員が課題を教示した授業(Time1,T1)から締め切りにあたる3週間後まで,計3回の授業(順にTime2~4,T2~T4)の冒頭で,質問紙への回答を求めた。課題を提出した参加者は,以降の質問紙に回答しないよう教示した。Figure1は,T1~T4で用いた尺度を示す。
尺度 1.課題予定表(plan):課題完了までの手順を7段階に分割[(a)本を借りに行く(p1),(b)本を読み始める(p2),(c)本を読み終える(p3),(d)計画を練り始める(p4),(e)感想文を書き始める(p5),(f)感想文を書き終える(p6),(g)提出する(p7)],各段階の実施予定日の回答を求めた。また,課題に対する自信(自信p)に関する1項目へ3件法[(a)得意な課題である(b)どちらともいえない(c)苦手である],達成目標(目標pa)に関する1項目へ3件法[(a)高得点を目指す(b)人並み(c)提出できる形を目指す]で回答を求め,目標到達字数(目標pb)への回答を求めた。2.進捗報告表(record):planの項目を用いて,実際の日付,課題終えての回答を求めた(r1~r7,自信r,目標ra,目標rb)。T1で配布し,課題遂行期間中の随時記入の上,課題とともに回収した。3.課題への印象:課題に対して抱く印象に関する3項目(興味,重要性,難易度)へ,リッカート法の4件法で回答を求めた。4.必要性の自覚:先延ばし行動の意思決定に影響を与える要因として仮定し,その生起頻度に関する1項目へ4件法(「この1週間に“課題をやらなくてはいけない”という意識が生じた日数はどの程度ありましたか」と教示,(a)ほぼ毎日(b)5~4日(c)3~2日(d)ほとんどない)で回答を求めた。5.先延ばし行動(pb):先延ばし行動が生じたかに関する1項目を,2件法(「この1週間の間に“課題をやらなければいけない”と思った時に,課題の開始を一時的に遅らせたり,他のことを した体験はありましたかと教示,(a)はい(b)いいえ)で回答を求めた。
結果と考察
plan,recordの各項目は,T1からの経過日数に換算。予定と行動のズレを検討する項目として,record値からplan値を引いた差を分析に加えた。参加者を2つのパターンで2群に分け,差の検討を行ったものがTable1, Table2である。パターン1では,個人毎にpbの生起率(pbr)を算出(pbr={0,33,50,66,100})し,高群(pbr>50)と低群(pbr≦50)とした。パターン2では,提出の早かった群をT3群,締め切りに提出した群をT4群とした。
双方の結果より,先延ばし傾向を行動の生起頻度から判断することの妥当性が示唆された。また,課題の難易度を楽観視することで,先延ばしが生起する可能性が示唆された。
方 法
実験参加者 大学生27名。ただし欠損値がある場合は,分析から除外した。
課題 基礎心理学の授業中で,担当教員から課された読書感想文課題。提出は各回の授業開始時のみとされ,3週間後に提出期限が設定された。
手続き 担当教員が課題を教示した授業(Time1,T1)から締め切りにあたる3週間後まで,計3回の授業(順にTime2~4,T2~T4)の冒頭で,質問紙への回答を求めた。課題を提出した参加者は,以降の質問紙に回答しないよう教示した。Figure1は,T1~T4で用いた尺度を示す。
尺度 1.課題予定表(plan):課題完了までの手順を7段階に分割[(a)本を借りに行く(p1),(b)本を読み始める(p2),(c)本を読み終える(p3),(d)計画を練り始める(p4),(e)感想文を書き始める(p5),(f)感想文を書き終える(p6),(g)提出する(p7)],各段階の実施予定日の回答を求めた。また,課題に対する自信(自信p)に関する1項目へ3件法[(a)得意な課題である(b)どちらともいえない(c)苦手である],達成目標(目標pa)に関する1項目へ3件法[(a)高得点を目指す(b)人並み(c)提出できる形を目指す]で回答を求め,目標到達字数(目標pb)への回答を求めた。2.進捗報告表(record):planの項目を用いて,実際の日付,課題終えての回答を求めた(r1~r7,自信r,目標ra,目標rb)。T1で配布し,課題遂行期間中の随時記入の上,課題とともに回収した。3.課題への印象:課題に対して抱く印象に関する3項目(興味,重要性,難易度)へ,リッカート法の4件法で回答を求めた。4.必要性の自覚:先延ばし行動の意思決定に影響を与える要因として仮定し,その生起頻度に関する1項目へ4件法(「この1週間に“課題をやらなくてはいけない”という意識が生じた日数はどの程度ありましたか」と教示,(a)ほぼ毎日(b)5~4日(c)3~2日(d)ほとんどない)で回答を求めた。5.先延ばし行動(pb):先延ばし行動が生じたかに関する1項目を,2件法(「この1週間の間に“課題をやらなければいけない”と思った時に,課題の開始を一時的に遅らせたり,他のことを した体験はありましたかと教示,(a)はい(b)いいえ)で回答を求めた。
結果と考察
plan,recordの各項目は,T1からの経過日数に換算。予定と行動のズレを検討する項目として,record値からplan値を引いた差を分析に加えた。参加者を2つのパターンで2群に分け,差の検討を行ったものがTable1, Table2である。パターン1では,個人毎にpbの生起率(pbr)を算出(pbr={0,33,50,66,100})し,高群(pbr>50)と低群(pbr≦50)とした。パターン2では,提出の早かった群をT3群,締め切りに提出した群をT4群とした。
双方の結果より,先延ばし傾向を行動の生起頻度から判断することの妥当性が示唆された。また,課題の難易度を楽観視することで,先延ばしが生起する可能性が示唆された。