[PF030] 情報処理教育の実践的研究(12)
大学1年生に対するスマートフォン利用モラル教育の効果測定
キーワード:情報処理教育, スマートフォン, アクティブラーニング
目 的
スマートフォンが社会に普及し,大学でもほとんどの学生がスマートフォンを保有し,利用するようになった。一方で,ネット依存やSNSへの不適切な投稿など,スマートフォン普及に伴う問題も社会的関心を集めるようになった。
愛知みずほ大学では,情報処理の初年時教育の一環として,インターネット利用に関するリテラシー教育を行っている。この中で,スマートフォンの利用に関しても取り上げ,アクティブラーニング形式の授業で社会人としてのスマートフォンへの向き合い方について学生に考えさせている。この取組の教育効果を測定し,次年度以降の授業改善につなげることとした。
方 法
(1) 対象:愛知みずほ大学1年生(平成26年度)112名(有効回答数57名)
(2) 手続き:スマートフォン教育前後の授業時間内に,オンラインによるアンケート調査を行った。
(3) 調査内容:スマートフォン教育前の調査では,以下の3項目についてアンケートを行った。a. 学生の家庭環境に関する質問内容(8問,4択)b. 学生が中高生であったときの家庭内の携帯電話・スマートフォン利用に関するルールについての質問(15問,5択)c. 学生が将来中高生の子供を持った時に守らせたい携帯電話・スマートフォン利用に関するルール(15問,5択,b.と同じルールに関して質問)スマートフォン利用モラル教育後の調査では教育前調査のc.のみに関してアンケートを行った。
(4) 授業内容:授業前に携帯電話キャリアがインターネット上で配布している保護者・教員向けのスマートフォン利用モラルに関する教材を読ませた。
授業では学生が将来中高生の子供を持った時に家庭内で作る携帯電話・スマートフォン利用に関するルールの“取り決め書”をグループワークの中で作成させた。
結果と考察
(1) スマートフォン利用モラル教育の効果
教育効果の測定に関しては,学生が将来中高生の子供を持った時に守らせたい携帯電話・スマートフォン利用のルールに関する質問について,授業後にルール設定に前向きな回答に変わった率(以下“改善率”とする)で計測することとした。結果を図1に示す。事前アンケートでルール設定に消極的な回答が多かったルール(充電場所について,暗証番号の設定についてなど)についての改善率が高い。一方,改善率が低いルール(親からの連絡への返信など)は,事前アンケートでルール設定に関して積極的であったルールが多く,天井効果と考えられる。このことから,一定の教育効果があったと考えられる。
(2) 家庭環境と教育効果の相関
学生の家庭環境に関する質問に関しては,学生と家族との間のコミュニケーションの疎密をスコア化して教育効果との関連を調べた。スコアにより,家族とのコミュニケーションが密な学生の群(上位群)と疎な学生の群(下位群)を分けた上で改善率を比較したところ,下位群の改善率が顕著に高かった。結果を図2に示す。これは,事前アンケートにおいて下位群でルール設定に消極的な回答が多かったためと考えられる。これまで,スマートフォンの“適切な利用”に関してあまり関心のなかった学生に対し,授業を通して関心を喚起することができたと解釈できる。
スマートフォンが社会に普及し,大学でもほとんどの学生がスマートフォンを保有し,利用するようになった。一方で,ネット依存やSNSへの不適切な投稿など,スマートフォン普及に伴う問題も社会的関心を集めるようになった。
愛知みずほ大学では,情報処理の初年時教育の一環として,インターネット利用に関するリテラシー教育を行っている。この中で,スマートフォンの利用に関しても取り上げ,アクティブラーニング形式の授業で社会人としてのスマートフォンへの向き合い方について学生に考えさせている。この取組の教育効果を測定し,次年度以降の授業改善につなげることとした。
方 法
(1) 対象:愛知みずほ大学1年生(平成26年度)112名(有効回答数57名)
(2) 手続き:スマートフォン教育前後の授業時間内に,オンラインによるアンケート調査を行った。
(3) 調査内容:スマートフォン教育前の調査では,以下の3項目についてアンケートを行った。a. 学生の家庭環境に関する質問内容(8問,4択)b. 学生が中高生であったときの家庭内の携帯電話・スマートフォン利用に関するルールについての質問(15問,5択)c. 学生が将来中高生の子供を持った時に守らせたい携帯電話・スマートフォン利用に関するルール(15問,5択,b.と同じルールに関して質問)スマートフォン利用モラル教育後の調査では教育前調査のc.のみに関してアンケートを行った。
(4) 授業内容:授業前に携帯電話キャリアがインターネット上で配布している保護者・教員向けのスマートフォン利用モラルに関する教材を読ませた。
授業では学生が将来中高生の子供を持った時に家庭内で作る携帯電話・スマートフォン利用に関するルールの“取り決め書”をグループワークの中で作成させた。
結果と考察
(1) スマートフォン利用モラル教育の効果
教育効果の測定に関しては,学生が将来中高生の子供を持った時に守らせたい携帯電話・スマートフォン利用のルールに関する質問について,授業後にルール設定に前向きな回答に変わった率(以下“改善率”とする)で計測することとした。結果を図1に示す。事前アンケートでルール設定に消極的な回答が多かったルール(充電場所について,暗証番号の設定についてなど)についての改善率が高い。一方,改善率が低いルール(親からの連絡への返信など)は,事前アンケートでルール設定に関して積極的であったルールが多く,天井効果と考えられる。このことから,一定の教育効果があったと考えられる。
(2) 家庭環境と教育効果の相関
学生の家庭環境に関する質問に関しては,学生と家族との間のコミュニケーションの疎密をスコア化して教育効果との関連を調べた。スコアにより,家族とのコミュニケーションが密な学生の群(上位群)と疎な学生の群(下位群)を分けた上で改善率を比較したところ,下位群の改善率が顕著に高かった。結果を図2に示す。これは,事前アンケートにおいて下位群でルール設定に消極的な回答が多かったためと考えられる。これまで,スマートフォンの“適切な利用”に関してあまり関心のなかった学生に対し,授業を通して関心を喚起することができたと解釈できる。