[PF033] 児童の協働的な学びと深い理解を育む授業の分析4
教師のリヴォイシングの分類と機能の分析
Keywords:リヴォイシング, 算数授業, 授業分析
[目 的]
鈴木・藤田(2012),藤田・鈴木(2012)では,繰り下がりの操作を含んだ引き算学習を取り上げ,教師が直接的に教えるのではなく,子どもに思考錯誤させながら解決思考を促していく手立てをとる授業の中で,小学1年生の段階でも自分や他者の思考や理解をメタ認知し共有していく傾向が示唆された。鈴木・藤田(2013)では,メタ認知的談話が展開した背景要因を探るために,教科書通りの標準的な授業場面と構成的足場作りによるそれとを比較した。その結果,構成的足場作りによる授業では,教師が一方的に誘導するよりも,子どもを中心に解決思考を促す談話過程が展開していることが示唆された。実際に,子どもの理解を中心においた授業場面では,子どもの予想できない発言に対して,教師は学習目標に照らしてどう繋いでいくか即興的に判断しながら談話を構成していくスキルが求められる。しかしながら,その即興的スキルの内実はこれまで説明されていない。一般に教授–学習場面におけるリヴォイシングの機能には,学習者の場面参加と論理的解決思考を促す働きが確認されている(O'Connor & Michaels, 1993)が,子どもの発言に即興的に対応する授業場面ではその機能はさらに細分化して現れるのか,本研究は,その機能特性を一連の授業談話プロセスに位置づけながら分析を行う。
[方 法]
小学2年生に対し行われた「図形の概念形成(三角形,四角形)」の導入部分の授業を取り上げる。(第1著者による授業2014年11月実施,児童数28名)第1著者による授業は,1単位時間の内容を2時限使い[第1時限:図形の構成要素(辺,角)への注目と特徴の説明,第2時限:図形の定義の理解と活用]構成された。授業のプロトコル化は第2著者が担当し,教師と子どものプロトコルの内容確認および機能分析は著者全員で担当した。授業の前後に事前・事後テストを実施した。テスト項目は,①辺が直線であるか,②辺で囲まれているか③辺の本数④図形の種類を基準として図に表現する項目と,⑤辺(直線)についての言及,⑥辺の数,⑦辺で囲まれていることについて言語で説明する項目から構成された。
[分析方法]
授業中に交わされた教師と児童の発話のプロトコルを教授内容によって各授業を6つの下位ユニットに分類した。また,各ユニットにおける教師の発話数と教師のリヴォイシングの占める数と全体にしめる割合を求めた(Table1)。
[結果と考察]
教師のリヴォイシングについて以下の6つの基本的機能を見出すことができた。①確認:児童が発言した言葉を再度本人や全体に確認する(38%)。②考えの共有化:個人の中ではなく全体の課題として認識,または課題解決の方向を定める(13%)。③焦点化:児童の発言からより的確に概念を引き出す(15%)。④強調:児童の発言から課題を意識づける(11%)。⑤再考:児童の発言内容に基づき,再度考えを見直す機会を与える(6%)。⑥深める:概念をより理解するために根拠を明らかにする(34%)。以上より,教師のリヴォイシングは,その前後の談話の繋がりから,児童の概念理解を共有したり,課題解決を方向づけたり,話し合いの焦点を定めながら理解を深めるように機能していることが示唆された。
鈴木・藤田(2012),藤田・鈴木(2012)では,繰り下がりの操作を含んだ引き算学習を取り上げ,教師が直接的に教えるのではなく,子どもに思考錯誤させながら解決思考を促していく手立てをとる授業の中で,小学1年生の段階でも自分や他者の思考や理解をメタ認知し共有していく傾向が示唆された。鈴木・藤田(2013)では,メタ認知的談話が展開した背景要因を探るために,教科書通りの標準的な授業場面と構成的足場作りによるそれとを比較した。その結果,構成的足場作りによる授業では,教師が一方的に誘導するよりも,子どもを中心に解決思考を促す談話過程が展開していることが示唆された。実際に,子どもの理解を中心においた授業場面では,子どもの予想できない発言に対して,教師は学習目標に照らしてどう繋いでいくか即興的に判断しながら談話を構成していくスキルが求められる。しかしながら,その即興的スキルの内実はこれまで説明されていない。一般に教授–学習場面におけるリヴォイシングの機能には,学習者の場面参加と論理的解決思考を促す働きが確認されている(O'Connor & Michaels, 1993)が,子どもの発言に即興的に対応する授業場面ではその機能はさらに細分化して現れるのか,本研究は,その機能特性を一連の授業談話プロセスに位置づけながら分析を行う。
[方 法]
小学2年生に対し行われた「図形の概念形成(三角形,四角形)」の導入部分の授業を取り上げる。(第1著者による授業2014年11月実施,児童数28名)第1著者による授業は,1単位時間の内容を2時限使い[第1時限:図形の構成要素(辺,角)への注目と特徴の説明,第2時限:図形の定義の理解と活用]構成された。授業のプロトコル化は第2著者が担当し,教師と子どものプロトコルの内容確認および機能分析は著者全員で担当した。授業の前後に事前・事後テストを実施した。テスト項目は,①辺が直線であるか,②辺で囲まれているか③辺の本数④図形の種類を基準として図に表現する項目と,⑤辺(直線)についての言及,⑥辺の数,⑦辺で囲まれていることについて言語で説明する項目から構成された。
[分析方法]
授業中に交わされた教師と児童の発話のプロトコルを教授内容によって各授業を6つの下位ユニットに分類した。また,各ユニットにおける教師の発話数と教師のリヴォイシングの占める数と全体にしめる割合を求めた(Table1)。
[結果と考察]
教師のリヴォイシングについて以下の6つの基本的機能を見出すことができた。①確認:児童が発言した言葉を再度本人や全体に確認する(38%)。②考えの共有化:個人の中ではなく全体の課題として認識,または課題解決の方向を定める(13%)。③焦点化:児童の発言からより的確に概念を引き出す(15%)。④強調:児童の発言から課題を意識づける(11%)。⑤再考:児童の発言内容に基づき,再度考えを見直す機会を与える(6%)。⑥深める:概念をより理解するために根拠を明らかにする(34%)。以上より,教師のリヴォイシングは,その前後の談話の繋がりから,児童の概念理解を共有したり,課題解決を方向づけたり,話し合いの焦点を定めながら理解を深めるように機能していることが示唆された。