The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PG

Fri. Aug 28, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PF037] 幼少期の読み聞かせ体験とコミュニケーションとの関連

大学生への質問紙調査を通して

辰巳友唯1, 鈴木由美2 (1.聖徳大学, 2.聖徳大学)

Keywords:絵本, 読み聞かせ, コミュニケーション

問題と目的
今日,絵本の読み聞かせは家庭においても保育の現場においても日常的に行われており,子どもの発達における絵本の読み聞かせの重要性はこれまでも多く報告されている(大元・青柳,2012)。諸井(2011)は母親の読み聞かせに対する意識の研究から,母親は子どもの感性が育つ,想像力が豊かになる,親子の絆が深まるなど子どもの育ちや親子の情緒面,親子関係によい影響があると考えていることを明らかにしている。母親の読み聞かせの目的では子どもの空想力や文字・言葉の学習,意義では日常生活への興味・関心の育ちに意識があり,絵本が子どもの生活する力を育てるという保育観に結びついていることを示唆している。横山・水野(2008)は保育における集団に対する読み聞かせの意義として,保育者と子どもたちの安定した信頼関係の上に積み重ねられる共有体験(一体感)であることと絵本と子どもの生活が連続した読み聞かせであることを指摘している。保育者や母親と子どもの関係を検討している先行研究はあるが,子どもと関わっているであろう父親や祖母などの家族を対象にした研究は少なく,大人になってから幼少期を振り返った研究も少ない。本研究では,大学生を対象に幼少期の記憶を振り返ってもらうことから,幼少期の読み聞かせ体験と家族の関係が現在にどのような影響を与えているのかについて,明らかにしてみたい。
方 法
調査対象 A県4年制女子大学生109名(3年生86名,4年生23名)であった。
実施時期 20XX年7月
手続き 授業の休み時間に集団式質問紙調査を実施した。
質問紙 フェイスシート(主に誰に読んでもらったか,絵本を読んでもらった時間)とコミュニケーション・スキル尺度(藤本・大坊,2007):24項目,7段階評定を用いた。
結果・考察
読んでもらった人物を独立変数,コミュニケーション尺度を従属変数としたグループ間で1要因分散分析を行った結果,有意な差がみられた(F(5,103)=2.70, p<.05)。Tukey法による多重比較の結果,祖母に読んでもらった人は誰にも読んでもらわなかった人より,友好的な態度で相手に接することが明らかになった(Table 1)。
読んでもらった場所を独立変数,コミュニケーション尺度を従属変数としたグループ間で1要因分散分析を行った結果,有意な差がみられた(F(5,103)=1.91, F(5,103)=2.10,いずれもp<.10)。Tukey法による多重比較の結果,絵本を休日に読んでもらっている子どもは全く読んでもらっていない子どもより,友好的な態度で相手に接し,人間関係を良好な状態に維持するように心がけることが明らかになった(Table 2)。
本研究の目的は,幼少期の読み聞かせ体験と家族の関係が現在にどのような影響を与えているのかについて検討することであった。回想法で質問紙調査を行った結果,人物は祖母,場所は休日に絵本を読んでもらった大学生は他者受容が高く,コミュニケーションスキルが身についていることが示唆された。本調査は,祖母,休日共に人数が少なく,限定された結果になってしまったが,核家族が増えている今日,祖母と子どもの関係を示すことができた点は意義深いと考えられる。