日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PF

2015年8月27日(木) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PF048] 子育て支援活動が支援者に与えるもの

一時預かり活動に携わる「保育者」における変化の認識

角張慶子 (新潟県立大学)

キーワード:子育て支援, 支援者

問題と目的
昨今,ボランティアグループや有志の団体といった多様な地域資源による子育て支援活動が存在する。このような子育て支援活動の存在は,子育て家庭にとって重要な意味を持つ。一方で,これらの活動に従事することは,従事者にとってどのような意味を持つのかを検討することは,個人の発達の様相の一端を明らかにするとともに,これらの重要な地域資源が存続するための要因を検討することにもつながると考えられる。本研究では,一時預かり活動に携わる支援者は,活動が自身にどのような変化をもたらしていると認識しているのかについて明らかにすることを目的とする。
方 法
A県内で一時預かり活動(以下,保育とする)をする「保育グループ」に登録する「保育者」を対象とした質問紙調査。筆者所属機関の倫理委員会の審査承認済。配布数121名,回収数85名(回収率70.2%)。調査時期2011年10月。質問紙は,保育に関する複数の質問からなるが,本研究は「保育に従事するようになっての自身の変化の有無とその内容」について分析と考察を行う。
結果と考察
1.基本的属性
年代:30代8名(9.4%)40代26名(30.6%)50代21名(24.7%)60代26名(30.6%)70代4名(4.7%),性別:女性83名(97.6%)男性2名(2.4%),子育て経験:あり83名(97.6%)なし1名(1.2%),免許資格:なし:56名(65.9%)あり29名(34.1%),活動年数:1年12名(14.1%)1年超~5年未満25名(29.4%)5年以上~10年未満14名(16.5%)10年以上~15年未満17名(20.0%)15年以上20年未満11名(12.9%)20年以上5名(5.9%)。
2.保育者自身の変化(発達)の認識
保育に携わることによる自身の変化の有無については,変化の認識あり68名(80.0%)認識なし7名(8.2%)無回答10名(11.8%)であり,保育者の8割は保育に携わることで何らかの変化の認識があることが明らかになった。変化の内容について自由記述をKJ 法を用いて分類を行った(Table1)。結果,以下の変化の認識が認められた。(1)保育を続ける中で心がけが変化していく「保育時の意識」の変化,(2)子どもに自然と目が行く・母親への寄り添いが大事だと気付くなどいう「子ども・子育てへの興味関心」「現代の子育てへの理解」といった子どもや子育てに関する興味関心・理解の深化,(3)様々な側面における「自分の価値観・特徴・感情」の変化に対する認識,自分の子どもへの接し方が変わったなど「自分の子育て」における変化の認識,といった自分自身の価値観や行動における変化。このように子育て支援活動(保育)に携わることは,他者に支援を与えるのみならず,支援者自身にも多岐にわたる変化を与えることが明らかになった。