[PF054] 子育ての動機づけと育児行動
Keywords:動機づけ, 育児行動, 母親
【問題と目的】
日常生活には,比較的無意識的・習慣的に繰り返される行動がある。その一つが子育てである。動機づけの概念から捉えた場合,子育ての動機づけは「見返り期待」「内的喜び」「社会的当為」の下位概念から構成される(中島ほか, 2015)。本研究では,子育ての動機づけが実際に親の行動にどのように影響をするのか,子育ての動機づけと育児行動との関連性を検討する。
【方 法】
⑴ 対象者と手続き 4歳以下の子どもをもつ母親606名(平均年齢34.74,21-49)。幼稚園等を通じて質問紙を配布し349名から回収を得た。回答に不備がある者と母親以外の回答者を除く311名を対象とした。
⑵ 調査内容 ①子育ての動機づけ:中島ほか(2015)の「子育て動機づけ尺度」22項目を使用した。「見返り期待」(ex“老後の面倒をみてもらいたいから”)9項目,「内的喜び」(ex“子どもに接していることが楽しいから”)8項目,「社会的当為」(ex“生んだ責任があるから”)5項目から構成される。②育児行動:橘ほか(2008),Bronte-Tinkew et al.(2007),Paulson et al(2006)等を参考に,「世話」(ex.“子どものトイレやおむつの世話をする”)6項目,「相互作用」(ex.“子どもの遊び相手をする”)4項目を作成した。平均的な一日に行う時間と,全体を100%として母親自身が行う割合(%)を尋ねた。
【結果と考察】
1.対象児の年齢と母親の就労状況による違い
児の年齢や母親の就労状況によって育児行動量は異なるかどうか,二要因の分散分析(年齢高・低群×有職・専業主婦)を行った。児が3歳以上を年齢高群(152名),3歳未満を低群(159名)とした。その結果,育児行動の世話時間に対して年齢および就労の主効果が有意であった(年齢:F (1, 229)=7.86,p<.01;就労:F (1, 229)=3.98,p<.05)。相互作用時間に対しても同様の結果であった(児の年齢:F (1,236)=25.20,p<.001;就労:F (1, 236)=5.72,p<.05)。児の年齢低群は高群より,また,専業主婦群は有職群よりも育児行動時間が長いといえる。育児行動の世話割合と相互作用割合に対しては,それぞれ就労の主効果が有意であった(F (1, 218)=6.16,p<.05;F (1, 219)=14.34,p<.001)。有職群よりも専業主婦群の方が育児行動を担う割合が高いといえる。
子育ての動機づけに対する児の年齢と就労の違いを調べたところ,「見返り期待」に対しては児の年齢,就労の交互作用のみが有意であった。単純主効果の検定の結果,専業主婦群において児の年齢高群よりも低群の方が平均値は有意に高く(F (1, 251)=4.06,p<.05),また,児の年齢低群において専業主婦群は有職群に比べて平均値が高かった(F (1, 251)=8.49,p<.001)。児が低年齢であり専業主婦の場合は「見返り期待」が高いといえる。「内的喜び」に対しては児の年齢の主効果がみられ(F (1, 251)=6.16,p<.05),児が低年齢の方が「内的喜び」は高かった。「社会的当為」に対しては就労の主効果の有意傾向がみられ(F (1, 252)=3.55,p<.10),専業主婦群の方が「社会的当為」は高い傾向がみられた。
2.子育ての動機づけと育児行動との関連
対象児の年齢と母親の職業の有無を制御した上で,子育ての動機づけと育児行動の相関係数を調べた(Table1)。その結果,「内的喜び」が高いほど相互作用時間が長かった。また,「社会的当為」が高いほど世話割合が高かった。「見返り期待」は育児行動と関連しなかった。「内的喜び」が高い親は,遊びや散歩などを通して日常生活の中で子どもと多く関わり,「社会的当為」が高い親は,食事や排泄,入浴などの世話行動を多く担っているといえる
日常生活には,比較的無意識的・習慣的に繰り返される行動がある。その一つが子育てである。動機づけの概念から捉えた場合,子育ての動機づけは「見返り期待」「内的喜び」「社会的当為」の下位概念から構成される(中島ほか, 2015)。本研究では,子育ての動機づけが実際に親の行動にどのように影響をするのか,子育ての動機づけと育児行動との関連性を検討する。
【方 法】
⑴ 対象者と手続き 4歳以下の子どもをもつ母親606名(平均年齢34.74,21-49)。幼稚園等を通じて質問紙を配布し349名から回収を得た。回答に不備がある者と母親以外の回答者を除く311名を対象とした。
⑵ 調査内容 ①子育ての動機づけ:中島ほか(2015)の「子育て動機づけ尺度」22項目を使用した。「見返り期待」(ex“老後の面倒をみてもらいたいから”)9項目,「内的喜び」(ex“子どもに接していることが楽しいから”)8項目,「社会的当為」(ex“生んだ責任があるから”)5項目から構成される。②育児行動:橘ほか(2008),Bronte-Tinkew et al.(2007),Paulson et al(2006)等を参考に,「世話」(ex.“子どものトイレやおむつの世話をする”)6項目,「相互作用」(ex.“子どもの遊び相手をする”)4項目を作成した。平均的な一日に行う時間と,全体を100%として母親自身が行う割合(%)を尋ねた。
【結果と考察】
1.対象児の年齢と母親の就労状況による違い
児の年齢や母親の就労状況によって育児行動量は異なるかどうか,二要因の分散分析(年齢高・低群×有職・専業主婦)を行った。児が3歳以上を年齢高群(152名),3歳未満を低群(159名)とした。その結果,育児行動の世話時間に対して年齢および就労の主効果が有意であった(年齢:F (1, 229)=7.86,p<.01;就労:F (1, 229)=3.98,p<.05)。相互作用時間に対しても同様の結果であった(児の年齢:F (1,236)=25.20,p<.001;就労:F (1, 236)=5.72,p<.05)。児の年齢低群は高群より,また,専業主婦群は有職群よりも育児行動時間が長いといえる。育児行動の世話割合と相互作用割合に対しては,それぞれ就労の主効果が有意であった(F (1, 218)=6.16,p<.05;F (1, 219)=14.34,p<.001)。有職群よりも専業主婦群の方が育児行動を担う割合が高いといえる。
子育ての動機づけに対する児の年齢と就労の違いを調べたところ,「見返り期待」に対しては児の年齢,就労の交互作用のみが有意であった。単純主効果の検定の結果,専業主婦群において児の年齢高群よりも低群の方が平均値は有意に高く(F (1, 251)=4.06,p<.05),また,児の年齢低群において専業主婦群は有職群に比べて平均値が高かった(F (1, 251)=8.49,p<.001)。児が低年齢であり専業主婦の場合は「見返り期待」が高いといえる。「内的喜び」に対しては児の年齢の主効果がみられ(F (1, 251)=6.16,p<.05),児が低年齢の方が「内的喜び」は高かった。「社会的当為」に対しては就労の主効果の有意傾向がみられ(F (1, 252)=3.55,p<.10),専業主婦群の方が「社会的当為」は高い傾向がみられた。
2.子育ての動機づけと育児行動との関連
対象児の年齢と母親の職業の有無を制御した上で,子育ての動機づけと育児行動の相関係数を調べた(Table1)。その結果,「内的喜び」が高いほど相互作用時間が長かった。また,「社会的当為」が高いほど世話割合が高かった。「見返り期待」は育児行動と関連しなかった。「内的喜び」が高い親は,遊びや散歩などを通して日常生活の中で子どもと多く関わり,「社会的当為」が高い親は,食事や排泄,入浴などの世話行動を多く担っているといえる