[PF055] 大学生の保育者効力感の規定要因
教育実習前の効力感と社会的スキルの影響
キーワード:自己効力感, 保育者, 教育実習
問題と目的
小林(2014,教心56回)は,幼稚園の教育実習の前後で,領域「人間関係」に対する学生の保育者効力感が上昇するかを検討した。
本研究では,小林(2014)のデータを用いて,教育実習後の学生の保育者効力感の規定要因を検討する。具体的には,教育実習前に抱いていた保育者効力感と,子どもとの関わりのスキル・大人との関わりのスキルを説明変数に用い,教育実習後の保育者効力感を目的変数として,どのような影響がみられるかを検討する。
方 法
対象者 X大学で幼稚園の教育実習または観察実習を行った学生32名。
手続き 教育実習の事前・事後に質問紙調査を実施した。調査内容は以下の通りである。
①フェイス項目:学年,②人間関係に関する保育者効力感(西山,2006),③子どもとの関わりのスキル(予備調査により作成),④大人との関わりのスキル(Kiss18:菊池・堀毛,1994)の4測度。
倫理的配慮 調査への協力は任意であることを説明した。また,事前・事後の質問紙を対応させるために学籍番号の記入欄を設けるが,2回分のデータを対応させた後は学籍番号欄を裁断し,個人を特定しないことを説明した。
調査時期 20XX年7月~10月。
結 果
事後の保育者効力感の5つの下位尺度のそれぞれに対して,階層的重回帰分析を実施した。まず,事前の保育者効力感の5つの尺度から事後の保育者効力感に対する重回帰分析を行い,回帰係数が有意または有意傾向になったものだけを説明変数として使用した。
次に,第1ステップとしてこれらの保育者効力感を説明変数に投入し,第2ステップでは子どもとの関わりのスキルと大人との関わりのスキルの尺度を説明変数に投入し,ステップワイズ法で変数の選択を行った。なお,いずれの説明変数に関しても多重共線性は生じなかった。
保育者効力感の尺度Ⅰ~尺度Ⅴに対する重回帰分析の結果をTable 1~5に示す。Table 1~5を検討すると,概ね事前の効力感の第Ⅰ尺度(人とかかわる基盤を作る),第Ⅱ尺度(発達的視点で子どもを捉える)の得点が高い者ほど事後の効力感が高くなる傾向にあり,事前の尺度Ⅴ(関係性の広がりを支える)の得点が低かった者ほど,事後の効力感が高くなる傾向にあった。
またTable 1にみられるように,尺度Ⅰに対しては,子どもとの関わりのスキルのうち「子どもと接する心構え・態度」の得点の高い者ほど効力感が高まることが示された。Table 2からは,尺度Ⅱに対してKiss-18の「ストレス処理のスキル」が高い者ほど効力感が高まることが示された。Table 4からは,尺度Ⅳに対してKiss-18の「高度のスキル」が高い者ほど効力感が高まることが示された。
Table 3・5からわかるように,尺度Ⅲと尺度Ⅴに対しては,教育実習前の社会的スキルは影響を及ぼしていなかった。
考 察
本研究では,教育実習前に抱いていた保育者効力感が,実習後の効力感に影響を及ぼしていることが確認された。しかし,事前の尺度Ⅴ(関係性の広がりを支える)の得点が低い者ほど,教育実習後の効力感が高まっていた。この尺度は,「子どもが地域の人々・高齢者・外国人などとかかわり,共生することを指導できる」という効力感である。この意識が低かった学生は,教育実習中に子どもと関わることに専念していたのかも知れない。この点に関しては今後のさらなる検討が必要である。
また,実習前の社会的スキルの下位尺度のいくつかが,保育者効力感に影響を及ぼしていることも示された。実習に望む前に,学生の社会的スキルを高める教育内容の検討も必要であろう。
小林(2014,教心56回)は,幼稚園の教育実習の前後で,領域「人間関係」に対する学生の保育者効力感が上昇するかを検討した。
本研究では,小林(2014)のデータを用いて,教育実習後の学生の保育者効力感の規定要因を検討する。具体的には,教育実習前に抱いていた保育者効力感と,子どもとの関わりのスキル・大人との関わりのスキルを説明変数に用い,教育実習後の保育者効力感を目的変数として,どのような影響がみられるかを検討する。
方 法
対象者 X大学で幼稚園の教育実習または観察実習を行った学生32名。
手続き 教育実習の事前・事後に質問紙調査を実施した。調査内容は以下の通りである。
①フェイス項目:学年,②人間関係に関する保育者効力感(西山,2006),③子どもとの関わりのスキル(予備調査により作成),④大人との関わりのスキル(Kiss18:菊池・堀毛,1994)の4測度。
倫理的配慮 調査への協力は任意であることを説明した。また,事前・事後の質問紙を対応させるために学籍番号の記入欄を設けるが,2回分のデータを対応させた後は学籍番号欄を裁断し,個人を特定しないことを説明した。
調査時期 20XX年7月~10月。
結 果
事後の保育者効力感の5つの下位尺度のそれぞれに対して,階層的重回帰分析を実施した。まず,事前の保育者効力感の5つの尺度から事後の保育者効力感に対する重回帰分析を行い,回帰係数が有意または有意傾向になったものだけを説明変数として使用した。
次に,第1ステップとしてこれらの保育者効力感を説明変数に投入し,第2ステップでは子どもとの関わりのスキルと大人との関わりのスキルの尺度を説明変数に投入し,ステップワイズ法で変数の選択を行った。なお,いずれの説明変数に関しても多重共線性は生じなかった。
保育者効力感の尺度Ⅰ~尺度Ⅴに対する重回帰分析の結果をTable 1~5に示す。Table 1~5を検討すると,概ね事前の効力感の第Ⅰ尺度(人とかかわる基盤を作る),第Ⅱ尺度(発達的視点で子どもを捉える)の得点が高い者ほど事後の効力感が高くなる傾向にあり,事前の尺度Ⅴ(関係性の広がりを支える)の得点が低かった者ほど,事後の効力感が高くなる傾向にあった。
またTable 1にみられるように,尺度Ⅰに対しては,子どもとの関わりのスキルのうち「子どもと接する心構え・態度」の得点の高い者ほど効力感が高まることが示された。Table 2からは,尺度Ⅱに対してKiss-18の「ストレス処理のスキル」が高い者ほど効力感が高まることが示された。Table 4からは,尺度Ⅳに対してKiss-18の「高度のスキル」が高い者ほど効力感が高まることが示された。
Table 3・5からわかるように,尺度Ⅲと尺度Ⅴに対しては,教育実習前の社会的スキルは影響を及ぼしていなかった。
考 察
本研究では,教育実習前に抱いていた保育者効力感が,実習後の効力感に影響を及ぼしていることが確認された。しかし,事前の尺度Ⅴ(関係性の広がりを支える)の得点が低い者ほど,教育実習後の効力感が高まっていた。この尺度は,「子どもが地域の人々・高齢者・外国人などとかかわり,共生することを指導できる」という効力感である。この意識が低かった学生は,教育実習中に子どもと関わることに専念していたのかも知れない。この点に関しては今後のさらなる検討が必要である。
また,実習前の社会的スキルの下位尺度のいくつかが,保育者効力感に影響を及ぼしていることも示された。実習に望む前に,学生の社会的スキルを高める教育内容の検討も必要であろう。