[PF057] ボランティア活動による大学生の心理発達
質的分析によるカテゴリーの生成
Keywords:ボランティア活動, 大学生, 心理発達
目 的
近年,大学生によるボランティア活動が活発化している。ボランティアサークルなどに所属し,自発的にボランティア活動にたずさわる学生もいれば,ボランティア活動が大学のカリキュラムに組み込まれていることから,単位取得上の必要に迫られてボランティア活動に関わる学生もいるであろう。いずれにしても,大学教育の場において,ボランティア活動はサークルやアルバイトと並んで日常的な活動であるといってよいであろう。
このようなボランティア活動は,大学生の心理発達にどのような影響を与えるのであろうか。ボランティア活動による大学生の心理発達に関する研究としては,たとえば,自己評価,自己効力感や対人スキルがボランティア体験によって上昇することが明らかになっている(日潟ら, 2008)。その一方で,「ボランティア活動への動機づけとの関連を検討したものはみられる」ものの,「ボランティアが参加者にとってどのような意味があるのか検討した研究」や「自己の発達・変化などを検討した研究は意外なほど少ない」ことが課題となっている(佐藤・松田, 2009)。
以上の点に鑑み,本研究では,(1)大学生自身がボランティア活動による自身の心理発達をどのように捉えているか,そして,(2)発達を促進する要因をどのように捉えているか,の2つの点について明らかにすることを目的とする。
方 法
ボランティア活動を体験したことのある大学生12名に半構造化面接による調査を行った。調査の内容は,「ボランティア活動の内容」「ボランティア活動を行うことになった経緯」「ボランティア活動をとおしての自身や周囲の変化」「ボランティア活動を行ってよかったこと・いやだったこと」であった。
面接の所要時間は,45~60分であった。面接の結果得られた逐語データから,ボランティア体験による自分自身の心理発達について言及している部分を抜き出し,その内容について,カテゴリーの生成を行った。
結 果
(1) 大学生のボランティア体験による心理発達のカテゴリー
大学生のボランティア体験による心理発達のカテゴリーとして,①キャリア発達②個性化③社会化④世界観の発達が生成された。以下,これらのカテゴリーについてサブカテゴリーを併記しつつ呈示する。
①キャリア発達
ボランティア活動は,大学生にとって,自身のキャリア発達を促進するものとして捉えられていることが明らかになった。サブカテゴリーとしては,「職業観の深まり」「希望進路に関する知識の獲得」「希望進路に関する技能の獲得」が生成された。
②個性化
ボランティア活動は,大学生の個性化を促進するものとして体験されうることが明らかになった。サブカテゴリーとしては,「自己理解」「自己効力感の向上」「主体性の獲得」「意欲の向上」のカテゴリーが生成された。
③社会化
ボランティア活動は,大学生の社会化を促進するものとして体験されうることが明らかになった。サブカテゴリーは,「対人関係能力の向上」「対人関係への意欲の向上」「人間関係の広がり」「他者理解」であった。
④世界観の発達
大学生は,ボランティア活動が,自身の世界観の発達をもたらすことを認識していることが明らかとなった。サブカテゴリーとして,「人間観の深まり」「人生観の深まり」「世間知の獲得」が生成された。
(2) 心理発達をもたらす要因
(1)のような発達をもたらす要因について,(1)と同様にカテゴリーを生成した。具体的には,「ボランティア体験の場」「社会的承認」「人との出会い」「学生自身の学ぶ意欲」の4つのカテゴリーが生成された。
考 察
ボランティア活動が,大学生にとって,自身の心理発達を促すものとして認識されることが明らかになった。また,発達を促す要因として,「ボランティア体験の場」「社会的承認」「人との出会い」「学生自身の学ぶ意欲」が挙げられた。これらの知見は,大学などが大学生のボランティア活動をコーディネートする際,そのボランティア活動を大学生にとってより意義深いものとするうえで,大変示唆に富むものであるといえるだろう。
近年,大学生によるボランティア活動が活発化している。ボランティアサークルなどに所属し,自発的にボランティア活動にたずさわる学生もいれば,ボランティア活動が大学のカリキュラムに組み込まれていることから,単位取得上の必要に迫られてボランティア活動に関わる学生もいるであろう。いずれにしても,大学教育の場において,ボランティア活動はサークルやアルバイトと並んで日常的な活動であるといってよいであろう。
このようなボランティア活動は,大学生の心理発達にどのような影響を与えるのであろうか。ボランティア活動による大学生の心理発達に関する研究としては,たとえば,自己評価,自己効力感や対人スキルがボランティア体験によって上昇することが明らかになっている(日潟ら, 2008)。その一方で,「ボランティア活動への動機づけとの関連を検討したものはみられる」ものの,「ボランティアが参加者にとってどのような意味があるのか検討した研究」や「自己の発達・変化などを検討した研究は意外なほど少ない」ことが課題となっている(佐藤・松田, 2009)。
以上の点に鑑み,本研究では,(1)大学生自身がボランティア活動による自身の心理発達をどのように捉えているか,そして,(2)発達を促進する要因をどのように捉えているか,の2つの点について明らかにすることを目的とする。
方 法
ボランティア活動を体験したことのある大学生12名に半構造化面接による調査を行った。調査の内容は,「ボランティア活動の内容」「ボランティア活動を行うことになった経緯」「ボランティア活動をとおしての自身や周囲の変化」「ボランティア活動を行ってよかったこと・いやだったこと」であった。
面接の所要時間は,45~60分であった。面接の結果得られた逐語データから,ボランティア体験による自分自身の心理発達について言及している部分を抜き出し,その内容について,カテゴリーの生成を行った。
結 果
(1) 大学生のボランティア体験による心理発達のカテゴリー
大学生のボランティア体験による心理発達のカテゴリーとして,①キャリア発達②個性化③社会化④世界観の発達が生成された。以下,これらのカテゴリーについてサブカテゴリーを併記しつつ呈示する。
①キャリア発達
ボランティア活動は,大学生にとって,自身のキャリア発達を促進するものとして捉えられていることが明らかになった。サブカテゴリーとしては,「職業観の深まり」「希望進路に関する知識の獲得」「希望進路に関する技能の獲得」が生成された。
②個性化
ボランティア活動は,大学生の個性化を促進するものとして体験されうることが明らかになった。サブカテゴリーとしては,「自己理解」「自己効力感の向上」「主体性の獲得」「意欲の向上」のカテゴリーが生成された。
③社会化
ボランティア活動は,大学生の社会化を促進するものとして体験されうることが明らかになった。サブカテゴリーは,「対人関係能力の向上」「対人関係への意欲の向上」「人間関係の広がり」「他者理解」であった。
④世界観の発達
大学生は,ボランティア活動が,自身の世界観の発達をもたらすことを認識していることが明らかとなった。サブカテゴリーとして,「人間観の深まり」「人生観の深まり」「世間知の獲得」が生成された。
(2) 心理発達をもたらす要因
(1)のような発達をもたらす要因について,(1)と同様にカテゴリーを生成した。具体的には,「ボランティア体験の場」「社会的承認」「人との出会い」「学生自身の学ぶ意欲」の4つのカテゴリーが生成された。
考 察
ボランティア活動が,大学生にとって,自身の心理発達を促すものとして認識されることが明らかになった。また,発達を促す要因として,「ボランティア体験の場」「社会的承認」「人との出会い」「学生自身の学ぶ意欲」が挙げられた。これらの知見は,大学などが大学生のボランティア活動をコーディネートする際,そのボランティア活動を大学生にとってより意義深いものとするうえで,大変示唆に富むものであるといえるだろう。