日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PF

2015年8月27日(木) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PF059] 幼児教育の評価指標の検討

カリフォルニア州DRDPと幼稚園教育要領領域「人間関係」の比較検討

西坂小百合1, 岩立京子2, 樟本千里3 (1.共立女子大学, 2.東京学芸大学, 3.岡山県立大学)

キーワード:幼児教育, 評価

【問題と目的】
近年,幼児教育において子どもたちがどのように育っているか,そのねらいがどこまで達成されているかの説明が求められている。アメリカ,カリフォルニア州のDRDPシステムは子どもの育ちを理解する指標であり,記録を中心としたエビデンスに基づいて教師が評定するという特徴を持つ。
DRDPの幼児版であるDRDP-PSはプレスクール児を対象としており,その対象年齢は3-4歳程度である。そこには7つの領域があり,本研究においては,日本の幼稚園教育要領の領域「人間関係」とそれに相当する「Self and social development」の領域との対応を検討する。
【方 法】
DRDP-PSの7領域の中からSelf and social development (SSD)の領域の12指標を用いる。指標の日本語訳を行ったうえで,幼稚園教育要領の領域「人間関係」の「内容」と「内容の取扱い」部分から対応する記述を抜き出し,検討する。
【結果と考察】
⑴ Self and social development (SSD)について
本領域は12の指標から構成される(Table1参照)。各指標には4つの段階(探索・発展・確立・統合)が設定されている(Table2参照)。
⑵ 領域「人間関係」との対応の検討
12の指標のうち,「1自己の同一性・自己認識」を除く11の指標については,領域「人間関係」の「内容」や「内容の取扱い」との対応が示された。例えば「指標8 仲間との協同的な遊び」については,内容「⑺友達のよさに気付き,一緒に活動する楽しさを味わう。」,「⑻友達と楽しく活動する中で,共通の目的を見いだし,工夫したり,協力したりなどする。」,及び内容の取扱い「⑶幼児が互いにかかわりを深め,協同して遊ぶようになるため,自ら行動する力を育てるようにするとともに,他の幼児と試行錯誤しながら活動を展開する楽しさや共通の目的が実現する喜びを味わうことができるようにすること。」などの対応が考えられる。一方でDRDPにおいて設定されている4つの段階(探索・発展・確立・統合)に示されるような発達の方向性は幼稚園教育要領には明示的には示されていない。こうした発達の方向性を段階的に示すことが今後求められてくると考えられる。また,Self and social developmentに示される12の指標は必ずしも領域「人間関係」と合致しているわけではないこと,指標の設定においては「ごっこ遊び」など具体的なものから抽象的なものまであることから,指標のレベルの検討が必要であろう。
付 記
本研究は科研費 26381069 の助成を受けて行ったものである。