日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PF

2015年8月27日(木) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PF060] 幼児教育の評価指標の検討

カリフォルニア州DRDPと幼稚園教育要領領域「言葉」の比較検討

樟本千里1, 西坂小百合2, 岩立京子3 (1.岡山県立大学, 2.共立女子大学, 3.東京学芸大学)

キーワード:幼児教育, 教育評価, 言葉

【問題と目的】
教育課程の編成には,「子どもの発達」の視点は重要である。そのためには,子どもを理解する,すなわち適切に評価することが重要である。適切な評価には適切な目標が必要であるが,現在の幼児教育においては,目標と教育内容と結果が理解しづらい。そこで,記録を中心としたエビデンスに基づいて教師が評定する教育指標のひとつである,米国,加州のDRDPシステムから,幼児版であるDRDP-PSを取り上げ日本の幼児教育を捉えなおすことを本研究の目的とした。特に,幼稚園教育要領の領域「言葉」をとりあげて検討を行うこととする。DRDP-PSの中には言葉に関連する領域として2領域があるが,その中で基礎的な言葉と読み書きの能力におけるすべての子どもたちの評価を行う領域である「Language and Literacy Development(LLD)」をとりあげ,幼稚園教育要領の領域「言葉」との対応を検討する。
【方 法】
DRDP-PSの中からLLDの領域の10指標を用いる。指標の日本語訳を行ったうえで,幼稚園教育要領の領域「言葉」の「内容」と「内容の取扱い」部分から対応する記述を抜き出し,検討する。
【結果と考察】
⑴Language and Literacy Developmentについて:本領域は10の指標から構成される(Table1)。各指標には4つの段階(探索・発展・確立・統合)が設定されている(Table 2)。
⑵領域「言葉」との対応の検討:10の指標のうち,「7 活字に対する概念」を除く9の指標については,部分的に領域「言葉」の「内容」や「内容の取扱い」と重なる。例えば「指標3 言語を通した自己表現」については,内容「⑵したり,見たり,聞いたり,感じたり,考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現する。」,「⑶したいこと,してほしいことを言葉で表現したり,分からないことを尋ねたりする。」,「⑸生活の中で必要な言葉が分かり,使う。」と重なる。その一方でDRDPにおいては詳細な指標が設定されていると言える。例えば,幼稚園教育要領が,「自分なりに言葉で表現する」「尋ねる」「使う」と言う内容は,DRDPで設定されている4つの段階(探索・発展・確立・統合)のいずれにも当てはまる。言いかえれば,どの水準で評価されているのか,年齢にふさわしい評価なのかは分かりづらいと言える。また,LLDと領域「言葉」の大きな違いは,読むことと書くことについて,LLDでは話すことと同様に取り扱われているのに対して,領域「言葉」では,あまり取り上げられていないと言える。幼児教育における読み書きの内容についても,今後一考する必要があると思われる。