The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PF

Thu. Aug 27, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PF063] アイデンティティ・ステイタスに及ぼす学生生活充実感の影響

時間的展望との関連の検討

吉中淳1, 福山瑞紀#2 (1.弘前大学, 2.(株)レオパレス21)

Keywords:アイデンティティ・ステイタス, 学生生活充実感, 時間的展望

問題と目的
自我同一性の達成は青年期の発達課題であり,Marciaは危機(進路決定について真剣に悩んだ経験)と自己投入(特定の対象に対する努力の傾注)という二つの基準でその達成状況である自我同一性(アイデンティティ・ステイタス)を分類した。仲野・壺井((2008)は,学生生活の充実感が自我同一性に影響を及ぼすと述べ,都築(1993)は時間的展望が自我同一性の達成に影響を与えていると示唆している。そこで本研究は以下のような仮説を検討した。
仮説1 学生生活充実感の高い者は,そうでない者に比べて,現在,高い水準の自己投入を行っているだろう。仮説2 学生生活充実感の高い者は,そうでない者に比べて,過去の危機を経験しているだろう。仮説3 学生生活充実感の高い者は,そうでない者に比べて,将来の高い水準の自己投入を求めているだろう。仮説4 充実感の高い者は,そうでない者に比べて,時間的展望も高いであろう。仮説5 時間的展望の高い者は,そうでない者に比べて現在,高い水準の自己投入を行っているだろう。
方 法
2014年11月,H大学3年生以上263名(男性121名,女性142名)を対象に質問紙を配布し,12月に回収した。質問項目は①加藤(1983)の同一性地位判定尺度12項目。各項目6件法 ②白井(1994)の時間的展望体験尺度18項目。5件法 ③大野(1984)の充実感尺度。そのうちの「充実感気分―退屈・空虚感因子11項目。5件法
結果と考察
充実感の高低でアイデンティティ・ステイタスの因子の得点を比較すると,「現在の自己投入」「将来の自己投入の希求」との間に有意差が見られ,いずれも充実感高群の方が充実感低群よりも有意に高く,仮説1・仮説3は支持された。一方,「過去の危機」の得点には有意差が見られず仮説2は支持されなかった。充実感と時間的展望との関係を表2に示す。時間的展望の4因子全てにおいて,充実感の高い者はそうでない者よりも有意に得点が高く仮説4は支持された。
時間的展望とアイデンティティとの関連を表3に示す。時間的展望についても,アイデンティティ・ステイタスの過去の危機に関する要因との間には有意差は見られないが,現在の自己投入と将来の自己投入の希求との間では有意差が見られる。但し,時間的展望の過去受容因子は,アイデンティティ・ステイタスの各因子との間に有意差は見られなかった。
以上のような状況から,充実感は,自我同一性達成・権威受容の分布に影響を与えるが,積極的モラトリアムやD-M中間の分布にはそれほど影響を与えないことが見て取れる。